メッセージと思い出

投稿者:
ライフネット生命 スタッフ

その時はふーんと思いつつ、人から聞いた抽象的なメッセージというのは、ある現実に触れるとフラッシュバックして、ああ、あれはそういうことかと腑に落ちることがあります。

例えば、最近のウクライナやシリア、タイなどの状況を見ると、かつての職場の上司が、日本が高度経済成長できた理由は深刻な国内対立の火種を抱えていなかったこともあると話してくれたのを思い出しました。

確かに、経済の安定には取引の安全が必要で、個人の財産を守ってくれる安定した司法制度と、それを支える安定した政治体制が大前提です。
騙されて損したら返してもらえる、泥棒は捕まるというルールを決めて執行する司法制度があるから安心して取引できます。

一方、抽象的なメッセージに触れて、過去の自身の経験を思い出すこともあります。
会長の出口は、最近の著書の中で元米国国務長官ヘンリー・キッシンジャーから、
”人間も、このワインと同じで生まれ育った地域の気候や歴史の産物なんだ”
”若い皆さんは地理と歴史を勉強しなさい”
”自分の足で歩いて回って人々と触れ合って、初めて世界の人のことが良くわかる”
と聞いたことを紹介しています。

これを読んで、そういえばそうだなとスペイン(バルセロナとグラナダ)に行った時のことと、ロンドンに住んでいたときのことを思い出しました。

まずスペイン。
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バルセロナとグラナダのどちらもスペイン国旗よりも、その地域の旗を多く目にしたのですが、目にする機会は圧倒的にバルセロナの方が多い。
そこでは多くのマンションの部屋の窓からカタルーニャ旗が掲げられていました。
また、ある時はバルセロナ近郊の街のレストランで、シードルはあるかと聞くと、それはカステーリャのものでうちにはないと言われましたし、別の日にはバルセロナの駅前でホテルの場所を教えてくれたおじさんにグラシアスとお礼を言うとカタルーニャ語ではこうと言うんだと教えてくれました。(残念ながら忘れてしまいましたが)

日本にいるとスペインは一つの国家のイメージしかありませんが、そもそも17の自治州に分かれている国だけあって、現地に行くと、ここにカステーリャ王国、グラナダ王国、アラゴン王国があったのだという歴史と結びつきます。こういう感覚は、実際に旅するまで分からないものでした。

次にロンドンで育児生活をしていた時のこと。
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近所の子育て支援センターで毎週木曜の夕方に開かれていたパパの集まる会にベルギー旅行で買ったクッキーを持っていき、お土産のクッキーだと言ったら、あるイギリス人パパは、クッキーはアメリカンイングリッシュだ、これはビスケットというんだと子どもに教えていました。また別の日の同じ会で方言の話になったときに、地域だけじゃなくて、階級(class)でも言葉は違うと聞きました。

日本にいたときはイギリスもアメリカも同じ英語の国のイメージしかありませんでしたが、イギリス人の持つ自国の言葉を守ろうとする姿勢、階級の違いを自然なものと捉えている様子も、実際にローカルに生活する人と触れ合ってみないと分からないものでした。

このように、現実から抽象的なメッセージを思い出したり、抽象的なメッセージに触れて体験したことを思い出したりするわけで、人から話しを聴き、本を読み、旅をするといった経験を積み重ねていくと、先人の言葉は多くの経験に裏付けられたもので、普遍的なものなのだろうという考えが強くなります。

特に前職では公共政策を扱っていたので、
”不易流行”、
”感情は一時的なもの、制度化して持続させることが大事”
といった言葉を聞きました。何が移ろいやすいもので、何が普遍的なものか。
歴史や経験に学ぶとともに、様々な人の意見を聞きつつ、その関係性や、その相違点をもとにして、一時の感情に流されずに考えること。何が同じで何が違うか。何が不易で何が流行か。

明日で東日本大震災から丸3年、来年は第二次世界大戦終結から丸70年になります。
自然災害の発生は人為的に止めれないので起きた時に被害を最小化するため、紛争や戦争は避けるために、歴史から学べることは多いと思います。
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これは今のコンプライアンスの仕事にも通じるもので、他社の失敗事例に学びながら、同じことが起きないよう取り組んでいます。

法務部 木庭

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