保険
医療保険のメリット・注意点(デメリット)も解説
ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里
マネーステップオフィス株式会社代表
医療保険の必要性は、公的医療保険の保障内容、家計や貯蓄、ライフステージといった個人の状況によって変わります。医療保険のメリットとデメリット(注意点)を確認しながら考えてみましょう。
更新日2025.11.21
掲載日2025.11.21

医療保険は、病気やケガで入院や手術をしたときなどにかかる費用に備える保険です。一般的に、公的医療保険でカバーできない部分を補うために契約します。しかし、任意で加入するものですので、医療保険はいらないのでは?と考えることもあるかもしれません。医療保険の必要性について、メリット・注意点(デメリット)を確認しながら考えてみましょう。
医療保険では、病気やケガで入院したとき、所定の手術や治療を受けたときなどに給付金を受け取れます(商品やプランによって、含まれる保障の内容や数が異なります)。一般的に、病気やケガなどの際にかかる出費のリスクに備えて、公的医療保険でカバーできない部分を補うために契約します。
医療保険の保障範囲の一例
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ライフネット生命作成
※この図は、当社医療保険の商品内容ではなく一般的な医療保険の保障の一例を示しています(ライフネット生命より)。
公的医療保険では、保険適用される治療の医療費は年齢や所得に応じて原則として1~3割の自己負担に抑えられます。また、1ヶ月の医療費の自己負担額が高額になったときには、一定額を超えた部分が払い戻される高額療養費制度も利用できます。このため、病気やケガへの備えは公的医療保険で十分だという考えから、「医療保険は必要ない」「医療保険はいらない」といわれることもあります。
高額療養費制度とは?計算方法や申請方法、対象になる医療費をわかりやすく解説
一方、病気やケガで入院や手術をしたときには、入院中の日用品代や家族のお見舞い、通院にかかる交通費など、さまざまな雑費が発生することがあります。入院時に個室や少人数の病室を希望した場合には、医療機関所定の差額ベッド代が全額自己負担でかかります。また、治療方法として先進医療や自由診療などを選択した場合には、医療費の全額が自己負担になります。入院や療養のために仕事を休んだ場合には、収入が減少することも考えられます。
医療保険の必要性を検討する際には、このような経済的な負担やリスクについて理解しておくことが大切です。そのうえで、医療保険のメリットや注意点(デメリット)(詳細は#3、#4で解説します)をふまえて、ご自身にとって医療保険が必要かどうか検討してみましょう。(病気やケガにより長期間働けないときの収入減少に備える生命保険には、就業不能保険もあります。)
医療保険の必要性を考える際には、加入率などの客観的なデータも参考になります。では、実際にどのくらいの人が医療保険に加入しているのでしょうか。生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、疾病入院給付金が支払われる生命保険の加入率は65.7%です。ここには、民間の生命保険会社やJA(農協)、県民共済・生協などで取り扱っている医療保険や、疾病入院特約の付加された生命保険(個人年金保険や生命共済を含む)に契約している人が含まれます。

医療保険の加入率を性別で比較すると、男性は60%、女性は70%で、女性のほうが高くなっています。また、年齢別でみると、男女ともに20歳代から50歳代にかけて高くなることがわかります。
データからは、主に20代以降で医療保険の必要性を意識し、加入する人が増えていると考えられます。
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出典:(公財)生命保険文化センター 2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」より筆者作成

医療保険の必要性について、ほかの生命保険に加入している場合にはより意識が高まる可能性もあります。生命保険文化センターの2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」 によると、民間の生命保険に加入している世帯(かんぽ生命を除く)のうち、「医療保険・医療特約」の世帯加入率は95.1%です。
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出典:(公財)生命保険文化センター 2024(令和6)年度「生命保険に関する全国実態調査」 より筆者作成

