社会に出て、本格的に働き始める人も多い20代。20代社会人におすすめのお金の貯め方は?毎月平均でいくらずつ貯金しているのか?20代だからこその貯金に対する考え方もお伝えします。
まずは世論調査のデータから一般的な20代世帯(世帯主の年齢別)の平均貯金額について見てみましょう。
※ここでの貯金とは、預貯金の他、各種金融商品を含みます。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によると、20代世帯の平均貯金額(金融資産を保有していない世帯を含む)は185万円、中央値は20万円です。中央値とは、ばらついたデータを順に並べたときにちょうど中央にあるデータのことです。つまり、分布としては20万円程度の貯金がある世帯が多いことになります。
平均と中央値に大きな差があるのは、金融資産を保有していない世帯が40.6%あることが大きく影響しています。この割合は他の世代と比較して多く、社会人になりたての20代はなかなか貯金ができない実態が読み取れます。
平均値 | 中央値 |
---|---|
185万円 | 20万円 |
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)(世帯主の年齢別20歳代)」より筆者作成
この調査には、年収別の貯金額のデータもあります。このデータを見ると、20代世帯に限りませんが、年収が増えれば貯金額も順調に増えていくというわけではないようです。
年収が上がったとしても、子どもの誕生などのようなライフイベントによって支出が増え、貯金に回す分が減るかもしれません。あるいは、子どもの誕生により将来の教育費にむけて一念発起し、貯蓄を増やすこともあるでしょう。
つまり、貯金額は年収に大きく依存するものではなく、ライフイベントの発生やライフスタイルの変化、それに伴う家計状況の変化も影響すると考えられます。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によれば、税金や社会保険料を除いた手取り年収の平均は274万円、中央値は250万円となっています。
過去30年ほとんど上がらなかった日本人の平均年収ですが、2023年度初めの春季労使交渉では、世界的物価高や人手不足などを背景に、多くの企業で賃上げが相次いで発表されました。
2024年以降も継続して賃金上昇が続くかどうかに注目です。
統計データをもとに、20代の1ヶ月あたりの生活費の特徴を見てみましょう。
20代世帯の生活費の内訳
項目 | 金額(月額) |
---|---|
食料(外食含む) | 35,615円 (うち外食費13,985円) |
住居 | 35,036円 |
光熱・水道 | 9,801円 |
家具・家事用品 | 4,371円 |
被服および履物 | 7,630円 |
保健医療 | 6,088円 |
交通(自動車等関係費含む) | 15,119円 |
通信 | 6,527円 |
教育 | 348円 |
教養娯楽 | 21,423円 |
その他の消費支出 (交際費・その他雑費など) |
21,671円 |
消費支出合計(月額) | 163,629円 |
出典:総務省統計局「家計調査(家計収支編)2022年 総世帯1世帯当たり1か月間の収入と支出世帯主の年齢階級29歳以下 学生は含まず」をもとに筆者作成
食費:他の世代より食費に占める外食の割合が高いです。
住居費:20代は持ち家率が一般的に低いため、他の世代に比べ、家賃支出が多くなっています。また、消費支出に対する割合も高いです。
教育費:子どもがいない世帯が多いため、消費支出に対する割合が極めて低いです。
教養娯楽:他の世代と比べて金額は特段多くありませんが、消費支出に対する割合は高いです。
20代で起きる可能性がある、大きな支出につながる主なイベントは、結婚、出産、住宅購入です。
結婚に関しては、株式会社リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2022」によれば、挙式、披露宴・ウエディングパーティーの総額平均が約303.8万円(推計値)です。他にも婚約や新婚旅行、新生活の準備にも費用がかかると考えられます。
出産費用は、厚生労働省の資料によれば※1、全国平均が約47.3万円ですが、出産育児一時金で50万円の給付が受けられるため、自己負担を抑えることができます。妊婦健診の費用は自治体から健診補助金が受け取れます。
