「定年退職を迎える」「子育てが終わり夫婦2人暮らしになる」など、60代は生活環境が大きく変わる方も多いでしょう。ライフスタイルが変われば、必要な生命保険の種類も変わります。60代の方の生命保険の選び方のポイントを知り、自分に合う保険選びをしましょう。
生命保険文化センターが行った調査によると、生命保険・個人年金保険の世帯加入率は89.2%となっています。そのうち60代については、60~64歳は91.4%、65~69歳は95.2%にまで達します。
img
出典:(公財)生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」を基に作成
このように、最も加入率が高い年齢層は65~69歳で加入率95.2%となっています。
次に、60代の方の医療保障への備え方を見てみましょう。
医療保障に対する私的準備状況
(単位:%)
調査人数 | 生命保険 | 損害保険 | 預貯金 | 有価証券 | その他 | 準備している | 準備していない | わからない | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 4,844 | 68.8 | 20.8 | 44.5 | 7.8 | 0.3 | 82.7 | 15.3 | 2.0 |
男性 | 2,141 | 66.2 | 22.9 | 44.5 | 10.4 | 0.4 | 80.6 | 16.9 | 2.6 |
女性 | 2,703 | 70.9 | 19.1 | 44.4 | 5.7 | 0.2 | 84.5 | 14.0 | 1.6 |
年齢別 | |||||||||
18-19歳 | 63 | 20.6 | 4.8 | 12.7 | 1.6 | 0.0 | 27.0 | 46.0 | 27.0 |
20代 | 445 | 39.8 | 9.7 | 24.7 | 4.7 | 0.0 | 53.3 | 38.2 | 8.5 |
30代 | 641 | 70.7 | 17.3 | 46.8 | 9.8 | 0.3 | 83.9 | 14.7 | 1.4 |
40代 | 909 | 75.7 | 23.4 | 38.0 | 6.1 | 0.3 | 87.3 | 11.8 | 0.9 |
50代 | 866 | 75.1 | 27.4 | 45.4 | 8.5 | 0.2 | 90.3 | 9.1 | 0.6 |
60代 | 927 | 76.4 | 23.6 | 50.4 | 10.0 | 0.2 | 88.2 | 11.1 | 0.6 |
70代 | 993 | 65.0 | 18.2 | 53.5 | 6.9 | 0.5 | 82.8 | 15.8 | 1.4 |
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に作成
万が一病気やケガなどをした時に備えて、どんな手段で資金を準備しているかの問いに「生命保険」をあげた人が30代から大きく増え、60代では76.4%とどの年代よりも多くなっています。また、どの年代でも「預貯金」と答えた人の割合より高く、多くの人が保険を活用して医療費に備えていることもわかります。
60代も生命保険の加入率が高いままである背景に、60代になると病気になって治療を受ける人がぐんと増えることがあげられます。下のグラフは年代別に、令和5年10月の人口10万人に対しての入院受療率(※)を表したものです。
img
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」を基に作成
50代までおだやかに増えていますが、60代に入ると男女ともに上昇角度が大きくなっています。60代は病気リスクがぐんと高まるため、それまで入っていた医療保険やがん保険について、加入を継続する人が多いことが考えられます。
※受療率とは、人口10万人に対する推計患者数(調査日に全国の医療施設で受療した患者の推計数)のことをいう。
がん保険・がん特約の加入率(全生保)
(%)
調査人数 | 加入率 | ||
---|---|---|---|
男性 | 20歳代 | 235 | 14.0 |
30歳代 | 275 | 42.9 | |
40歳代 | 375 | 46.4 | |
50歳代 | 358 | 45.5 | |
60歳代 | 422 | 45.0 | |
70歳代 | 447 | 30.0 | |
女性 | 20歳代 | 210 | 21.9 |
30歳代 | 366 | 46.4 | |
40歳代 | 534 | 50.6 | |
50歳代 | 508 | 49.2 | |
60歳代 | 505 | 38.2 | |
70歳代 | 546 | 27.3 |
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に作成
がん保険やがん特約の加入率は、男女共に30代からぐんと高まりますが、男性が60代になっても大きく下がらない一方で、60代の女性は50代と比べて10%程度下がっていることがわかります。
img
出典:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計2024」を基に作成
