病気
【医師が監修】乳がんは早期発見がカギ セルフチェックのポイントとは?
メディコレ編集部
監修医師:小坂泰二郎
【監修医師(小坂泰二郎 先生)からのコメント】 乳がんは女性が発症する最も頻度の高いがんです。歳をとったらゆっくり進むのか?とお聞きになる方がおられますが、年齢よりもがんの個性により進み方が変わります。一方でビー玉より小さい段階、いわゆる早期発見により乳がんの個性にかかわらず高い確率で治癒が期待できます。検診や自分の乳房を気にかけること(ブレスト・アウェアネス)が重要です。
更新日2025.10.30
掲載日2025.10.30

乳がんは日本の女性で一番罹患数の多いがんですが、早期発見によって高い確率で治癒が期待できるがんでもあります。早期発見には40歳以降の乳がん検診の受診や、日常生活でのセルフチェックが大切です。

乳房の中では乳頭(乳首)から「乳腺」が放射状に広がり、15〜20の乳腺葉に分かれています。それぞれの乳腺葉は「乳管(ぶどうの枝に相当)」と「小葉(ぶどうの粒に相当)」で構成されています。
乳房の構造

出典:専門医の監修を受け、株式会社メディコレ作成
乳がんは乳房内の乳腺組織に発生するがんです。大部分は乳管と小葉から生じますが、まれに乳腺以外の組織から発生することもあります。
乳がんが進行すると、がん細胞が増殖し、周りの組織や臓器に広がります。特に転移しやすい部位として、乳房の近くに存在するリンパ節(※1)や骨・肺・脳・肝臓などが挙げられます。
※1 リンパ節:全身に巡るリンパ管(リンパ液が流れる管)の途中にあり、身体の免疫機能を発動する役割を持つ。首や脇の下、股に多く存在している。


乳がんの明確な原因は特定されていませんが、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が発生に影響していると考えられています。以下のような要因は、現時点で明確には解明されていないものの、体内のエストロゲンに影響を及ぼし、乳がんのリスクを高める可能性があります。
しかし、これらのリスク因子があるからといって必ず乳がんになるわけではなく、逆にリスク因子がなくても乳がんになる可能性もあります。

乳がんは初期には自覚症状が少ないことが多いですが、進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状が必ずしも乳がんとは限りませんが、異変を感じた場合は早めに医療機関で診断を受けることが重要です。


2021年の乳がん患者は99,449例(男性667例、女性98,782例)で、人口10万人あたりの罹患率は79.2例(女性のみの場合は153.2例)だといわれています。
乳がんは他の部位と比べても罹患数が多いがんです。年齢階級別の罹患率(2021年)は、以下のとおりになっています。
年齢階級別罹患率【乳房2021年】

出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)を基に株式会社メディコレ作成
上記グラフのとおり、女性では30代から40代にかけて罹患率が急激に増加し、70~74歳でピークを迎えます。

国立がん研究センターによると、乳がんの5年実測生存率(※2)は、2014~2015年診断例全体で88.1%です。
※2 死因に関係なく、すべての死亡を計算に含めた生存率
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての人に当てはまる値ではありません
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」
一般的に、がんが乳房の中だけにとどまっている早期の段階で発見されれば生存率は非常に高くなりますが、進行してリンパ節や他の臓器に転移すると、治癒を望むことが難しくなり生存率も低下する傾向にあります。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。
※データは平均的、かつ確率として推測されるものであるため、すべての人に当てはまる値ではありません。

2023年における女性の部位別がんの死亡数は以下のとおりです。
部位別がん死亡数【男性・女性2023年】

出典: 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)を基に株式会社メディコレ作成
乳がんは日本人の女性が最も発症しやすいがんではあるものの、死亡数では4位にとどまっています。早期発見と適切な治療により、良好な予後が期待できる可能性が高いといえるでしょう。


乳がん検診は女性にとって重要な健康管理の一つで、症状が現れる前に乳がんを早期発見し、適切な治療につなげることを目的としています。日本では40歳を過ぎた女性は2年に1回の間隔で定期的に検診を受けることが推奨されています。
一方で、検診には「偽陰性(がんがあっても検査で見つからない)」や「偽陽性(実際はがんではないのに、がんの疑いありと判定される)」などの不利益もあるため、対象年齢や受診間隔を守って受けることが大切です。
乳がん検診として推奨されている検査は問診とマンモグラフィです。
月経の状況や妊娠・出産歴、授乳歴、家族の病歴、乳房の状態などについて確認します。
マンモグラフィは乳房専用のX線検査です。乳房を板で平たく圧迫して乳房全体を撮影し、石灰化(しこりの前兆など)した乳がんがないか確かめます。医療機関によっては、視診や触診をあわせて行うこともあります。
乳がん検診で異常が見つかった場合は、マンモグラフィの追加撮影や、超音波検査などの精密検査を受ける必要があります。精密検査の結果、異常がなかったり、良性の腫瘍であったりした場合は問題ありませんが、悪性の腫瘍と診断された場合は治療が必要になります。

