エンベディッド・バリュー

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

先日、2011年3月時点の当社のエンベディッド・バリューの開示を行いました。
エンベディッド・バリュー(Embedded Value, 以下「EV」)は、「修正純資産」と「保有契約の将来利益現価」の2つから構成され、それぞれ生命保険会社の保有する資産と保険契約の(株主に帰属する)「価値」に相当します。

EVの計算において、市場で取引されているものはその時点の市場価格を用いますが、取引されていない保険契約の価値(保有契約の将来利益現価)などは現在価値による評価を行います。

現在価値というのは、将来のある時点での金額を利率で割り引いて計算した金額のことで、「割引現在価値」とか単に「現価」ということもあります。

いま手元にある100万円と、10年後にならないと手に入らない100万円とでは、同じ金額でもその「価値」は異なります。
仮に、10年後の100万円が、今すぐ手に入る90万円と同じ「価値」だとみなせるなら、この90万円が10年後の100万円の現在価値だということになります。

ローンの残りがあと1千万円だとしても、実際に将来返済する金額は1千万円より多くなります。
もちろん、これは利子が付くためですが、逆に将来の返済額から利子分を割り引いた現在価値がローンの残高1千万円である、ということもできます。

モノの「価値」は、それが将来もたらす利益の現在価値と等しくなるという考え方があります。
たとえば、株式の場合なら、市場の取引価格が将来の配当の現在価値に等しいと考えられます。
もちろん、将来の配当は金額が確定しているわけではありませんので、リスクを含んでいます。
そのため、市場価格もそのようなリスクが織り込まれた現在価値になっているとみなされます。

また、債券の場合は、利息と償還される額の現在価値の合計が債券価格ですが、利息と償還される金額が確定していても、実際に支払われるかどうかは確実(100%)ではないというリスクがあるため、現在価値にもそのようなリスクが反映されていると考えることができます。

もちろん市場で取引されているモノなら、取引価格がそのモノの「価値」であるとして済む話ですが、市場で取引されていないものなら、現在価値という考え方が重要になってきます。
保有契約の将来利益現価もその名の通り、保有契約から生じる将来利益を推計したものを現在価値にするという方法で計算されています。

将来利益の推計には、死亡率などの保険事故発生率や契約の継続率、会社の事業費などの前提が用いられるのですが、これらの前提は、直近の実績にもとづいて想定される最良の推計値が採られます。
しかし、実際には前提通りとなるとは限らないため、前提と実績の差がEVの変動の原因になります。
また、前提自体も実績にもとづいて毎回見直されるため、それによってもEVは変動することがあります。
これに加えて、経済状況によって、資産の価値や現在価値の計算に使う金利などが変化するため、EVもその影響を受けます。

さらに、EVの計算には、あくまでもその時点の保有契約の将来利益のみが考慮されますので、1年後のEVは、その1年間に獲得した新契約によっても増減することになります。
その年の新契約によるEVの増減額を「新契約価値」といいます。

新契約価値には、新契約を獲得するのに使った費用なども含まれるので、新契約獲得に対する評価として使うこともできます。

このように、EVは業績の評価などにも用いられています。
ヨーロッパを中心に使用されていますが、日本でも開示する会社が増えてきています。

数理部 岸本

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