また、雇用保険の被保険者であれば、一定の要件を満たすと「育児休業給付金」や「出生時育児休業給付金」の支給を受けることができます。ただ、支給額は休業前に得ていた賃金の満額ではありませんし、職場復帰時には時短や雇用形態の変更など働き方の見直しも起きやすくなります。こうしたことから出産や育児をきっかけに世帯収入が減ってしまう可能性があることに注意しておきましょう。
※1 厚生労働省 令和4年10月13日 第155回社会保障審議会医療保険部会 資料1-2 「出産費用について」より 令和3年度 正常分娩のみを参照
住宅の平均購入価格(全国)は、住宅金融支援機構「2021年度フラット35利用者調査」によれば、建売住宅が約3,605万円、マンションが約4,528万円です。支払いには住宅ローンを利用することが多いですが、頭金や諸費用として、住宅を購入するタイミングまでに住宅価格の25%程度を現金で準備しておくのが望ましいです。
20代の若い皆さんは、親や会社の先輩から貯金についてアドバイスを受けることもあるでしょう。しかし、経済や金融をとりまく環境は大きく変化しており、以前では選べなかった貯め方を選択できることもあります。国も若い世代の資産形成を後押しする制度を整えたり、改正したりしています。こうした制度を利用して、金利のほとんどつかない預貯金だけで貯めていくのではなく、リスクと適度に向き合いながら、各種金融商品も少しずつ取り入れていくといいでしょう。ここでは、資産形成をしていくときに利用したい代表的な2つの制度を紹介します。
※本記事での情報はあくまで情報提供を目的にしたものです。制度の詳細や注意事項についてはウェブサイト等でご確認ください。
日本に住む18歳以上の人なら誰でも利用できる、資産形成を支援する制度です。この制度の口座内で取引する、投資信託や株式などの金融商品から得られる利益に対しては税金がかかりません。一人につき一つ口座を開設できます。詳細は金融庁のウェブサイトをご覧ください。また、2024年1月には、非課税で投資できる金額が増え、制度自体が恒久化されることとなりました。
金融庁ウェブサイト:NISAとは? https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
自分で拠出した掛金を自分で運用しながら、老後資金を貯めていく制度です。NISA同様、運用益に税金がかからない他、掛金が全額所得控除になります。勤務先に確定拠出年金制度があれば、個人型ではなく企業型の確定拠出年金が利用できます。いずれも、拠出額(積み立てていく金額)は決まっていて、年金として受け取る金額は運用次第で変化します。年金制度ですので、原則として60歳になるまで引き出せないことが大きな特徴です。詳細はiDeCo公式サイトをご覧ください。
国民年金基金連合会 iDeCo公式サイト https://www.ideco-koushiki.jp/
いくら非課税のメリットがある制度だとしても、貯金する目的によっては向いていないこともあります。貯金の目的はなんでしょうか?使う時期や目的に合わせた預け先を選ぶことも大切です。例えばNISAは、1年後に投資額より増えている確証はないため最適とはいえず、他の貯金方法も併用して準備するのがおすすめです。
「1年後に転職を考えているので、希望の仕事を探すまで最低でも3ヶ月分の生活費を貯めたい」というのであれば、その預け先はiDeCoではありません。なぜならば、iDeCoは前述のように原則として60歳まで引き出せない老後の資金を貯める制度だからです。
確実に貯めていきたいという目的であれば、勤務先に財形貯蓄制度や社内預金制度が導入されているかどうかを確認しましょう。いずれも毎月の給与から天引きで貯められる点がメリットです。
財形貯蓄制度は一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3種類があります。貯める目的によって優遇される措置や引き出せる条件などが異なります。一般財形貯蓄は使用目的の制限はありませんが、利子非課税の優遇がありません。
社内預金制度は、法律で最低0.5%以上という、銀行の普通預金より高い利子をつけることが義務付けられています。引き出しの自由度が高いので、特段使い道は決まっていないけれど、資産運用の基になる資金を作りたいなどという目的に向いているといえます。
