保険
将来への不安や、契約する上での注意点も確認
ファイナンシャルプランナー 鈴木 さや子
株式会社ライフヴェーラ代表
50代になると、がんの経験談を見聞きすることも出てきて、経済的に不安な気持ちを抱える人もいるでしょう。がんにかかるお金に備える手段の一つであるがん保険について、加入率や選び方のポイントを確認しましょう。
更新日2025.08.15
掲載日2025.08.15
50代になると、がんの罹患リスクが高まります。医療費や収入減などの不安に備えるには、がん保険を検討・見直すことが重要です。この記事では、50代に合ったがん保険の選び方や注意点をわかりやすく解説します。
最初に、50代の方の男女別がん保険の加入率を見てみましょう。
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出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に筆者作成
生命保険文化センター「2022年度 生活保障に関する調査」によると、がん保険(がん特約含む)の加入率は、50代男性で45.5%、女性で49.2%。いずれも各年代と比較して高い水準にあり、多くの人ががんへの備えを意識していることがわかります。
40代では男性46.4%、女性50.6%と、50代よりやや高い数値となっていますが、50代でも引き続き加入率は高く、依然としてがん保険が選ばれている年代といえます。
特に女性は、50代でも約半数が加入しており、がんに備える意識が高いことがわかります。
次に、ライフステージ別のがん保険加入率を見てみましょう。
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出典:(公財)生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に筆者作成
ライフステージ別に見てみると、未婚の方は21.3%、既婚で子どもがいない世帯が41.8%である一方、子どもがいる世帯は50%台と加入率が高いことがわかります。子どもの独立後は、加入率も下がることから、がんに罹患した場合の教育資金への備えを加入の目的としている人が多いものと考えられます。
年齢が上がるにつれて男女ともにがんの罹患リスクが上昇します。
年齢階級別がん罹患リスク(2020年罹患・死亡データに基づく)
(%)
table
部位 | 性別 | ~39歳 | ~49歳 | ~59歳 | ~69歳 | ~79歳 |
---|---|---|---|---|---|---|
全がん | 男性 | 1.2 | 2.7 | 7.2 | 19.8 | 40.5 |
女性 | 2.2 | 6.0 | 11.8 | 20.1 | 31.5 |
出典:(公財)がん研究振興財団「累積がん罹患・死亡リスク」より作成
がんの罹患リスクを見てみると、種類を問わずなにかしらのがんに罹患したことがある人の割合は、男性が50代に入ってから2.7%から7.2%に、女性も6.0%から11.8%と増加しています。特に女性は、40代に入ると30代の2.2%から6.0%と急増しています。これは、女性がかかるがんの一つである乳がんの罹患リスクが、40代に入ると高まるということが背景の一つと考えられます。男女別の主ながんの部位別に見てみましょう。
一生涯に罹患する割合が高いがんの部位別にみた、年代・男女別の罹患リスクは以下となります。
年齢階級別がん罹患リスク(2020年罹患・死亡データに基づく)
(%)
table
部位 | 性別 | ~39歳 | ~49歳 | ~59歳 | ~69歳 | ~79歳 |
---|---|---|---|---|---|---|
胃 | 男性 | 0.0 | 0.2 | 0.7 | 2.4 | 5.6 |
女性 | 0.1 | 0.2 | 0.4 | 1.0 | 2.1 | |
大腸 | 男性 | 0.1 | 0.5 | 1.4 | 3.7 | 6.8 |
女性 | 0.1 | 0.4 | 1.1 | 2.4 | 4.4 | |
肺 | 男性 | 0.0 | 0.2 | 0.7 | 2.6 | 6.1 |
女性 | 0.0 | 0.1 | 0.4 | 1.2 | 2.7 | |
乳房(女性) | 女性 | 0.5 | 2.4 | 4.4 | 6.7 | 8.8 |
前立腺 | 男性 | 0.0 | 0.0 | 0.4 | 2.5 | 6.7 |
出典:(公財)がん研究振興財団「累積がん罹患・死亡リスク」より作成
男性は、50代になると大腸がんの罹患リスクが突出して高まりますが、60代になるとどの部位のがんも急増しています。一方女性は、40代で乳がんの罹患リスクが急増し、50代になっても乳がんが増加していることがわかります。同調査によると、一生涯で9人に1人が乳がんと診断されるとあります。これらのことから、男性に比べて女性は早くからがんへの備えの必要性を感じていることが伺えます。
50代は、子どもの教育費や住宅ローン、親の介護、さらには老後資金準備と、家計の支出が多方面にわたる時期です。その中で大きな医療費や収入の減少が重なると、家計へのインパクトはとても大きくなります。
公的医療保険には高額療養費制度があり、1ヶ月にかかる医療費が自己負担の限度額を超えた場合、払い戻しを受けられます。そのため、病院にかかる費用自体に大きな心配は不要ですが、再発・転移により治療が長期にわたる可能性に注意が必要です。例えば、通院時の交通費、子育てや家事のサポートを代行してもらう場合の費用、ウィッグや乳房再建費用、サプリメントなど、治療費以外の出費がかさむことが考えられます。
