病気やケガをして、入院や手術をすることになったら、お金のことが不安になるもの。手術にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。自己負担を少しでも抑える方法や医療費の備え方をお伝えします。

手術した場合にかかる医療費の目安

病気やケガをして、入院や手術をすることになったら、お金のことが不安になるもの。手術にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。自己負担を少しでも抑える方法や医療費の備え方をお伝えします。

傷病別の医療費の目安一覧

まず、病気やケガの種類別に医療費の目安をみていきましょう。入院を伴う手術費用を知るために、入院した場合の医療費データを用いて、主な傷病の1件あたりの入院費用をお伝えします。

傷病別の医療費の目安一覧

(単位:円)

傷病の種類 1件あたりの医療費総額 3割負担とした場合の自己負担費用
くも膜下出血 963,825 289,147
脳梗塞 685,340 205,602
骨折 649,561 194,868
虚血性心疾患 788,010 236,403
腎不全 638,292 191,487
結腸の悪性新生物<腫瘍> 664,906 199,472
気管、気管支及び肺の悪性新生物<腫瘍> 717,780 215,334
胃の悪性新生物<腫瘍> 656,166 196,850
慢性閉塞性肺疾患 516,177 154,853
肝硬変(アルコール性のものを除く) 525,020 157,506
乳房の悪性新生物<腫瘍> 592,376 177,713
肝及び肝内胆管の悪性新生物<腫瘍> 637,761 191,328

出典:厚生労働省 医療給付実態調査 / 報告書 令和2年度「第3表 疾病分類別、診療種類別、制度別、件数、日数(回数)、点数(金額)」より筆者作成

  • 医療費総額は点数を件数で割り点数1点を10円として算出(端数は四捨五入)。自己負担費用は医療費総額の3割を算出(小数点未満を四捨五入)。
  • 自己負担割合(1~3割)は所得や年齢により異なります。
  • 高額療養費制度の利用により自己負担額が軽減される場合があります。

令和2年中に入院した人の多い傷病から、手術を伴う可能性のあるものを主に紹介しました。病気やケガ、治療期間により異なりますが、自己負担として15万円~30万円支払うこともありそうです。

この金額はあくまで医療費だけです。実際には医療費以外にも入院時に発生する食事代や差額ベッド代、交通費等、そして、退院後には、通院費用もかかります。一体どのくらいかかるのでしょうか。

手術費用を含めた入院費用の目安

ここでは手術費用を含めた入院費用の目安をみていきましょう。生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、「直近の入院時の自己負担費用」は、平均19万8,000円で、全体の33.7%の人が10~20万円未満を自己負担しています。自己負担費用には、窓口で支払う治療費や食事代、差額ベッド代に加え、自分や家族の交通費や衣類、日用品等も含んでいます。また、公的医療保険の高額療養費制度を利用した場合は、利用後の金額となります。

直近の入院時の自己負担費用。[集計ベース:過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人(高額医療費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む))]平均19.8万円、5万円未満9.4%、5~10万円未満26.5%、10~20万円未満33.7%、20~30万円未満11.5%、30~50万円未満10.1%、50~100万円未満5.8%、100万円以上3.0%。※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額医療制度を利用した場合は利用後の金額
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」

また、自己負担した費用を入院日数で割り、1日あたりの自己負担費用を算出すると、平均は2万700円となりました。全体の23.3%の人が1万円~1万5,000円未満となっています。

直近の入院時の1日あたりの自己負担費用。[集計ベース:過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人(高額医療費制度を利用した人+利用しなかった人(適用外含む))]平均20,700円、5,000円未満13.8%、5,000~7,000円未満8.8%、7,000円~10,000円未満11.5%、10,000円~15,000円未満23.3%、15,000円~20,000円未満7.9%、20,000円~30,000円未満16.0%、30,000円~40,000円未満5.5%、40,000円以上13.2%。※治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品などを含む。高額医療制度を利用した場合は利用後の金額
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」