では、具体的に毎月いくらずつ貯金していけるでしょうか?手取りから生活費を引いて残りはいくらになるかと考えてしまいがちですが、おすすめは貯める分の「先取り」です。
まずは手取り額の10%から始めてみましょう。例えば月々の手取り額が18万円なら、10%の18,000円を貯金分として先取りし、iDeCoに5,000円、NISAに1万円、他貯金用の口座に3,000円貯めていきます。この作業は、給与から自動振替の設定を利用するなど、自分がやらなくても済むようにしておくのがおすすめです。
ここで、日々の支出の中で特に手数料(ATM、振込、延滞料金など)やリボ払い、分割払いの金利手数料などに着目してみましょう。これらの手数料も積み重なると大きな金額となります。意識して減らすことができれば、その分を貯金に回すことができます。
また、貯金とは異なりますが、ふるさと納税の活用もおすすめです。例えば返礼品にお米を選べば、その分の食費が浮くので、貯金に回すこともできます。この制度は確定申告で寄附金控除を受け、所得税や住民税の還付を受けてはじめてお得になる(※)のですが、こうした一連の手続きをすることで、納税に対する理解が深まるメリットもあります。
(※)一定の要件を満たせば確定申告不要で手続きできるワンストップ特例制度もある。
保険は、自分で対処しきれない不測の事態が起きたときに備えるものです。そうした意味では貯金があまりない20代にとって心強い味方になることもあります。また、生命保険は入りたいときにいつでも入れるものではありません。生命保険の契約には審査があり、入院や通院歴などによっては、契約ができなかったり保険料が高くなったりすることもありますから、基本的には健康なうちに検討をするのがおすすめです。年齢を重ねるにつれて病気になるリスクが高まるため、契約時の年齢が上がるほど保険料は上がります。
公的保険ではカバーしきれずお金が不足して困りそうな状況に対して、月々の保険料が安く済む健康で若いうちに、民間の保険に加入しておくと安心です。
20代での貯金は、貯まっていく金額を増やすことばかりに目を奪われず、目標達成のための貯金を意識してほしいと思います。
「やりたいことをやるためにいくらかかるから、毎月いくらずつ貯めよう!」という貯金です。
また支出という面では、まずは収入の中でやりくりすることが大切です。
そのためには浪費をなくし節約を心がけるようにしましょう。ただ、節約についてはやみくもに支出を減らすのではなく、自己投資や健康的な食事など、未来の自分を高める支出は惜しまないという視点も必要です。
お金の蓄えだけでなく自分の価値を蓄えることも目指してください。その結果、収入が増えることにもつながるかもしれません。
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[総世帯](令和4年)」によると、20代世帯の金融資産を持たない割合は40.6%です。100万円未満の割合も21.9%です。社会人になりたてで、収入がそう多くない中から貯金していくのですから、無理もありません。現在の貯金額が少なかったとしても、先取り貯金でしっかりと貯めていきましょう。
会社員か、自営業かなどの働き方によって適用される制度に違いがあります。会社員であれば、業務上の理由であれば労災保険から休業(補償)給付、それ以外は公的医療保険から傷病手当金などの保障を受けられます。給付には一定の条件がありますので、いざというときに自分が適用になるかどうかを調べるといいでしょう。
なお、自営業の場合は労災保険や傷病手当金がありません。公的な保障を調べたうえで、民間の就業不能保険や医療保険などを検討するとよいでしょう。
貯金をしたいと思ったとき、20代の強みは時間があることです。時間があれば、資産運用の途中で一時的にマイナスになっても、プラスに挽回できる可能性があります。また、運用で増えた分を元本にプラスして再投資することで得られる複利の効果も、時間が長いほど発揮されます。一方で、若いうちだからこそのお金の使い方もあります。無理のない範囲で自己投資や一生の思い出になるライフイベントへの支出など、価値のあるお金の使い方も意識していきましょう。
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