また治療が始まると生活のペースが一変し、仕事に影響が出ることもあるかもしれません。特に50代は働き盛りで、職場で責任ある立場を担っている方も多いため、治療と仕事の両立が大きな負担になる可能性があります。また、がんによって退職や休職を選ばざるを得ないケースもあり、その結果、収入が一時的に途絶えるなど、経済面でのリスクも無視できません。
こうした「お金への不安」への備えとして、経済的に余裕を持ってがんの治療にのぞめるようある程度の備えがあると、大きな安心を得られます。
50代は、がん罹患リスクが上がることに加えて、ご家庭によっては教育費が増えてきます。また、仕事環境の変化で収入が不安定になる可能性もある年代です。だからこそ、保障内容と保険料のバランスを見極め、自分に合ったがん保険を選ぶことが重要です。ここでは、代表的ながん保険のタイプと、それぞれのメリット・注意点を紹介します。
がんと診断された時点で、まとまった保険金(一時金)を受け取れるタイプです。使い道が自由なので、治療費以外にも、入院中にかかる費用、仕事を休んでいる間の生活費や、通院にかかる交通費など、幅広い目的に活用できるのが大きなメリットです。
特に50代は、老後資金を貯蓄に残しておきたい年代でもあり、どんな出費にもすぐ対応できる一時金の保障は心強い備えとなります。
がんの治療は、近年「入院中心」から「通院中心」へと変化しています。入院日数が短くなっている分、通院期間は長期化する傾向にあります。
入院・通院にかかわらず、一定のがん治療を受けた場合に、まとまった金額の給付金を受けられるタイプもあります。がん保険によって保障タイプはさまざまですので、保障内容をよく確認しましょう。
公的医療保険が適用されない場合のがん治療においては、陽子線治療や重粒子線治療などの「先進医療」が選択肢に入ることがあります。厚生労働省の資料(※)によると、陽子線治療にかかる1件あたりの費用の平均は約268万円、重粒子線治療は、約314万円ととても高額で、治療を受ける場合は、全額自己負担となります。
先進医療保障があれば、こうした高額の治療にかかる技術料を全額保障してくれるため、治療法の選択肢をせばめたくない方には心強い保障です。
※出典:厚生労働省「先進医療会議 令和6年6月30日時点における先進医療に係る費用/令和6年12月5日」を基に技術料を算出
50代でがん保険に新たに加入する、または見直す際には、保険料だけでなく、保障内容の違いや契約条件についても注意が必要です。契約する上での注意点をお伝えします。
50代は、収入はあるものの支出も多く、老後資金の準備も進めたい時期です。がん保険を選ぶ際には、手厚い保障で保険料が高額になりすぎないよう、保障と保険料のバランスを取ることが重要です。
例えば、一時金を複数回受け取れるタイプや、入院・通院給付金が充実したタイプは安心感が大きい一方、保険料も高めになります。長い目でライフプランを考えて、無理のない保険料でおさまるように、必要な保障を選ぶことが大切です。
がん保険に加入する際に確認したいのが、「上皮内新生物」に対する保障の有無です。
上皮内新生物とは、がんのごく初期段階で、上皮内(皮膚や粘膜の表面)にとどまっている状態のがんを指します。この状態では、浸潤(周囲の臓器に腫瘍が広がる)や転移は見られず、早いうちに取り除くことができれば、再発の可能性が低いといわれています。
がん保険によっては、上皮内新生物の場合は保障されなかったり、給付金額が低くなったりする場合があります。保障の有無は契約前にしっかり確認しましょう。
がん保険には、「免責期間(待機期間)」が設けられている場合があります。これは、契約日から一定期間(90日間など)の間にがんと診断された場合、保障の対象外とする規定です。
この期間中にがんと診断された場合、保険金は支払われず、契約そのものが無効とされることもあります。
保険会社によっては、がん保険を見直す場合において、旧契約と保障が途切れないようにする制度を設ける保険会社もあります。契約日から保障開始日までの日数や条件は保険会社によって異なるため、パンフレットや約款をよく確認しましょう。
一般のがん保険は難しい場合がありますが、「引受基準緩和型」が選択肢となります。
持病がある方や、過去に入院歴・通院歴がある方は、がん保険に加入できないことがあります。その場合、「引受基準緩和型がん保険」という選択肢があります。
これは、健康状態に関する告知が少なく、比較的加入しやすい保険ですが、その分、保険料が割高であることや、保障内容が限定的な場合があります。がんとの関連性が低い持病の場合は、一般のがん保険に加入できる可能性もあるため、告知内容をよく調べましょう。
がん治療に備えたいなら、がん保険の方が特化型で手厚いことが多いです。
医療保険は、がんを含むあらゆる病気やケガの入院・手術を対象とする総合型の保険です。一方でがん保険は、がんに特化した保障内容となっており、診断一時金や通院給付金や治療給付金、先進医療保障など、がん治療に必要な費用を手厚くカバーしてくれます。
がんへの不安が大きい方や、血縁者にがんが多くて心配な方には、がん保険を優先的に検討することをおすすめします。また、がん保障のついた医療保険もあるため、どちらも気になる方は選択肢となるでしょう。
50代は、がんの罹患リスクが男女とも上昇してくる年代です。身近な人のがん経験談を耳にするようになり、「もしかしたら自分も……」と備えを考え始める人もいるでしょう。
また、教育費や老後資金の準備といったライフイベントが重なる時期でもあり、がんの家計に与える影響は小さくありません。だからこそ、ライフプランを考えた無理のない保険料で、自分にとって必要な保障が得られるがん保険を選ぶことが大切です。がん保険は、経済的にも心理的にも支えとなる生活防衛の手段の一つです。ライフプランの変化を見据えて、がんへの備えを見直してみませんか?
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