では、医療保険の必要性はどのように考えればよいのでしょうか。メリットとあわせて確認していきましょう。

医療保険のメリットには、主に以下が挙げられます。
公的医療保険が適用される医療費の自己負担は、年齢や所得に応じて1~3割に抑えられています。また、公的医療保険制度には、1ヶ月にかかった医療費の自己負担額が所定の限度額(自己負担限度額)を超えた場合、その超過分が払い戻される「高額療養費」という仕組みもあります。
しかし高額療養費による補助を受けても、自己負担限度額内での出費はかかります。例えば、69歳以下で年収が約370万円~約770万円の場合、医療費が100万円かかり、窓口負担が30万円だったとすると、高額療養費によって、1ヶ月に自己負担する限度額は87,430円に抑えられます。自己負担限度額は年齢や所得に応じて異なるため、医療費および窓口負担の額が同じケースでも自己負担限度額がこれより低い場合もあります。また、直近12ヶ月に3回以上、同一世帯で高額療養費が支給された場合には、4回目以降の自己負担限度額が引き下げられる(上記条件の場合は44,400円になる)「多数回該当」などの仕組みもあります。このため、長期間にわたって入院や通院が続いた場合などに、4回目以降の自己負担が抑えられることがあります。
これらの公的保障の上乗せとして、さらに医療費の自己負担を抑えたいときに、民間医療保険を活用できます。
先進医療、患者申出療養、自由診療など、公的医療保険の対象にならない治療法を選択した場合には、原則として医療費の全額が自己負担になります。このうち先進医療については、多くの医療保険で保障プランに含まれているか、「先進医療特約」などを付加することで保障を受けられます。所定の先進医療に該当する療養を受けたときに、通算1,000万円や2,000万円といった支払限度額の範囲内で、技術料相当額の給付金を受け取れます。商品によっては、所定の先進医療などを受けた際に、先進医療給付金とは別に一時金を受けられるものもあります。
入院時に個室や少人数の病室を希望した場合には、医療機関所定の「差額ベッド代」がかかります。差額ベッド代には公的医療保険が適用されず、代金の全額が自己負担になります。厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第613回)『主な選定療養に係る報告状況』」によると、差額ベッド代の平均は1日あたり6,862円です。
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出典:厚生労働省 令和7年7月「中央社会保険医療協議会 総会(第613回)主な選定療養に係る報告状況」よりライフネット生命作成
また、入院中に医療機関で提供される食事代には、1食あたり510円の自己負担がかかります(一般所得者の場合)。仮に10日間の入院をして1日3食ずつ提供されたとすると、食事代の負担は15,300円になります。
加えて、入通院や家族のお見舞いにかかる交通費、入院時の日用品の購入費用、入院開始時に医療機関に払い込む保証金などには、公的医療保険は適用されません。医療保険に加入することで、これら全額自己負担となる費用にも備えることができます。
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ライフネット生命作成
医療保険の保険金・給付金は、入院や手術といった支払事由に該当したときに、契約時に定めた金額が支払われるのが基本です。先進医療など一部の保障を除き、入院や手術に実際にかかった医療費や高額療養費などで補てんされた金額に関係なく、「入院1日につき1万円」、「1回の手術につき20万円」、「入院給付金日額の20倍」など、所定の金額が支払われます。契約内容や入院・手術の状況などによっては、受け取った保険金・給付金額が実際に負担した金額を下回ることがありますが、仮に上回った場合にも、保険金や給付金の受取額が減額されるようなことはありません。
また、受け取った保険金・給付金の使い道は自由ですので、入院中の日用品の購入費や家族のお見舞い時の交通費、入通院に伴う収入減の補てんなど、さまざまな目的に活用できます。(病気やケガにより長期間働けないときの収入減少に備える生命保険には、就業不能保険もあります。)
医療保険には、入院や手術への保障を基本とするものが多いですが、特約付加などによって通院、がん、女性疾病、特定疾病といったさまざまなリスクに対する保障を付加できるものがあります。また、入院給付金のなかでも、入院日数に応じて入院給付金日額が支払われるタイプのほか、日数にかかわらず一律の給付金が支払われるタイプや、所定額の一時金が支払われるタイプなど、商品やプランにより多種多様な保障があります。
公的医療保険の保障内容は年齢や所得、働き方などによる違いはあるものの、個人のニーズに合わせたカスタマイズはできません。これに対して、医療保険では病気やケガに対する考え方やリスク、ライフプランに応じて必要な保障を選ぶことができます。
このような医療保険のメリットをふまえ、入院や手術への備えを手厚くしておきたいと考える場合は、医療保険の検討を優先するのがよいでしょう。
例えば、高額療養費の自己負担限度額の範囲内でかかる医療費の負担を軽減したい場合です。医療保険から保険金・給付金を受け取ることで、医療費の自己負担をさらに抑えられます。
プライバシーを確保したい、静かな環境で過ごしたい、家族がお見舞いに来たときに周囲に気を遣わずに過ごしたいなどといった理由で、入院時には少人数部屋や個室を選択したいという人も、医療保険の必要性が高まると考えられます。先ほど述べた差額ベッド代の平均額を目安に、医療保険の入院給付金日額を設定しておくことなどで、ご自身が入院したときに、差額ベッド代に充てることができるでしょう。
また、治療を受ける際に、先進医療を視野に入れて治療法を選択したいと考える場合には、「先進医療特約」などが付いた商品やプランを選ぶこともできます。
では、医療保険にはどのような注意点(デメリット)があるのでしょうか。検討の必要性がそれほど高くないケースもあるのでしょうか。

