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老後の収入や支出はどのくらい?老後資金の平均額とは
ファイナンシャルプランナー 氏家 祥美
ハートマネー代表
老後資金の不安解消のためにも、平均データを参考にいまから老後に向けたマネープランを立てましょう。公的年金だけは老後資金が足りないという場合には、長く働ける道を探すほか、家計を改善して資産運用に努めるのも一つの方法です。
更新日2024.01.09
掲載日2024.01.09
漠然と老後資金の不安を抱えている方は、平均額を参考に、自分の老後の収入や支出を具体的にイメージしましょう。年金の試算や今後の働き方を考えることも大切です。
生命保険文化センターの「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」によると、「自分の老後の日常生活費は、公的年金でかなりの部分をまかなえると思うか」を尋ねたところ、「まったくそう思う」「まあそう思う」と回答した人は23.2%、「あまりそうは思わない」「まったくそうは思わない」と回答した人は73.9%でした。
公的年金だけでは足りないと不安を感じている人が、4人中3人の割合でいます。
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出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度生活保障に関する調査」をもとに作成
生活を考えるにあたって、平均余命について理解しておきましょう。平均余命とは、ある年齢の人が平均的にあと何年生きるかを意味する言葉です。似た言葉に「平均寿命」がありますが、これは0歳児が平均的にあと何年生きるかを表す言葉で、0歳児の平均余命を意味しています。
厚生労働省「令和3年簡易生命表」によると、年金の受給が始まる65歳の平均余命は、男性が19.85年、女性が24.73年です。つまり、男性は約20年間、女性は約25年間生活していくことを考えて、老後資金を準備する必要があります。
主な年齢の平均余命
(単位:年)
年齢 | 男 | 女 | ||||
令和3年 | 令和2年 | 前年との差 | 令和3年 | 令和2年 | 前年との差 | |
0 | 81.47 | 81.56 | △ 0.09 | 87.57 | 87.71 | △ 0.14 |
5 | 76.67 | 76.76 | △ 0.09 | 82.76 | 82.90 | △ 0.14 |
10 | 71.70 | 71.78 | △ 0.08 | 77.78 | 77.93 | △ 0.15 |
15 | 66.73 | 66.81 | △ 0.08 | 72.81 | 72.95 | △ 0.14 |
20 | 61.81 | 61.90 | △ 0.09 | 67.87 | 68.01 | △ 0.14 |
25 | 56.95 | 57.05 | △ 0.09 | 62.95 | 63.09 | △ 0.14 |
30 | 52.09 | 52.18 | △ 0.09 | 58.03 | 58.17 | △ 0.13 |
35 | 47.23 | 47.33 | △ 0.10 | 53.13 | 53.25 | △ 0.12 |
40 | 42.40 | 42.50 | △ 0.09 | 48.24 | 48.37 | △ 0.13 |
45 | 37.62 | 37.72 | △ 0.11 | 43.39 | 43.52 | △ 0.13 |
50 | 32.93 | 33.04 | △ 0.11 | 38.61 | 38.75 | △ 0.14 |
55 | 28.39 | 28.50 | △ 0.11 | 33.91 | 34.06 | △ 0.14 |
60 | 24.02 | 24.12 | △ 0.11 | 29.28 | 29.42 | △ 0.14 |
65 | 19.85 | 19.97 | △ 0.11 | 24.73 | 24.88 | △ 0.14 |
70 | 15.96 | 16.09 | △ 0.13 | 20.31 | 20.45 | △ 0.14 |
75 | 12.42 | 12.54 | △ 0.12 | 16.08 | 16.22 | △ 0.14 |
80 | 9.22 | 9.34 | △ 0.12 | 12.12 | 12.25 | △ 0.13 |
85 | 6.48 | 6.59 | △ 0.10 | 8.60 | 8.73 | △ 0.13 |
90 | 4.38 | 4.49 | △ 0.11 | 5.74 | 5.85 | △ 0.12 |
注:令和2年は完全生命表による。
出典:厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」
内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、2011年以降、60歳以上の就業率は右肩上がりに伸びています。グラフを見ると、2011年と2021年を比べると、60代は約14%、70代前半で約10%、70代後半も約2%上がっていることに気が付きます。
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出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」をもとに作成
仕事へ就くのには生きがいや健康維持などさまざまな目的がありますが、65歳時の平均余命が男性は約20年、女性は約25年あるなかで、公的年金だけでは不足する生活費を就労によって補うことができるのは大きなメリットだと言えるでしょう。
高齢者世帯では平均でどのくらいの収入、支出があるのでしょうか。総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」によると、世帯主が65歳以上の夫婦高齢者無職世帯の家計は以下となっています。
実収入約23.7万円から、消費支出約22.4万円と税金や社会保険料など約3.1万円の合計を差し引くと、1ヶ月あたり約1.8万円が不足する計算になります。
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出典:総務省「年報(家計収支編)2021年(令和3年)」総世帯及び単身世帯の家計収支をもとに作成
一方、単身世帯の場合には、実収入約13.5万円から、消費支出約13.2万円と税金や社会保険料など約1.2万円を差し引くと、1ヶ月あたり約0.9万円が不足する計算になります。