病気やケガの種類によって、手術費用を含む入院費用は異なりますが、1日あたり1万円~1万5,000円未満、1回の入院あたり10~20万円未満という金額が、備えを考える際に目安となりますね。病気やケガで身体も大変な状況であるのに加え、費用負担の心配もあるとなると、事前の備えが重要だということがわかりますね。

入院費用については詳しくは以下の記事もご参照ください。

高額療養費制度とは、医療機関等で支払う医療費が1ヶ月(月の1日から月末まで)の自己負担額を超えた場合、その超えた分が払い戻される制度です。なお、高額療養費には先進医療の技術料や入院時にかかる食事代、差額ベッド代は含まれないため自己負担となります。

ポイント

  • 病気やケガにより異なるが、3割負担の場合の入院費用は、1件あたり15万円~30万円かかっている
  • 「直近の入院時の自己負担費用」は、平均19万8,000円で、全体の33.7%の人が10~20万円未満

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手術費用の例

手術自体にどのくらいの費用がかかるものなのでしょうか。ここでは、実際の事例を2つほど紹介します(高額療養費制度の適用区分「年収約370万円~約770万円の人の場合で計算)。

事例1 胃がん(15日間入院)

手術内容:胃の全摘術
医療費の総額(自己負担額ではなくかかった医療費):2,203,680円
そのうち手術料:1,046,720円
自己負担額:309,620円

この事例では、手術後、抗がん剤治療やリハビリテーションを行い入院日数は15日間だったそうです。手術料は100万円を超えていますが、最終的な自己負担額は、保険適用後の医療費部分(高額療養費適用後)176,620円、差額ベッド代やその他雑費などその他部分が133,000円、合計309,620円でした。

事例2 脚の骨折(22日間入院)

手術内容:右下腿(脛骨・腓骨)骨折の手術
医療費の総額(自己負担額ではなくかかった医療費):1,805,600円
そのうち手術料:716,760円
自己負担額:202,831円

この事例では、手術翌日からのリハビリテーション、歩行訓練を経て、22日間の入院となりました。脛骨と腓骨の2ヵ所同時手術となり、全身麻酔を行ったそうです。最終的な自己負担額は、保険適用後の医療費部分(高額療養費適用後)121,331円、その他部分が81,500円、合計202,831円でした。

手術内容によって、費用は大きく異なることがわかりますね。
とはいえ、自己負担額がどのくらいになるのか心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、手術費用の自己負担を抑える方法をお伝えします。

出典:(公財)生命保険文化センター「医療保障ガイド」(2022年10月改訂版)をもとに著者執筆

ポイント

  • 手術にかかる費用は手術内容によって大きく異なる
  • 医療費、手術料のほか、差額ベッド代や雑費などの費用も必要に

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手術費用の自己負担を抑える方法

手術を伴う入院には、3割負担の場合でも高額な費用がかかる可能性もあります。入院しても高額の費用がかからないように、自己負担を抑える方法として主に3つお伝えします。

高額療養費制度を使う

公的医療保険の対象となる医療費について、1ヶ月(1日から月末まで)の医療費が一定額を超えた場合には、自身で申請し、超過した分が後日払い戻されます。

1ヶ月の自己負担上限額は、標準的な年収の世帯(下記図表の区分ウ)の場合「80,100円+(総医療費-267,000円)×1%」となります。また、自己負担上限額は69歳以下の人と70歳以上の人、年収によって分けられます。

69歳以下の方の上限額

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円~

健保:標報83万円以上

国保:旧ただし書き所得901万円超

252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770~1,160万円

健保:標報53万~79万円

国保:旧ただし書き所得600万~901万円

167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370~770万円

健保:標報28万~50万円

国保:旧ただし書き所得210万~600万円

80,100円+(医療費-267,000)×1%
~年収約370万円

健保:標報26万円以下

国保:旧ただし書き所得210万円以下

57,600円
住民税非課税者 35,400円

70歳以上の方の上限額(平成30年8月診察分から)

適用区分 外来
(個人ごと)
ひと月の上限額
(世帯ごと)

