災害と保険② 震災で気付かされたこと

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

前回4月に「災害と保険」と言うエントリーを書かせて頂いたのですが、それ以降も、微力ながら公私問わず震災に関わり続けている今日この頃、現地でしか知り様のない、まさに「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こってるんだ」と言わんばかりの多くの事例を見聞きするにつれ、是非自分自身の戒めとして残しておきたいと思いましたので、備忘録も兼ねて共有させて頂ければと思います。

●病院での支払いが無料だったので給付金は貰えない?
国の健康保険に加入していると、被災者の方々は窓口負担無しで病院等での医療が受けられたライフネット生命保険サイトの外へ移動します(新しいウィンドウが開きます)。のですが、窓口での支払いが無かったので、民間の医療保険は出ないと思っていたと言う声を多数聞きました。この声は一般の消費者のみならず、医師会の事務局でも同様の認識を持っている方もいらっしゃいました。サービスの提供サイドにいると、国と民間は全くの別物ですし、個人と保険会社の契約(約款)行為ですので、そう言った疑問そのものが湧かない可能性も高く、実態を正確に把握する事の重要性が改めて浮き彫りになりました。

●医療機関も混乱。自分の身は自分で守る
今回の活動の中で数多くの医療従事者ともお話させて頂いたのですが、震災直後から1ヶ月以上にわたり、医療の現場が機能不全に陥っていたと言う声も聞きます。医療行為自体は行われていても、カルテが整備されておらず誰に対して行ったのかわからない、当該日に医療行為や投薬を行った一覧としてのメモがあるが連続性がない、DMAT/JMAT等の医療チームによってフォーマットがバラバラで取得情報に差がある等です。また医療チームの情報管理主体も自治体によってバラバラだったりするそうです。医療保険の給付金等を請求する場合には、通常入院証明書などが必要となりますが、場合によってはそう言った証明書を発行する機関そのものが機能不全に陥る可能性もある訳です。自身が掛かった医者の所属や氏名、状態などを後で把握可能とするために、自分自身でもメモするなど自衛手段を講じておいて損はありません。損害保険分野でも、津波後の自宅写真等を自分で写真を撮っておくと支払いまでのプロセスがスムーズに行く例もあったようです。

●何故お隣さんは貰えて、自分は貰えないの?
地震保険分野では、隣の家は全損認定されたが、似通った状況でも半壊認定だった、隣の家はすぐに保険金が支払われたが、請求以降、いっこうに連絡が来ない等の声も聞こえてきました。生命保険分野でも同様に聞こえて来たのが、同じ症状なのにAさんは給付金が出て、Bさんは出ないと言うもの。これは商品概要では同じように見えても、商品詳細(約款)が会社や商品で微妙に違っていたり、加入した時期によって商品自体がバージョンアップされていたりするために起こるものです。ご自身が加入されようとしている保険契約、既に契約されている保険商品についての理解が重要である事を改めて思い知らされた良例でした。

これら以外にも、以下のような、大小様々な多くの気づきがありましたが、それらは別の機会にまたご紹介させて頂ければと思います。
●安否確認は保険会社の責務だが、お客さまの能動的な変更届けがあって有効となる
●安否確認は郵便+電話+メール+人。全てが重要で全てが補完的
●国・県・市町村の自治体も混乱。縦割り、押しつけ、リソース不足、優先順位・・・
●情報が届いてないのではなく、情報が有りすぎて余計に混乱
●TV、新聞、ラジオ、避難所掲示物、回覧板、口コミの全てが補完的。単一メディアでは到達不可能
●必要な情報の取得タイミングは人によって全く違う
●行動して欲しい場合には動機付けをセットにする必要あり
●ニーズが多様かつ刻一刻と変化。「大多数」、「普通」など一括りにはできない
●真に有効で、真に必要とされるサービス提供に絞るべし。多くが独善的になりがち
●郵便の留置き期間と転送設定は有効
●長期的な支援には、地元の理解や住民無くして成り立ちにくい
●重複機能や重複サービスも多く余計な混乱も。シンプルな仕組みや協力体制が不可欠
●口コミが重要な機能を担う

社長の出口が「ご契約者さまの安否確認について」と言うエントリーでもご紹介させて頂いておりますが、3月11日の震災直後から、ゼロベースで、保険会社として何を求められているか、何ができるのか、何をすべきか等を真剣に考えて来ました。もちろん先達や同業他社からも学ぶ事が多くあったのですが、やはり自分たちの目で見て、聞いて、考える。と言う事が本当に重要である事を改めて思い知らされました。
ネット生保と言うと、ともすれば「事件は会議室で起こっている」様に感じられる事もあるのですが、常に「事件は現場で起こっている」と言う事を肝に据えて、これからも、本当に必要とされる保険会社で有り続けられるよう、邁進して行きたいと思います。

菅 宏司

  • このエントリーをはてなブックマークに追加する
  • Twitterでつぶやく

ページの先頭へ戻る