葬儀費用には平均でどれくらいの金額がかかるのでしょうか。一般的な葬儀と家族葬などでは、費用の目安は違うのでしょうか。葬儀費用の平均額や内訳、葬儀費用の払い方や準備方法、葬儀費用の負担を抑えるときに活用できる補助制度、相続税との関係について解説します。
葬儀費用にはどれくらいの金額がかかるのでしょうか。平均額や一般的な費用の内訳をみてみましょう。
経済産業省のデータによると、葬儀業者が取り扱う葬儀の費用として、最も多いのは1件あたり100万円以上200万円未満のケースです。ほかに50万円以上100万円未満、50万円未満も多くなっています。
出典:経済産業省「2020年経済構造実態調査」をもとに筆者作成
葬儀には数十万円から200万円程度の費用がかかることがわかりますが、葬儀を執り行うには式場・斎場での式以外にもいろいろな費用がかかります。民間の葬儀事業者がまとめたデータによると、主な費用の内訳と目安額は次のようになっています。
出典:第5回お葬式に関する全国調査(2022年/鎌倉新書)
葬儀に参列する人は、香典を包むのが一般的です。故人との関係性や参列者の年齢などによって目安額は異なりますが、参列者合計での香典の金額は平均で約47.2万円です。
葬儀の規模や参列者の人数などによって香典の総額は変わりますが、実質的な葬儀費用の負担額は、参列者からの香典によって一部軽減されることが多いでしょう。
葬儀費用は、葬儀の種類によっても変わるようです。家族や親族に加えて知人や職場などでの故人の関係者が参列する一般葬の場合、葬儀費用の基本料金の平均額は約83.9万円です。
葬儀の規模が小さいほど、かかる費用も少ない傾向があります。家族や親族中心に執り行う家族葬では平均約67.3万円、お通夜を省略して葬儀・告別式と火葬を1日で行う一日葬では平均約52.8万円、葬儀を執り行わず火葬場で故人とお別れをする直葬・火葬式では平均約42.2万円となっています。
出典:第5回お葬式に関する全国調査(2022年/鎌倉新書)よりライフネット生命作成
では、葬儀費用は誰がどのように支払うのでしょうか。注意したいのは、故人の預貯金を葬儀費用に充てようとする場合です。銀行などの金融機関では預金口座の名義人が亡くなると凍結され、原則として遺産分割が確定するまで家族でも預貯金を引き出すことができません。
しかしながら、葬儀は亡くなった翌日から3日目頃までに行うのが一般的ですので、葬儀費用は葬儀業者へ速やかに支払う必要があります。このため故人の預貯金や遺産は葬儀費用には充てずに、家族の預貯金などから支払うケースが多いようです。葬儀費用を負担した家族はその分を遺産分割の際に上乗せするなどして、葬儀後に調整することがほとんどです。
ところが、葬儀費用を誰がどれくらい支払うか、遺産分割の際にどのように調整するかなどをめぐっては、兄弟間や家族間ですぐに折り合いがつかない場合もあります。家族間でのもめごとや喧嘩などのトラブルに発展してしまうケースもあるようですので、慎重に検討したいところです。
葬儀費用をスムーズに準備しておくにはどうすればいいでしょうか。故人の預貯金を葬儀費用に充てるのであれば、生前に本人や家族と同意の上で葬儀費用に相当する預貯金を引き出し、家族が預かって管理しておくことも可能です。ただし、お金を預かる家族には財産管理の負担がかかりますし、葬儀費用を支払った後でお金が残った場合や、遺産分割でほかの家族と配分を調整する際に取り扱いが複雑になるおそれがあることに留意しておきましょう。
故人の預貯金以外に葬儀費用を準備するために活用できる方法には、以下もあります。
生命保険の死亡保険金は、契約時に定めた受取人に直接支払われ、受取人固有の資産として利用できます。故人が生前に契約者・被保険者となり、家族を受取人に指定しておくと、故人が保険料を負担し、死亡保険金を家族へ受け渡すことが可能です。死亡保険金を受け取る人が葬儀費用を負担するようにしておくなど、本人や家族の間で生命保険契約について共有し、保険金の使い道を事前に決めておくと、いざというときにスムーズに葬儀費用を準備できそうです。