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出典:総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)」総世帯及び単身世帯の家計収支をもとに作成
このように、65歳以上の高齢者世帯の平均的な家計では、夫婦の場合には月額約1.9万円、単身の場合は月額約0.9万円が不足している結果になりました。しかし、この不足分だけを補えれば本当に十分と言えるのでしょうか。
老後のマネープランを考える上で重要なのは、平均額を知ることだけではありません。平均額を自分の暮らしの実態と比べ、そこから自分の未来に向けて、具体的なイメージを膨らませていくことこそが重要です。
生命保険文化センターが行った「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人の老後の日常生活に最低必要だと考える金額は平均23.2万円。経済的にゆとりある老後生活を送るために必要と考える上乗せ金額は、月額で平均14.8万円です。つまり、ゆとりある生活を送るためには、平均月額38万円が必要と考えられていることが分かります。
「ゆとりあるセカンドライフの生活費(夫婦2人、月額)」
(単位:万円)
最低の日常生活費(A) | ゆとりのための上乗せ額(B) | ゆとりある生活費(A+B) | |
2022年 | 23.2 | 14.8 | 38.0 |
2019年 | 22.1 | 14.0 | 36.1 |
2016年 | 22.0 | 12.8 | 34.8 |
2013年 | 22.0 | 13.4 | 35.4 |
出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」を基に算出
なお、老後のゆとりのための上乗せ額の使い道を聞いた質問では、1位が「旅行やレジャー」で60.0%と最も多く、2位が「日常生活費の充実」48.6%、3位が「趣味や教養」48.3%、4位が「身内とのつきあい」46.2%と続きます。
老後もこのような暮らしをしたいと考える場合には、ゆとりのためのお金を用意しておいた方が良いでしょう。
老後資金を考えるときには、「日常生活費」「備えるお金」「ライフイベント資金」の3つに分けて考えるとイメージがつきやすくなります。
老後資金のうち、日常生活のためのお金は、公的年金を中心にして考えます。公的年金は、受給開始から亡くなるまで、一生受け取り続けられる終身年金ですから、日常生活費に適しています。
公的年金額は、現役時代の働き方や納めた年金保険料によっても大きく異なります。例えば自営業で国民年金に加入していた場合は老齢基礎年金のみの受け取りとなりますが、会社員や公務員などで厚生年金に加入していると老齢基礎年金に老齢厚生年金の上乗せがあります。自分の場合は何歳から、いくらの年金が受け取れるのかを、早めに確認しておきましょう。
なお、公的年金の受け取り見込額を確認するには、毎年誕生日月に郵送で届く「ねんきん定期便」や、日本年金機構によるウェブサイト「ねんきんネット」で確認、試算することができます。
老後資金が足りなくなるリスクとして考えられるのは、入院や介護が必要になった場合でしょう。健康的に暮らしているときに比べると、医療費や介護費がかかりますし、日常生活についても誰かにサポートをお願いするための費用が必要になります。
不安がある人は、民間の保険で備える方法もあります。また、退職金や預貯金などですでにまとまったお金がある人は、そうした資金を医療や介護の備えとして取り分けておいても良いでしょう。
住宅ローンの支払いや、子どもの教育費、住宅のリフォーム費用など、老後のライフイベントにかかる資金が、いつ、いくら必要となるかを計算しておきましょう。日常生活費とは別にライフイベント資金を取り分けておくことで、老後のマネープランを立てやすくなります。
一時的にまとまった金額が必要になった場合は、公的年金だけでは間に合わない可能性も考えておきましょう。現役時代からの預貯金や投資、企業からの退職金などの一部を割り当てると良いでしょう。
公的年金だけでは老後資金に不安を覚える場合には、老齢年金の受給開始を遅くして年金額を増やす「繰り下げ受給」という方法があります。
公的年金の受給開始は原則65歳からですが、最大10年間遅らせることができます。その場合、繰り下げをした月数×0.7%の年金額が増え、増額率は一生続きます。70歳0ヶ月から受給開始をした場合には42%、75歳から受給開始をした場合には84%増やすことができます。
ただし、繰り下げ受給を行うことで、医療保険・介護保険等の自己負担や、税金に影響する場合があります。詳しくは日本年金機構のウェブサイトをご確認ください。
ほかにも、雇用延長や転職などで、60歳や65歳以降もできるだけ長く働ける場所を確保するという方法が考えられます。そのほか、現役時代から預貯金や資産運用をして金融資産を増やしておき、65歳以降も数年間は公的年金を受け取らずに自己資金を取り崩して生活していく方法もあるでしょう。
このように公的年金を繰り下げ受給して、増えた公的年金を一生受け取れば、老後資金が足りないという不安を緩和できる可能性があります。
住む地域や持ち家の有無、食生活や趣味によって一人ひとりの生活費は異なります。まずは自分の今の生活費を把握することから始めてみましょう。老後に向けて減らせそうな項目、増えそうな項目を確認して、老後の家計収支をイメージしてみましょう。
50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」には、いまの雇用形態・年収のまま60歳まで働き続けた場合の65歳からの年金見込額が書かれています。一方、50歳未満の人に届く「ねんきん定期便」には、これまで支払った年金保険料に基づく金額が書かれており、今後の就労分については考慮されていません。インターネット環境が整っていれば、「ねんきんネット」で試算してみることをおすすめします。
高齢者夫婦の1ヶ月の支出は平均で約25.5万円、単身高齢者の1ヶ月の支出は平均で約14.4万円となっています。ただし、4人中3人が「公的年金だけでは老後が不安」と答えていますし、ゆとりある老後には約14.8万円上乗せしたいと考えられているようです。老後資金の不安を軽減するためにも、老後に向けて家計を見直したり、働き方を考えたりするとともに、老後資金の運用や備えを早めに行いましょう。
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