乳がんの早期発見には、セルフチェックも極めて重要です。月に1回、自分で乳房の状態を確認する習慣をつけましょう。
閉経前の方は、月経が終わった日から1週間~2週間後に乳房がやわらかくなるタイミングのため、チェックするのに適しています。閉経後の方は毎月決まった日に行うと良いでしょう。
乳房や乳頭などに以下の異常がないか確認します。
乳房のセルフチェック

セルフチェックで異常を感じた場合は、早めに医療機関を受診してください。

乳がんの治療は、主に薬物療法・手術療法・放射線療法を組み合わせて行います。治療方針は、がんの進行度(ステージ)とがん細胞の性質を調べたうえで、患者の年齢や全身状態、妊娠などの希望をふまえながら決定します。

乳がんには、科学的な根拠に基づいた「標準治療」と呼ばれる治療法があります。
ここでは、国や専門の学会が出しているガイドラインをもとに、乳がんの標準治療についてわかりやすくご紹介します。
ただし、治療の内容は、がんの進行の程度やタイプ、身体の状態、ご本人の希望などによって変わります。自分に合った治療を受けるためにも、担当の先生とよく話し合って決めていくことが大切です。
乳房の手術(部分切除、全切除など)、センチネルリンパ節生検(乳がんが最も始めに転移するセンチネルリンパ節を採取)、腋窩リンパ節郭清(脇の下のリンパ節を採取)などが行われます。手術で採取した組織を詳しく調べ、がん細胞の性質を把握します。がん細胞の性質に応じて、放射線治療や薬物療法を追加するのが一般的です。がんが大きい場合や、がんのタイプによっては、手術の前に薬物療法を行う場合もあります。
これらのステージでは手術だけで乳がんを完全に取り除くのが難しい傾向にあり、手術の前に薬物療法をすることによってがんの縮小を試みます。がんが縮小すれば手術によって取り除ける可能性がありますが、難しい場合は患者の身体の状態や希望を考慮しながら、薬物療法や放射線治療を行います。

乳がんのステージは、がんの大きさや、リンパ節の転移の有無で分類されます。
病期 | がんの大きさ | リンパ節転移の状況 |
0期 | がん細胞が乳管や小葉の中にとどまっている | なし |
ⅠA期 | 2cm以下 | なし |
ⅠB期 | 2cm以下 | 脇の下のリンパ節にわずかな転移あり |
ⅡA期 | 2cm以下 | 脇の下のリンパ節に転移し、リンパ節のしこりが動く |
2〜5cm | なし | |
ⅡB期 | 2〜5cm | 脇の下のリンパ節に転移し、リンパ節のしこりが動く |
5cm以上 | なし | |
ⅢA期 | 5cm以下 | 脇の下のリンパ節に転移し、リンパ節のしこりが動かな |
5cm以上 | 脇の下のリンパ節か内胸のリンパ節に転移がある | |
ⅢB期 | がんの大きさやリンパ節の転移は関係なく、がんが胸壁に固定されている | |
ⅢC期 | がんの大きさやリンパ節の転移は関係なく、脇の下のリンパ節と内胸のリンパ節に転移がある | |
Ⅳ期 | がんの大きさやリンパ節の転移は関係なく、他の臓器や骨に転移している | |
※非浸潤がん:発生したがんが原発部位(乳がんであれば乳管や小葉)にとどまっている状態。反対に、がんが原発部位から広がった状態を浸潤がんという
出典:専門医の監修の基、株式会社メディコレ作成


男性乳がんは全乳がん患者の約1%といわれています。男性が生涯で乳がんを発症する確率は1,000人に1人程度と、女性と比較すると非常にまれです。特に60〜70代の男性に多く見られます。

主なリスク因子は以下のとおりです。
※3 男性のX染色体が生まれつき通常よりも多いことで生じる難病。通常よりも性腺機能が低下しており、思春期の頃から学習障害や小さな精巣、長い手足などが目立つ。

日本では、2023年の男性乳がんの死亡者数は、134人と報告されています。
男性乳がんは女性の乳がんほど身近な病気ではないこと、目立った症状が現れにくいことから、進行してから発見されるケースが多いといわれています。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)
2年ごとに継続して受診すれば、乳がんで亡くなるリスクを下げる効果を保ちつつ、毎年受ける場合に比べて偽陽性による不必要な再検査や過剰診断を減らせます。そのため、厚生労働省では40歳以上は2年に1度を推奨しています。
※家族歴がある方、遺伝性リスクが高い方、医師の指示がある方は、より短い間隔が適切なことがあります。
乳がんの生存率は、がんの進行度(ステージ)によって異なります。以下は、2014~2015年に診断された症例を対象とした、ステージ別の実測生存率の目安です。
乳がんの早期発見のためには、乳房のしこり、乳頭の分泌物や凹みなどの症状に早めに気づくことが大切です。乳がん検診を定期的に受けるとともに、セルフチェックで少しでも異常を感じた際は、早めに医療機関を受診しましょう。
また、男性も乳がんを発症する可能性があるため、特にリスク因子のある方は乳房のしこりを気にかけておきましょう。

小坂 泰二郎(こさか たいじろう)
JA長野厚生連佐久総合病院・佐久医療センター 乳腺外科
専門分野
保有免許・資格

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