病気やケガで入院が必要になると、どれくらいの費用がかかるのかが不安という人も多いでしょう。日本では公的保険があるため、必ずしも大きな費用負担が発生するわけではありません。一方で、公的保険でまかなえない費用があるのも事実です。今回は、入院費用の平均額などをデータから見ていき、どれくらいの備えが必要かを考えていきましょう。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、入院時の自己負担費用は1日平均で20,700円、割合として最も多かったのは10,000円~15,000円未満です。
(注1):過去5年間に入院し、自己負担費用を支払った人をベースに集計。
(注2):高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額。
(注3):治療費・食事代・差額ベッド代に加え、交通費(見舞いに来る家族の交通費も含む)や衣類、日用品費などを含む。
出典:(公財)生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」
病気の種類によっては長期にわたる入院が必要な場合もあり、費用も高額となる可能性もあります。例えばがん・心疾患・脳血管疾患のいわゆる3大生活習慣病の場合は以下の通りです。
1入院費用(全体) | |
がん(悪性新生物) | |
(胃) | 973,747円 |
(結腸) | 986,722円 |
(直腸) | 990,784円 |
(気管支および肺) | 908,470円 |
急性心筋梗塞 | 1,753,917円 |
脳梗塞 | 1,705,590円 |
脳出血 | 2,340,358円 |
出典:公益社団法人全日本病院協会診療アウトカム評価事業「医療費(重症度別)【年間】」2021年度重症度別急性期グループ年間集計より抜粋
このように、病気の種類によって、かかる費用は異なります。どんな病気にいつかかるかは予測ができませんので、お金の面でしっかり準備をしておきたいと考える人も少なくないでしょう。
入院にこれだけ大きな金額がかかるとなると、そんなお金が用意できるのかと不安になるかもしれませんね。しかし、入院したときにかかるお金は、すべて自己負担しなくてはいけないというわけではありません。
治療に関する費用である医療費は原則、健康保険が適用されます。そうなると、医療費で自己負担が必要な金額は実際にかかったうちの1~3割まで軽減されます。また、健康保険が適用されても、1ヶ月あたりの医療費が上限額を超えた場合、高額療養費制度が活用できます。医療費の上限額は年齢と所得に応じて定められています。
※高額療養費制度では、月初めから月終わりの1ヶ月単位で、医療費を計算します。
一方で、健康保険の適用対象外で、すべて自己負担となる費用もあります。例えば、個室などへの入院を選択した場合にかかる差額ベッド代や、入院中に病院から提供される食事代などがあります。
※1 出典:全国健康保険協会 令和6年6月「入院時食事療養費」
※2 出典:厚生労働省 令和6年7月「中央社会保険医療協議会 総会(第591回)主な選定療養に係る報告状況」
先進医療の技術料も、原則、全額自己負担となります。先進医療とは、厚生労働大臣によって承認された高度の医療技術を用いた療養のことです。先進医療にはそれぞれ治療を受けられる病気の種類が決まっています。実施できる医療機関も限られているため、どの病院でも受けられる治療ではありません。
これらの治療で健康保険が適用されるのは、一部の病気の治療に限られています。そのため、もし上記のような先進医療を受けると、高額な費用がかかる場合もあるのです。代表的なものとして挙げられるのが、腫瘍の治療に用いられることのある、陽子線治療と重粒子線治療です。
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先進医度技術 | 技術料(1件当たり平均額) | 平均入院日数 | 年間実施総件数 |
陽子線治療 | 265万9,010円 | 15.6日 | 824件 |
重粒子線治療 | 313万5,656円 | 4.2日 | 462件 |
出典:厚生労働省「令和5年6月30日時点における先進医療に係る費用」を基に算出
先進医療は、治療方法の選択肢のひとつとして重要なものです。これらの治療を受けたときの費用をどのように備えるかも、考えておく必要があるでしょう。
入院費用の中には、公的保険でまかなえるお金と自己負担となる費用があります。貯蓄で自己負担分を補うのも良いですが、「せっかくの貯蓄はもっと他のことに使いたい」「そもそも貯蓄が不足している」という人もいるでしょう。そうした場合、他の方法を考えてみることをおすすめします。
備え方のひとつが、民間の生命保険への加入です。その中でも病気やケガでの入院費用に備えられる、医療保険の保障内容をチェックしていきましょう。
医療保険は、病気やケガで入院をした場合、入院1日あたり5,000円や1万円などの入院給付金日額を受け取れるのが一般的な保障内容です。
また、所定の手術を受けた場合に入院給付金日額の5倍や10倍といった給付金を受け取れる手術保障があるものもあります。
ほかにも、先進医療を受けた際に実際にかかった費用と同額を、2,000万円などの上限額まで受け取れる先進医療保障を備えているものもあります。
こうした医療保険をニーズに合わせて選択することで、お金の不安を軽減できるでしょう。
高額療養費制度の1ヶ月あたりの自己負担限度額は、年齢や所得によって異なります。70歳以上かどうかで大きく分かれ、そこからさらに年収で区分が変わります。ここでは、69歳以下の上限額を見てみましょう。
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適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) | |
ア | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% |
イ | 年収約770万円~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
ウ | 年収約370万円~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
エ | ~約370万円 | 57,600円 |
オ | 住民税非課税者 | 35,400円 |
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」より抜粋
例えば、年収500万円の69歳以下(上記表のウ)の人が、入院などで1ヶ月に医療費が100万円かかった場合を考えてみましょう。
医療費の100万円のうち、健康保険によって窓口負担は3割(30万円)まで抑えることができます。そこから窓口で支払った額が一定の上限額を超えた場合は、高額療養費として支給され、最終的な自己負担額は約9万円になります。
自己負担の上限額の計算
年収500万円の69歳以下(上記表のウ)医療費が100万円の場合
自己負担の上限額
80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円
高額療養費として支給される金額
30万円ー87,430円=212,570円
また、1回の受診では限度額を超えていなくても、複数回受診した場合や同じ世帯にいる人も受診していた場合には「世帯合算」を利用することもできます。世帯合算では、同じ月内に受診した21,000円以上の自己負担額を合算し、その金額が一定以上になった場合も高額療養費制度の対象になります(69歳以下の場合、70歳以上は自己負担額すべてを合算できます)。
さらに、過去12ヶ月に3回以上高額療養費制度を利用した場合、4回目からは「多数回該当」としてさらに自己負担額が軽減されます。
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高額療養費制度を利用するには、ご自身が加入している公的医療保険(国民健康保険の場合はお住まいの自治体、健康保険組合・協会けんぽの場合は該当する支部など)へ書類を提出します。
書類は高額療養費の支給申請書のほかに、医療機関の領収書が必要な場合もありますので、無くさないように保管しておきましょう。
ご自身が加入している公的医療保険の種類がわからない場合、お持ちの保険証に記載されていることがほとんどですので、確認してみてください。
生命保険文化センターの「2022年度生活保障に関する調査」では、病気やケガで入院した場合、1日あたりの自己負担費用は平均で20,700円でした。しかし、公的保険の活用などにより、自己負担が必要な費用は一部に軽減されますので、心配し過ぎることはありません。
公的保険の場合、必要な書類などを揃えて自分で申請をしなくてはいけないものもあります。入院前に必要な書類や申請の内容を確認しておき、可能であれば事前申請まで完了しておけるのが理想です。そうすることで、お金の不安を抱えずに、治療へ専念できそうです。
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