現役並み

年収約1,160万円~

標報83万円以上/課税所得690万円以上

252,600円+(医療費-842,000)×1%
年収約770万円~約1,160万円

標報53万円以上/課税所得380万円以上

167,400円+(医療費-558,000)×1%
年収約370万円~約770万円

標報28万円以上/課税所得145万円以上

80,100円+(医療費-267,000)×1%

一般

年収156万~約370万円

標報26万円以下

課税所得145万円未満等

18,000円
(年14万4千円)
57,600円

非課税等住民税

Ⅱ住民税非課税世帯 8,000円 24,600円
Ⅰ住民税非課税世帯

(年金収入80万円以下など)

15,000円

高額療養費制度があるため、手術や入院で医療費の窓口負担が高額になったとしても、標準的な年収の世帯(年収約370万円~約770万円)の場合、1ヶ月の医療費負担は9万円程度に抑えられるのです。

高額療養費制度には活用のポイントが3点あります。

高額療養費制度を活用するポイント

入院前に「限度額適用認定証」を用意しておく

高額療養費制度によって後日払い戻しされる場合でも、医療費が高額だと一時的な支払いであっても負担が大きいこともあるでしょう。そこで、手術や入院が決まったら、事前に加入している公的医療保険に申請して、「限度額適用認定証」を入手しておきましょう。医療機関の窓口に認定証と被保険者証を提出しておけば、窓口での支払いを自己負担上限額までにとどめておくことができます。

なお、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録しておくと、対応している医療機関であれば、「限度額適用認定証」がなくても限度額を超える支払いが免除されます。また、認定証を用意できずに、のちに高額療養費を受ける見込みがあり、窓口で高額の医療費を支払ったあとの資金が不足して困ったときは「高額医療費貸付制度」を使うと良いでしょう。

高額療養費は申請してから払い戻しを受けるまで、約3ヶ月かかります。そのため、その間に発生する医療費に充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸してもらえる制度が高額医療費貸付制度です。加入している公的医療保険に申請しましょう。

②同じ公的医療保険に加入している家族の医療費を合算する

高額療養費で対象とする1ヶ月の医療費には、家族にかかった医療費も合算して申請もできます。しかし、この場合に合算できるのは、同じ公的医療保険に加入している人の分だけです。異なる健康保険組合に加入している夫婦や、後期高齢者医療制度に加入している親などの医療費は、合算できないので注意が必要です。

健康保険組合や共済組合の付加給付制度を使う

もし加入している公的医療保険が健康保険組合であれば、付加給付制度(共済組合では組合によっても名称が異なる)を使うことで自己負担を抑えられる場合があります。付加給付制度とは、企業などの健康保険組合や共済組合などにおいて、独自に行っている給付のことです。例えば、医療費の自己負担額が一定以上となった場合、その一部を健康保険組合が支給するものなどがあります。どの健康保険組合や共済組合にも付加給付があるわけではありませんので、勤務先の制度を調べておくと良いでしょう。

差額ベッド代を抑える

入院費用として請求される医療費には、差額ベッド代が多く占めているケースも少なくないでしょう。差額ベッド代とは、公的医療保険が適用されない病室の費用のことです。1部屋に1人~4人の患者が入院している部屋(個室)を指定した場合に、1日単位で費用がかかり、正式には「特別療養環境室料」といいます。

1日あたりの差額ベッド代の平均は、次のとおりです。

1人部屋 8,322円
2人部屋 3,101円
3人部屋 2,826円
4人部屋 2,705円

出典:厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会(第528回)総-6-1(令和4年9月14日)「主な選定療養に係る報告状況(令和4年7月1日現在)」より作成

1人部屋を選ぶと、その金額は2人~4人部屋の2倍から3倍に跳ね上がります。また、地域や医療機関によっても差が大きいため、医療機関によっても差があります。
差額ベッド代を請求されるのは、原則自分で希望・同意した場合となりますので、希望しないことで差額ベッド代を抑えることは可能です。一方で、差額ベッドの対象の部屋に入りたくなくても、入院の日にちを決めたあとに「個室しか空いていない」と同意書にサインを求められ、断りづらくなることも。まずは医療機関に希望を伝えて、価格や別の部屋の交渉をしてみると良いでしょう。医療機関によっては対応してもらえるかもしれません。