がんの罹患率を見てみると、種類を問わずなにかしらのがんに罹患したことがある人の数は、男性が60代に入ってから7.7%から21.4%と急激に増える一方で、女性は50代以降で12%を超えます。70代になると、男性は43%、女性も33.3%の確率でがんと診断されています。
60代の人はどのくらい生命保険に加入しているのでしょうか。
男女ともに、加入している保険金額の平均が、50代と比べて下がっています。子育てが終了し、必要な死亡保障が少なくなった人が多いと考えられます。
生命保険加入金額(全生保)
(万円)
男性 | 20歳代 | 1,001 |
30歳代 | 2,065 | |
40歳代 | 1,883 | |
50歳代 | 1,629 | |
60歳代 | 1,071 | |
70歳代 | 582 | |
女性 | 20歳代 | 751 |
30歳代 | 768 | |
40歳代 | 807 | |
50歳代 | 737 | |
60歳代 | 507 | |
70歳代 | 395 |
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に作成
払い込んでいる保険料の平均も、男女ともに50代と比べて下がっています。50代では男性25.5万円ですが、60代になると21.2万円(月額約1万8,000円)に、女性も19.0万円から15.9万円(月額約1万3,000円)に減っています。
img
出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
人生100年時代において、60代はまだまだ元気で働く人も多い年代です。ただし前述のように病気で治療を受ける人が増えてくる時期であり、さまざまな不安を感じる人が多くいます。(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」より、不安項目についての60代の回答をみてみましょう。
60代の男性のうち85.5%、女性のうち90.75と多くの方が、病気やケガにより健康を害することについて不安を感じているようです。その内容は、長期入院で医療費がかさむこと(50.1%)だけでなく、家族に肉体的・精神的負担をかけること(51.8%)をあげている人が多くいます。
自分が亡くなった場合の遺族の生活については、60代の半数以上の方が「不安感あり」と答えており、その内容は男性では「配偶者の老後の生活資金が不足する」が51.8%、女性では「遺族年金等の公的保障だけでは不十分」が36.2%と、最も多い回答でした。資金が足りなくなることが不安のようです。
自分が将来介護される状態になった場合については、60代男性の85.5%、女性の91.3%の方が不安を感じています。60代の方が抱える不安のおもな内容は、「公的介護保険だけでは不十分」と男性の60.9%、女性の59.4%が回答し、「介護サービスの費用がわからない」と男性の45.4%、女性の46.9%が回答しています。介護は、費用や期間がどのくらいかかり続けるのか全く読めないため、計画が立てづらいライフイベントの一つです。費用面だけでなく、「家族の肉体的・精神的負担」をあげている人も60代男性の54.6%、女性の64.6%おり、老老介護となり配偶者に負担をかけてしまうことに不安を感じている人も多くいることがわかります。
60代の多くが抱える万が一の時へのお金の不安は、生命保険を活用することで減らすことができます。そこで、60代におすすめの保険商品をみていきましょう。
なお、60代で新たに加入を検討する場合、保険料は決して低くはないため、どんなことに備えたいのか、貯蓄でまかなえないかなどを、よく考えることをおすすめします。
自分が亡くなった後に遺された家族の経済的不安に備えたい方には死亡保険がおすすめです。
死亡保険には終身タイプと定期タイプがありますが、終身タイプは定期タイプと比べて保険料がかなり高くなるため、収入が下がる傾向にある60代には期間が限られますが定期タイプで備えるのも方法のひとつです。
病気やケガのリスクが高まる60代にとって、いくらかかるかわからない治療費は不安に感じるもの。貯蓄があれば必要性は高くはないですが、十分にない場合は、医療保険で備えるのも一つの方法です。ただし、公的医療保険の自己負担割合と、高額療養費制度の自己負担限度額は70歳になると大きく下がります。自己負担割合は70歳になると3割から2割へ、75歳になると1割へと下がりますし(※)、高額療養費制度の自己負担限度額も、一般所得者の外来の場合、月額約1万8,000円と少ないため、60代で加入する際も少し先を見ると、過度な保障は必要ないことに留意しましょう。
※現役並み所得者を除く
がんの罹患率がぐんと上がる60代にとって、治療が長引く可能性のあるがんへの備えは大切です。診断された時に受け取れる一時金のほかに、がんで入院や手術をした時に給付金を受け取れるがん保険もありますし、入院や通院をした月に、一定の金額の給付金を受け取れるがん保険もあります。
