通勤途上の源氏物語

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

朝の通勤電車の車中は、わたしにとって大切なひと時です。
まず、長年の習慣で新聞を軽く読みます。つぎに朝のアタマのクリアーなときでもあり、若干カタい本を少しだけ読みます。そのあとメールやネットなどに目をとおし、携帯にダウンロードしてある与謝野晶子の現代語訳源氏物語にとりかかります。

源氏物語は3年ほど前に8か月ほどかけて原文を現代語訳さらに解説と対比しながら、なんとか全54帖を読みとおすことができました。以前から現代語訳には幾度か挑戦し、そのたびに挫折してきました。源氏物語は恋愛をテーマにした小説と言われていますが、わたしは恋愛小説をあまり好きではありません。それがなぜか読み進めることができたのは、現代語訳では味わえない原文自体の美しさに感動を覚えたことも一因かもしれません。また、恋愛小説の印象をまったく覆されてしまったことにもあります。わたしが衝撃を受けたのは、登場人物の若い人たちが亡くなってゆく場面の多いことです。現代では、死は老いとともに迫ってくるように感じられます。しかし、この時代では年齢にかかわらず、いつも死が意識されていたように思われます。

いまは21帖(乙女の巻)でまだまだ先は長いですが、とくに急ぐ気持ちもありません。最後まで読み終えても、ほかの人の現代語訳やマンガ「あさきゆめみし」などを読み続けるつもりです。通勤電車の混み合う中、揺られながら少しずつ読む毎日です。
1,000年前の世界に思いをはせて、これが物語というよりも現実のことのようにも思えてきます。登場人物ひとりひとりが浮かび上がり、季節ごとの美しい情景が鮮やかに描かれているのを読みながら、わたしは平安時代の人の世にどっぷりと浸っています。といっても、それはせいぜい10分程度で覚めてしまう夢の世界です。

物語は事実とは言えないが真実が描かれていると、作中で紫式部は書いています。源氏物語は、時空をこえて当時の日本の人々の生と死の真実の姿を伝えています。それは形を変えながらも、現代に生きるわたしたちに脈々と受け継がれているのかもしれません。

お客さまサービス部 中村でした。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加する
  • Twitterでつぶやく

ページの先頭へ戻る