ポイント

  • 高額療養費制度を使えば、医療費の窓口負担が高額になったとしても、標準的な年収の世帯(年収約370万円~約770万円)の場合、1ヶ月の医療費負担は9万円程度に抑えられる
  • 健康保険組合や共済組合に高額療養費の独自給付がある場合があるので、独自給付がないか、勤務先の制度を調べておくと良い
  • 入院する際には、1人~4人部屋を希望・同意しなければ、差額ベッド代を抑えられる。どうしても同意を求められる場合は交渉を
  • 高額療養費制度を利用することで自己負担額は軽減される

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手術費用を含む医療費にどのように備えればよい?

手術費用を含む医療費について、高額療養費制度を利用したあとの目安として、1日あたり1万円~1万5,000円未満、1回の入院あたり10~20万円未満かかるとお伝えしました。自己負担の限度額以上にかかる理由は、窓口でかかる費用は一定金額までに抑えられますが、そのほかにもかかるお金が色々あるからです。一体どのように備えれば良いでしょうか。
まず、前述した1日あたりの入院費用、1回の入院でかかる金額の目安はあくまで平均であるため、「自分の場合はどのくらいかかるか」を考えることが大切です。例えば、前述の付加給付制度が勤務先にある人の場合は、医療費としてかかる金額が大幅に下がることもあります。医療費がどのくらいかかるか目安を自分で考えたうえで、どう備えれば良いか検討しましょう。

備える方法は主に2つ。「貯蓄」と「民間の医療保険」です。

自分で考えた医療費の目安について、貯蓄が十分に確保できている人は、医療費分として生活費とは別の口座に保管しておくなど、手を付けないようにしておきましょう。

貯蓄だけではまかなえない場合は、民間の医療保険を検討します。民間の医療保険では、一般的に、入院した場合に給付を受けられる「入院給付金」と手術した場合に給付を受けられる「手術給付金」が基本の保障となっており、特約として色々な保障を付加できます。ただし、「何日目から入院給付金の支払い対象となるか」「1回の入院で最大何日間入院給付金を受け取れるか」「手術給付金の対象となる手術の種類」など、商品によって違いがあるため、注意が必要です。

ポイント

  • 自分の場合の医療費の目安を考え、それに応じた適切な備え方を検討する
  • 医療費に対する備えとして、「貯蓄」と「民間の医療保険」が考えられる

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Q&A

手術などにかかる費用は事前にわかるものですか?

手術や入院をする医療機関に、事前にどのくらいの医療費がかかるか、医師または会計事務の人に聞いてみましょう病気やケガ、医療機関などによって状況は異なるため、どこまで教えてもらえるかはわかりかねますが、目安金額だけでも教えてもらえると安心ですね。併せて医療費の支払い方法も確認しておきましょう。入院の案内パンフレット等が渡される場合は、医療費の支払いスケジュールなどが記載されていることがありますので、忘れずに確認を。高額になりそうな場合は、高額療養費の限度額適用認定証を申請して、交付を受けておきましょう

手術した場合の入院費用はいつ払うことになるのでしょうか?

一般的には、退院時に支払います。ただし、会計が終わっていない場合は、後日になることもあります。また、月をまたぐ入院の場合は、前月分について請求がきて1ヶ月分をまとめて支払うところや、月2回に分けて請求する医療機関など請求方法はさまざまです。

まとめ

手術や入院が必要な場合、自己負担費用として、1回の入院あたり10~20万円未満がかかることが一般的です。高額療養費制度や付加給付制度などを使って自己負担費用を抑えることは可能ですが、人によっては、費用を抑えられたとしても貯蓄だけではまかないきれず、医療費が払えるのか不安に感じる方もいらっしゃると思います。その場合は、民間の医療保険を利用して、入院や手術した場合にかかる費用をあらかじめ備えておくとよいでしょう。

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