前述の調査では、自分の介護が必要な状態になったら、お金が足りなくなると不安に感じている60代が多くいました。介護保険制度における要介護(支援)認定を受けた人は10年間で161.6万人も増え、令和3年度で676.6万人(※1)となっています。65~74歳で認定を受けた人の割合は要支援1.4%、要介護3.0%ですが、75~84歳になるとそれぞれ6.2%、12.1%、85歳以上になると13.9%、44.9%と大きく上昇しており、介護が必要になる時への備えはとても大切といえます。
介護に備える手段として、公的な介護保険で不足する場合は、民間の介護保険を考えることも一案でしょう。もしくは、介護が必要になる原因として最も多い「認知症」のみに絞った保障もあります。なぜなら、要介護者などについて介護が必要になる原因で最も多いのは、「認知症」(18.1%)だからです。(※2)
認知症保険には、認知症と診断されていなくても、その一歩手前の状態である軽度認知障害(MCI)と診断された場合に、給付金を受け取れるものもあります。約16%~41%の方は健康な状態に回復する場合や認知症の進行を遅らせられる場合があることがわかっています。(※3)認知症への進行を予防するためのお金にも備えたい場合は、軽度認知障害(MCI)でも給付金を受け取れるタイプの認知症保険がおすすめです。
60代になると、持病を抱えている人も少なくありません。その場合は、前述した死亡保険や医療保険に加入できないこともあるでしょう。保険の見直しや新たな加入をしたいのに健康上の理由で入れない場合は、告知項目が限定され加入しやすくなっている、引受基準緩和型の死亡保険や医療保険が選択肢となります。
60代の方が、保険の見直しや新たな契約を検討したい場合、その時だけでなく20年後の生活も見据えて、どうしたいのか考えましょう。収入が年金だけとなる方は、保険料が家計の大きな負担にならないかをはじめに確認しましょう。公的な医療保険制度を踏まえると、70歳を超えたとき、思ったよりも医療費の自己負担額が少なかったという方もいるかもしれません。
不安だからと、過度に保険に入りすぎずに、最低限の必要な保障をしっかりと見極めて検討することが大切です。
保険の見直しや加入などについては、保険会社の相談窓口や、ファイナンシャルプランナーに相談してみてはいかがでしょうか?
※本記事の中では当社で取り扱いのない保険もあります。
※1 引用:内閣府 令和6年版高齢社会白書
※2 引用:内閣府 令和4年版高齢社会白書
※3 出典:日本神経学会監修 認知症疾患診療ガイドライン2017
60代になると、一般的には収入が減少するため、余裕をもって支払える保険料とその負担の範囲で、必要な保障として何を選ぶかを考えて見直しすることが大切です。次の4つのステップを踏んで見直します。
現在加入している保険の保障内容が現在の生活状況に合っているか確認しましょう。もしある場合は、保険金額を減らすことや解約を検討しましょう。
生活環境や価値観の変化を踏まえ、治療費や介護費など、公的保障制度や貯蓄だけではカバーしきれない経済的に不安な項目を洗い出しましょう。
現在の収入と支出を確認し、保険料として毎月支払える金額を割り出します。今は働いていても、定年後も支払い続けられるかどうかなど、先のことも考慮して検討しましょう。
現在加入している保険の見直しに加え、新たに入りたい保険がある場合は、保険料の予算内で加入できるように組み立てます。
備えも大切ですが、日頃の生活も無理なく過ごすようにしたいところです。見直しをする場合は予算の範囲内で検討しましょう。
※健康状態などにより、新たに保険に入り直すことができない場合があるため、保険を解約して新たな保険に入り直す際には、新たな保険契約のお引き受けの結果が判明した後に手続きを行ってください。
※解約に関する注意事項をご確認のうえ、慎重にご検討ください。
過去に病気にかかっているから生命保険に加入できないとは限りません。保険会社により条件は異なりますが問題なく加入できる場合や、割増保険料など特別条件を付けて契約できたり、引受基準緩和型の保険や無選択型の保険などに加入できたりする可能性があります。また、医療保険の場合などは、身体の一部分(部位)を、保障対象から外す「特定部位不担保」という条件付きで加入できる場合もあります。
家計への負担を軽減するために生命保険の見直しや解約を検討するのもひとつの方法です。ですが、解約の際には現在の保障の内容を確認したうえで慎重に検討しましょう。
また、解約すると新たな保険に入れない可能性があるので注意が必要です。
60代にとって生命保険は、病気や介護のリスクが高まる年代特有の不安を軽減し、安心して生活を送るための重要な手段です。死亡保険・医療保険・がん保険・認知症保険など、自分の生活や家族の状況に合わせて必要な保障を選ぶことが大切です。また、収入が減少する時期でもあるため、保険料を抑えつつ必要な保障を確保できるよう、現在加入している保険の見直しや必要とする保障の確認を行い、自分にぴったりの生命保険を選びましょう。
ライフネット生命の保険は、インターネットを使って自分で選べるわかりやすさにこだわっています。保険をシンプルに考えると、これらの保障があれば必要十分と考えました。人生に、本当に必要な保障のみを提供しています。
申し込みはオンラインで完結!