不確かさ・不確実性

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

(1) 私の身長は 176cm だが、今年の健康診断で計った結果は 177cm だった。
身長が伸びる年齢でもないので、1cm の差は誤差だ。

(2) ある保険会社では年間の死亡率は1000人あたり1人と見込んで死亡保険を設計し販売した。
ある年、被保険者10万人のうち90人分の保険金を支払った。
100人分の保険金を支払う想定であったので、10人分の誤差が生じ、その分の死差益が発生したことになる。

[問] 上の2つの文章で「誤差」という言葉を誤って使っているものを挙げなさい。(5点)
(どちらの文章もフィクションです。)

*******
最近知ったのですが、測定結果の評価の指標として国際規格などでは、誤差ではなく「不確かさ」というものを使用するそうです。
誤差は「真の値と測定値との差」のことを言うので、「真の値」がわからないことには誤差がいくらかもわからない。
ところが、そもそも「真の値」を知るために測定しているのだから、誤差もわからないことになってしまいます。
誤差を求める代わりに、測定値のばらつきをもって測定結果の評価を行い、その尺度を「不確かさ」というそうです。

さて、冒頭の文章ですが、
(1) については、もし 176cm が「真の値」であるなら、誤差はまさしく 1cm です。
ただし、そもそも 176cm が「真の値」なのか?ということはありますので、誤用の可能性は高いです。

一方で、(2)は、それとはまったく違う話です。
「100人」という数字は、確率統計でいうと「期待値」になります。
確率の問題では必ず「期待値」どおりに物事が起こるわけではないため、「期待値」が死亡者数の「真の値」というわけではありません。
したがって、そもそも「誤差」という考え方がここにはありません。
期待値との差のことを統計学では「偏差」といい、この偏差がどれくらい変動し得るかの尺度の一つが「標準偏差」いわゆるσ(シグマ)です。

「不確かさ」の話をたまたま知って、そういえば仕事のときとかで(2)のような意味で「誤差」という言葉を使っているなぁと感じたので、今回ブログで採り上げてみました。

数理部 岸本


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