「引き算」の魅力

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ライフネット生命 スタッフ

前回の社員ブログで「『うつぶせ寝』が人生のブレークスルーになるのかもしれません」
なんてひとりで盛り上がっていたら、くちびるに連続して口内炎ができてしまい(うつぶせで寝ると歯があたって痛いので)最近はもっぱら「あおむけ」寝の堅田です。

さて先日、妻との待ち合わせまでの間に何気なく駅の本屋で手に取った「容疑者Xの献身」を即日読了。さらに勢いで、翌日も妻から借りた別の推理小説を一気読みしてしまったことから、にわかミステリーブームな今日この頃です。
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思い起こせば中学時代、中高一貫校に通っていて受験勉強が必要無いのをよいことに、いわゆる「新本格派」と呼ばれる、島田荘司や綾辻行人の推理小説に夢中になり、授業の合間のわずかな休憩時間が待ち遠しくて仕方ありませんでした。月並みな表現ですが、最後に明かされるスケールの大きなトリックやどんでん返し、ひと癖もふた癖もある魅力的な登場人物との対話に加えて、作家との「ルールに則った知恵比べ(※1)」といった一面も負けず嫌いな自分の性格に合っていたのかもしれません(もちろん、ついぞ勝てた試しはありませんが…笑)。

一方、一度読んでしまったら(伏線に納得がいかない or伏線を見落とした自分に納得がいかない場合を除いて)普通は推理小説を何度も読み返そうとは思いませんが、そんな中で「これは大人になったら絶対に読み返したい!」と思った本が一冊だけありました。それが、中井英夫の代表作「虚無への供物」です。
ライフネット生命保険サイトの外へ移動します(新しいウィンドウが開きます)「虚無への供物」

仰々しいタイトルと禍々しい(?)カバー、そして「日本探偵小説史上の三大奇書」などというふれ込みまで付いてくると、ただでさえ腰が引けてしまいそうですが、一度読み始めると…。全く準備していない世界史の期末テストの前日に読み始めるのが一番危険です(経験者語る)。

「虚無への供物」は、1962年の江戸川乱歩賞になんと「前半(第2章まで)」しかない未完成稿のまま応募され、最終選考まで残ってしまうのですが、これがこの作品の魅力を端的に物語ったエピソードかもしれません。つまり、通常の推理小説は物語が進むにつれて新しい事実・証拠・要素が発見され、「足し算」されていき、最後に探偵役がそれらを結びつけて犯人を明らかにするものなのに対して、この小説では後半に入って前半に積み上げた要素がどんどん「引き算」されてしまいます。そして最後に残っていた要素から分かることは…という発想の転換。推理小説の形をとりながら、推理小説であることを拒否する(?)アンチ・ミステリーの名作と呼ばれることも。ぜひ一度挑戦してみてください。

さて、ここでようやくタイトルの「引き算」について。製品・サービスの要素をバッサリと捨ててしまう「引き算」の発想は、2005年のベストセラーとなったビジネス書「ブルーオーシャン戦略」の中でも大きく取り上げられていました。私たちライフネット生命の保険商品も「特約をバッサリと捨ててしまった」という意味で、「引き算」の発想で設計されています。保険業界以外からの転職組である私も、例にもれず当初は「わかりやすい単品販売」という程度の印象だったわけですが、保険業界で経験を積まれた方々との接点が増えるにつけ、それが業界の慣習から見て、かなり大きな発想の転換であったということを、(若干手前味噌ですが)改めて感じるようになりました。これからも、業界の慣習にとらわれず、お客さまの目線から常に新しい発想で事業に取り組む会社を目指して頑張りたいと思います。

と、かなり強引に保険の話につなげてしまいました。今度の三連休に控えている引っ越しが落ち着いたら「虚無への供物」、読み直してみようかな、と思っています。大人になったことで、新しい発見や気づきがあることを期待しつつ。

追伸: 先週末は、当社ランニング部の面々と湘南国際マラソン10kmの部に出場し、6名全員気持ちよく完走することができました。7月のクラブ結成から早4ヶ月ちょっとで、皆勤賞の部長はすでに練習で通算140kmを突破。「積み重ね」、大切ですね。これからも、あせらずたゆまず、楽しみながらトレーニングに取り組んでいきたいと思います。

堅田 (企画担当 兼 事業開発部)

※1:推理小説のルールとしては、「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」などが有名です。「犯人は物語の当初に登場していなければならない」「探偵は読者に提示していない手がかりによって事件を解決してはならない」「探偵自身、あるいは捜査員の一人が突然犯人に急変してはいけない」などなど。

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