ソルベンシー・マージン比率の算出基準の改正について

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

今年4月にソルベンシー・マージン比率の算出基準に関する保険業法施行規則等の改正が行われました。

ソルベンシー・マージン比率とは、
大災害や流行病の発生などによる保険金等の支払の増加や金融環境の急激な悪化による資産価値の減少など、通常の予測を超えて発生するリスクに対し保険会社がどの程度の支払余力を有しているかを示す指標の一つです。
純資産などの内部留保に有価証券の含み益などを加えた額(ソルベンシー・マージン)を、保有する保険契約や運用資産から計算したリスクで割った比率として計算します。

2007年4月に、金融庁の「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム」によって、
「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等について」ライフネット生命保険サイトの外へ移動します(新しいウィンドウが開きます)という報告書が公表されました。
その報告書において、短期的な取組みとしてリスク係数の見直しなどが指摘され、中期的には経済価値ベースでのソルベンシー評価を目指すべきと提言されました。

後者の経済価値ベースでのソルベンシー評価の導入については、その検討のために、全保険会社を対象としたフィールドテストライフネット生命保険サイトの外へ移動します(新しいウィンドウが開きます)を行うことが6月に公表されています。
一方で、今回(4月)の改正は、前者の「短期的な取組み」に相当するものです。

おもな改正内容としては、(生命保険会社の場合)
(1)比率の分子にあたるソルベンシー・マージンについて、一部の算入する項目について限度を設定し厳格化
(2)比率の分母のリスクの計算に用いる係数を、直近のデータに基づいてアップデートし、その水準を厳格化(信頼水準90%→95%)
(3)各会社の資産構成割合に基づいた分散投資効果をリスクに反映
(4)ヘッジ取引によるリスク削減効果についてはヘッジ効果が有効なものに限定
(5)証券化商品及び再証券化商品のリスク係数の厳格化、CDS取引にかかる信用スプレッドリスクの創設、金融保証保険のリスク係数の厳格化が挙げられます。
この改正による新しいソルベンシー・マージン比率については、今年度は参考数値として開示され、来年度から行政監督上の指標として用いられることになっています。

ライフネットのソルベンシー・マージン比率に関しては、この改正によって受ける影響は、おもに上の(2)と(3)の部分です。
資産運用リスクのうちの価格変動リスクに関しては、(2)によりリスク係数がほぼ2倍になっている上、有価証券のほとんどが円建債券(残りは国内株式)なので、(3)の分散効果によるリスク削減効果はほとんどありません。
その結果、価格変動リスクについては増加することになります。とはいっても、ライフネットのリスクの合計額(比率の分母)の一番大きい部分を占めるのは、改正前も改正後も保険リスクと呼ばれる部分ですので、リスクの合計額全体への影響はそれほど大きくはなっていません。

今年6月末時点の状況でいえば、リスクの合計額は改正前の数値から1割弱ほどの増加にとどまっています。
その結果、改正前のソルベンシー・マージン比率が 6774.5% だったのに対し、改正後の基準で計算した結果は 6232.5% と 542ポイントの減少になりました。

今回の改正がおもに資産運用リスクの評価に関する部分であったので、保障性商品(いわゆる掛け捨て)のみのライフネットにとっては、影響が限定的だったと言えます。

数理部 岸本

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