公的医療保険とは、私たちが病気やケガで医療機関を受診した際にかかる医療費の一部を負担してくれる保険です。日本では、すべての人が公的医療保険に加入することになっていて、これを「国民皆保険制度」といいます。
公的医療保険には主に、会社勤めをしている人が加入する健康保険(組合健康保険、協会けんぽ)、船員が加入する船員保険、公務員や教職員が加入する共済保険と、それ以外の自営業者や、被扶養者でない専業主婦、学生などが加入する国民健康保険があります。これらの健康保険は、職業などにより加入する保険が異なり、保険料や保障内容に違いがあります。
健康保険 | 会社員など |
---|---|
船員保険 | 船員 |
共済組合 | 公務員、教職員 |
国民健康保険 | 自営業者、専業主婦など(上記以外) |
※これ以外に、原則75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度があります。
公的医療保険に加入したら、どのようなメリットがあるのでしょうか。私たちの生活で公的医療保険を一番身近に感じるのは、病気やケガで医療機関を受診し窓口でお金を払う時でしょう。
医療費の自己負担の割合は年齢や所得により異なりますが、高くても3割までとなります。
※平成26年4月以降に70歳になる人が対象。それ以前に70歳になっていた人は1割負担。
これ以外にも、医療機関での1ヶ月あたりの医療費の自己負担額が一定の限度額を超えた場合には、申請により払い戻しを受けられる「高額療養費制度」というものがあります。
自己負担の限度額は被保険者の所得や1年間で高額療養費制度を利用した回数によってことなります。
※高額療養費制度は「1日〜末日」を「1ヶ月」として医療費を計算しています。
※被保険者の年収等によって医療費の自己負担限度額が異なります。
公的医療保険は、会社員などが勤務先を通じて加入する健康保険と、自営業者などが自治体を通じて加入する国民健康保険の2種類にわかれます。船員保険や共済保険は保障内容に少し差はあるものの、健康保険とほぼ同じ内容です。
会社員が加入する健康保険と、自営業者などが加入する国民健康保険では、保障内容がことなりますので、自分が加入している公的医療保険の内容をきちんと確認しておくことが大切です。
会社員などが加入する健康保険の保険料は、その年の4月・5月・6月の所得をベースにして毎年算出され、その半額を企業が負担します。さらに扶養している家族については、保険料は加算されずに、一定の保障を受けられます。
また、病気やケガで4日以上休み、会社から給与が支給されない場合には、通算で1年6ヶ月に渡り「傷病手当金」が支給されます。女性が出産のために会社を休み、その期間給与が支給されない場合にも、出産日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から出産翌日以降56日目までの範囲内で「出産手当金」が支給されます。
ちなみに、育児休業中に支給される「育児休業給付金」は、健康保険ではなく雇用保険の保障対象です。
健康保険の中でも勤務先の健康保険組合によって、独自の保障内容(「付加給付」といいます。)を設けていることがあります。例えば、出産一時金の上乗せや、高額療養費の上限引き下げ、施設利用サービスの提供をしている場合がありますので、ホームページなどで確認するとよいでしょう。
自営業者などが加入する国民健康保険には、扶養という概念がないため、保険料は世帯年収と加入者の人数によって算出されます。そのため、加入家族の年収や人数が増加すると保険料も高くなります。
また、病気やケガ、出産などで会社を休んでいる間に支給される傷病手当金や出産手当金がありません。このため健康保険と比べると、保障が少なくなりますので、民間の保険で補う部分を充実させてもよいでしょう。
民間の医療保険とは、民間の生命保険会社などが販売している保険商品のことです。たくさんの保険会社の中から選ぶことができますし、加入も任意です。
ただし、自分が気に入った商品に自由に加入できるわけではありません。民間の医療保険に加入するためには、現在の健康状態などを正しく告知する必要があります。健康状態などによっては希望の医療保険に加入できなかったり、一部条件が付いたりすることがあります。また保険料は、加入者の年齢や保障内容によって変わり、年齢が高くなったり、保障を手厚くしたりすれば、保険料は高くなります。
民間の医療保険には、公的医療保険でカバーしきれない費用負担を軽くする目的があります。民間の医療保険の主な保障は、大きな出費となることが多い入院や手術をしたときのための給付です。それでは、民間の医療保険で備えられるお金にはどのようなものがあるのでしょうか?
1ヶ月入院して保険適用される医療費の総額が100万円とした場合、高額療養費を適用した後の自己負担額は87,430円(年収が約370万円~約770万円の方の場合)となります。1日に換算すると、約2,900円。意外と少なく感じられた人も多いのではないでしょうか。ところが、入院にかかるお金には、これ以外に差額ベッド代や入院中の食事代もかかるのです。
30日入院した場合に必要となる1日あたりの自己負担額
医療費の自己負担額
約3,000円※1
食事代1日3食
1,470円※2
差額ベッド代
平均6,714円※3
1日あたりの自己負担額:
約11,000円
入院時の差額ベッド代や食事代は、医療費ではなく、「高額療養費制度」の対象外となるため、全額自己負担です。
平均的な1日あたりの差額ベッド代
1人部屋 | 8,437円 |
2人部屋 | 3,137円 |
3人部屋 | 2,808円 |
4人部屋 | 2,724円 |
平均 | 6,714円 |
差額ベッド代の基準
※厚生労働省 令和6年7月「中央社会保険医療協議会 総会(第591回)主な選定療養に係る報告状況」
先進医療での療養を受けた場合、技術料は全額自己負担になります。どんな先進医療を受けるかによって費用は異なりますが、かなり高額になることもあります。
先進医療の技術料はどれくらい?
先進医度技術 | 技術料(1件当たり平均額) | 平均入院日数 | 年間実施総件数 |
---|---|---|---|
陽子線治療 | 271万6,016円 | 17.9日 | 1,663件 |
重粒子線治療 | 313万3,672円 | 5.6日 | 1,008件 |
※第71回先進医療会議 平成30年度実績報告をもとに算出
詳しくは「先進医療保障は必要?先進医療の仕組みと保障のポイントについて解説」をご覧ください。
有給休暇や傷病手当金がない方が入院をすると、その期間の収入が見込めません。がん・心疾患・脳血管疾患といった3大生活習慣病は入院期間が長くなることもあるので、その分の保障を備えておくと安心です。
見舞いに来る家族の交通費や外食費もかかります。子どもが小さい場合などは、別途ベビーシッターなどのお金もかかるかもしれません。
民間の医療保険は、病気やケガの時にかかるお金について、公的医療保険でカバーできない部分を補うために加入します。公的医療保険でカバーできる金額と、医療費にあてられる貯蓄残高をもとに、必要な保障のバランスを考えて医療保険を選びましょう。
高額療養費制度とは?
高額な医療費の負担を抑える公的制度とは?高額療養費制度について解説
医療保険の選び方は?
備えたい目的に合わせた医療保険の保障内容の決め方を解説します。
女性保険とは?
医療保険の違いと女性保険の仕組みについて解説します。