医療保険には、主に次のような注意点(デメリット)が挙げられます。
医療保険は、契約内容、被保険者の年齢、性別などに応じた保険料がかかります。商品プランや特約付加などによって保障内容を手厚くできますが、保障の種類や特約の数が多いほど、保険料は高くなります。公的医療保険で十分にカバーできない部分を補うためには多様な保障を付けておくと安心ですが、その分保険料の負担が重くなってしまいます。
また、年齢が高い場合や、健康状態に不安がある人に向けた無選択型や限定告知型などの医療保険に契約する場合などには、保険料が高めになる傾向があります。
なお、保険期間が一定の定期医療保険を選択すると、保障が必要な期間に絞って保障を確保でき、保障内容や保障額などの条件が同じ終身医療保険と比べて、保険料を抑えられます。ただし、保険期間の満了時に保障を継続する場合は、更新時に保険料が高くなる点に注意が必要です。契約当初だけでなく更新後についても、家計に無理のない保険料かどうかを確認しておくことが大切です。
他方で、保険期間が終身にわたって続く終身医療保険を選択すると、保障を一生涯確保できます。保険料は契約当初の金額のまま変わらないため、途中で保険料が上がる心配はありません。ただし、保険料払込期間が長い場合や終身の場合には、長期間にわたって保険料を支払い続けることで、負担総額が大きくなることがあります。
医療保険に契約する際には、無選択型を除き、被保険者の健康状態について告知や診査が必要です。持病や既往症がある場合には、保険料が割増される、特定の保障が制限される、引き受けができないなど、希望する内容で契約できない場合があります。
また、契約可能な年齢には制限が設けられているため、年齢によっては新たな契約ができないことにも注意が必要です。
医療保険には、払い込んだ保険料の一部が後に解約返戻金などとして戻ってくる貯蓄機能がある「貯蓄型」のタイプと、払い込んだ保険料が戻ってこない「掛け捨て型」のタイプがあります。このうち掛け捨て型は、保険期間中に保険金・給付金を受け取ったかどうかに関係なく、払い込んだ保険料は原則として、保険期間の満了時や解約時などに戻ってきません。
このような注意点に鑑みると、公的医療保険や家計の状況、保険に対する考え方によっては、医療保険の必要性はそれほど高くないと考えるケースもあるでしょう。
例えば、家計収支にゆとりがある場合や、医療費に充てられる貯蓄が十分にある場合です。病気やケガで治療を受けるときに公的医療保険が適用される治療方法を選択する場合は、1ヶ月ごとの医療費の負担は高額療養費の自己負担限度額までに抑えられます。この範囲内であれば医療費の出費があっても問題ない場合は、医療保険を優先して検討する必要はないかもしれません。
ただし、高額療養費の自己負担限度額は年齢や所得に応じて異なるため、働き方が変わったときや年齢を重ねたときには、自己負担限度額に変更がないかを確認しておくことが大切です。
また、入院や手術などがなかった場合に、保険料が戻ってこないのがもったいないと考える場合には、掛け捨て型の医療保険はニーズに合わないでしょう。この場合、所定の年齢に到達したときや保険料の払込が満了したときなど、条件を満たせば、払い込んだ保険料の一部または全額が戻ってくる「貯蓄型」の医療保険を選ぶこともできます。一部には、所定の年齢までに入院給付金などの受け取りがなかった場合に、払い込んだ保険料の全額相当が還付されるタイプもあります。ただし、必ずしもすべての商品やプランで、保険料の全額が戻ってくるわけではありません。
加えて、病気やケガに限定せず、介護や老後など将来のあらゆるリスクに備えてお金を積み立てておきたい、お金を増やしておきたいといったニーズには、医療保険以外の方法を含めて検討する必要があるでしょう。
※ここでの説明は概要です。詳しい商品の内容は各保険会社の約款などをご確認ください。
20代、30代など年齢が若い時期には、病気やケガのリスクがそれほど高くないと考えて、まだ医療保険は必要ないと考える人もいるでしょう。一方、万が一、家計にまだ十分なゆとりがない時期に入院や手術をした場合は、医療費の負担が大きくなったり、仕事を休むことで収入が減少したりする可能性も考えられます。これらの負担には、公的医療保険で保障を受けられることがありますので、まずはご自身の年齢や働き方で受けられる保障内容を確認してみましょう。
また、年齢が若い時期には、同じ保障内容や保障額で比べた場合に、保険料を比較的抑えられる傾向があります。健康状態が良好であれば、持病がある場合に比べて契約できる保障の選択肢が広がることも期待できます。保険料の負担と保障のバランスを考えて、医療保険の必要性を検討してみましょう。
がん保険では、がんと診断されたときやがんで入院や手術をしたときなどに保障を受けられますが、保障の対象は、基本的にがんのみに限られています。これに対して医療保険は、病気全般およびケガが対象になります。特定の病気に限らず、幅広い病気やケガに備えたいときには、医療保険を検討するとよいでしょう。なお、医療保険ではがんによる入院や手術なども保障対象になります。
医療保険に加入することで、公的医療保険だけではまかなえない医療費や入院費の負担に備えることができます。加入率は年齢によって異なり、30歳代以降では6割以上となり、50歳代では約75%と最も高くなっています。また、女性のほうが男性よりも加入率が高く、ライフステージによっても違いがみられます。
医療保険の必要性は、公的医療保険で受けられる保障内容や個人の状況によって異なります。差額ベッド代や先進医療など、公的医療保険でカバーされない費用に備えたいときに、医療保険が役立ちます。また、必要に応じて特約を付加して保障を手厚くすることもできます。ただし、保障内容を充実させると保険料が高くなるため、家計への負担も考える必要があります。家計や貯蓄にゆとりがある場合や、公的医療保険だけで十分と考える場合は、医療保険の必要性が低くなることもあります。年齢や家族構成、働き方などによって、医療保険に対する考え方やニーズが変わることもありますので、ライフステージごとに必要な保障や保険料のバランスを見直すことが大切です。
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