万が一のときに死亡保険金が支払われる生命保険には、定期死亡保険、終身死亡保険、収入保障保険、養老保険などがあります。葬儀費用の支払いに間に合うように、最短では請求手続きの当日や翌営業日に保険金が支払われる保険もあります。
なお、亡くなった人が契約者・被保険者で、家族が保険金を受け取った場合には死亡保険金は相続税の課税対象となります。ただし、受取人が法定相続人(民法で定められた、被相続人の財産を相続できる人)であれば、「500万円×法定相続人の数」までは非課税です。
葬儀事業者が加盟する団体の互助会で、将来の葬儀費用に備えてお金を積み立てる方法もあります。積み立てた金額に応じて、後に葬儀を執り行う際に棺や霊柩車、枕飾りや遺影写真などのサービスを受けることができます。
互助会で積み立てたお金だけで葬儀費用のすべてを備えられるわけではなく、実際に葬儀を執り行う際には追加の費用がかかることが基本です。また互助会の多くは一般葬向けに設けられており、家族葬や一日葬などには対応していないようです。ですから本人や家族の意向を事前に確認しておく必要がありますが、いざというときに家族が負担する葬儀費用を軽減する方法になりえます。
葬儀費用の負担を抑えるためには、公的な補助制度も活用できます。
健康保険制度には葬儀費用を一部補助する制度があります。国民健康保険に加入していた人が亡くなった場合には地域により葬祭費として5万円~7万円、勤務先の健康保険に加入していた人または扶養されていた人が亡くなった場合には埋葬費として5万円(協会けんぽの場合)が、葬儀を執り行った喪主に対して支給されます。
生活保護を受給していた人が亡くなり、葬儀を執り行う親族が生活に困窮している場合や親族以外の知人が葬儀を行う場合などに、定められた範囲内で葬儀費用の実費が支給されます。
故人に遺産がある場合には相続税がかかることがありますが、所定の葬儀費用は相続税の計算で遺産総額から差し引くことができます。
主に次のような費用を、相続税の計算上で遺産総額から控除することができます。
次のような費用は、相続税の計算で遺産総額から差し引くことができません。
相続税の計算は、相続や遺贈によって取得した遺産総額から対象になる葬儀費用のほか債務や非課税財産を差し引き、遺産額を算出します。また相続開始前7年以内に故人から贈与された財産があり、暦年課税(1月1日から12月31日までの1年間にもらった贈与から110万円を差し引いた額が課税対象)を適用した場合には、その贈与財産を加算して、正味の遺産額を算出します。ここから相続税の基礎控除額を差し引いて計算します。
亡くなった人の名義の預金は原則として遺産分割が確定するまで引き出せませんが、例外として、「預貯金の仮払い制度」があります。家庭裁判所や金融機関で手続きをすることで、遺産分割前でも葬儀費用や当面の生活費に必要なお金に限り引き出せます。この制度は2つの方法がありますが、このうち金融機関のみで手続きをする場合には「相続開始時の預貯金残高×1/3×法定相続分(その相続人の法定取り分)」、1つの金融機関ごとに150万円を上限に引き出すことができます。
ただし、仮払い制度で預貯金を払い戻してもらうには一定の時間を要するため注意しましょう。
一口に葬儀費用といっても、葬儀を執り行うには祭壇や装飾、音響、遺影や受付事務、会葬礼状や飲食、香典返しなどさまざまな費用がかかります。相場や目安額を知り、どのような葬儀をしたいか、形式や参列者、食事などについて生前に本人や家族が話し合っておくことが大切です。実際に執り行う際には複数の葬儀業者に見積りを取り、比較してみてもいいでしょう。
葬儀費用にはお通夜や告別式を執り行う費用のほか飲食や香典返し、寺社に渡す費用などがかかります。一般葬、家族葬、一日葬など葬儀の形式や参列者数などによっても変わります。目安としては数十万円から200万円程度の平均額を参考に、あらかじめ本人や家族で話し合っておくと良いでしょう。
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