確定申告と民主的コスト

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

こんにちは。法務部の木庭です。

3月も半ば近くとなり、確定申告の締め切りが近付いてきました。
これまでは、確定申告とは縁のない生活を送ってきたので、普段なら気にも留めないことなのですが、
昨年、人生初めての転職をしたおかげで、区役所から住民税の申告書が送られてきました。
初めて手にする確定申告の封筒の中を見てみると、どういう人が申告しないといけないかなど手続きのことばかりという印象を受けました。

ずっと日本に住んでいたなら気にも留めないことなのですが、数年前、ロンドンに住んでいたときに送られてきた地方税(council tax)の請求書のことを思い出しました。
これは日本の住民税のように所得に応じた地方税ではなく住んでいる家屋の評価額をもとにした税金で、不動産の所有者でなく実際に住んでいる人が支払うという点で日本の固定資産税とも違ったものです。

このときは、日本とは違って、急に多額の税金の請求書が送られてきたので、驚いたのですが、同封されている文書を読むと、学生とその扶養家族のみの世帯の場合は、近くの役所で免除手続きができると書いてあり、ほっとしたのを覚えています。
また、請求書に同封されていたパンフレットには、「あなたが払った税金がどう使われているか気になりませんか?」と書かれた挨拶文から始まり、それぞれの行政分野ごとに何にいくら使って、これから何をしようとしているのかという成果と計画が書かれていて、パンフレットの最後には、この冊子は1冊15ペンス(日本円で19円くらい)かかっているが価値に見合ったものと思いますか?などのアンケートが付いていました。

こうした経験から、税の免除手続き自体は面倒だけど、本来はこれだけの税金を払わないといけないんだと意識し、免除してもらっているという実感を持つことができることと、税金を払う人にとっては、税金を払って何に使うんだという思いをきちんと分かってますよという文章から始まり、実際に何に使っているかを教えてくれていること、最後に、パンフレット自体に価値があるかを伝える機会を用意してくれているということで、税金の意識を高め、行政サービスへの関心を高め、市民の声を行政の改善に繋げようとしている姿勢を感じました。

イギリスのように納税の手続きが面倒ではあっても、税金を納める側にも使う側にも、税金とそれを使った行政サービスのことを意識させることは、長い目で見れば住民の意図しない税金の使い方がされにくくなるというリターンを得られるのかもしれないなと思いました。
長期的に得られるリターンを考えれば民主的コストとして住民も受け入れているのだろうなと、確定申告のお知らせを見ながら思いました。
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