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デグチがWatch 生命保険業界のオピニオンリーダー・出口治明が、生保について鋭くやさしく語ります!

出口の真っ正直インタビュー 三村 国雄、入部 寛(みむら くにお、いりべ ひろし)編

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ライフネット生命 スタッフ

真っ正直インタビューの記念すべき第30回目は「平成24年版厚生労働白書」を執筆された三村さんと入部さんとの鼎談です。

出口が毎週執筆しているダイヤモンドオンラインの連載で「社会保障に関する国民意識調査」を取り上げたところ、「ぜひ白書のほうもご覧ください」と入部さんからDMを頂き、出口が白書に感銘を受けたところから今回の鼎談が実現しました。

-「厚生労働白書の参考文献を見たときに、ロールズとかサンデルをあげておられて、僕の記憶ではこれまでの白書ではこういうセンスはなかったように思います。(出口)」-

出口(以下、出): 「平成24年版厚生労働白書」の第一部をほとんどお二人でご執筆されたという話を伺いました。たくさん白書がありますが、今回のように執筆当時に20代、30代の方がほとんどを書くというのは、あまりないことではないですか?

三村(以下、三): 経済財政白書(旧・経済白書)などを作っている内閣府ではしっかりした体制で書かれると伺っていますが、厚生労働省は職員もそんなに多くないので、一人あたりの作業量は多くなります。確かに執筆は私たちが担当しましたが、テーマの構想や構成、執筆のスタンスなどについては、もちろん上司や幹部と何度も緻密に議論しましたし、最終段階では、細かい校正もお願いしてしまいました(笑)

入部(以下、入): 今振り返ると、執筆はかなりこじんまりとやっていました(笑)。旧厚生省が出していた厚生白書時代はもっとスタッフも多く、管理職が中心になって書くことが多かったようです。

出: 参考文献を見たときに、ロールズとかサンデルをあげておられて、僕の記憶ではこれまでの白書ではこういうセンスはなかったように思って、印象に残っています。

三: ロールズなどの理念・哲学的な議論を白書で取り上げたというのは、おそらく初めてです。今回は「社会保障を考える」というテーマなので、学生などの若い人にも読んでいただこうと思いながら書きました。平成24年というのは社会保障と税の一体改革ということもあって社会保障全体についていろいろと話題になる中で、そもそも社会保障というのはどういうことなのかと。社会保障を考えるということは、どういう社会が人々にとって良い社会かと考えることが大切である、と思ったときに、例えばロールズという社会哲学者が社会とはこうあるべきだと言ったと。そういう視点も加味しつつ社会保障の今の制度やこれからのあり方を見つめていくのが大事ではないかということで紹介しました。

出: ライフネットも保険の原点になる250年前のドッドソンに戻って、と言っているんですが、社会のあり方の原点まで戻って考えるということはすごく新鮮な、熱い気持ちを感じました。

-「年金の多い・少ないという話と、「社会・世代間の不公平」とは違うテーマではないか(三村)」-

出: もうひとつ、世代間格差の問題をきちんと書かれていますね。人間の社会というのは、お年寄りもいれば中年も若い人もいる、どんな社会にも老中青というのがあるわけですよね。「ある切り口でみたらアンバランスはあるけれど、高齢化の必然でもあるし、今の世代はすごく豊かな世界に生きているのですから、世代間の対立などは意味がないんですよ」といった趣旨のことを書かれていたところが印象に残っています。僕は会社も国家も全部同じだと思っているんですけど、会社で言えば60代の社員と20代の社員が喧嘩をしている、そのような状態で会社が発展するなんてありえないですよね。

入: その辺りはいろいろとご批判いただきましたし、若い人が執筆したと言われているけどウソじゃないかといわれたりもしたようです。しかし、実際のところ社会の成熟過程において、私的な扶養が社会的な扶養に置き変わっていく中で、我々若い世代はその分の負担が軽減されているということは、社会保障を考えるに当たって見過ごしてはならない点です。

三: あれは我々オリジナルというわけでもなくて、厚生労働省の年金部会や社会保障教育の検討会などでも議論されているところを踏まえて書いています。要は、年金の多い・少ないという話と、「社会・世代間の不公平」とは違うテーマではないかという議論です。たとえば社長が生まれた年の人たちと私たちが生まれた世代はどっちが幸せですか?といっても正しい答えはないわけなんです。

出: 永遠に比較はできないですよね。

三: そういう不公平・公平と、年金の損得というものは基本的に次元が違う話だと思うんです。年金がいっぱいもらえるからといってどっちの世代がトクをし、どっちが損をしているという話ではないのではないかと。若い人は、今はお年寄りを支えていますけれど、忘れてはいけないのは自分たちもいずれはお年寄りになり、支えられる存在になるということです。金銭的な損得だけではなく、支える仕組みについて考えていかなければならないということです。

出: 全体を見ないと議論できないということですね。支払った年金保険料と年金の支給額の対比だけで比べるというのは、方法論が間違っていると思います。

-「世代間の対立を議論して行き着く先になにがあるというのか、ということに先進各国の人たちは気づいたということかもしれません。(入部)」-

入: 社会保障制度はその時々の時代背景を前提に作られ、時代の移り変わりとともに調整されていくものです。経済社会全体のサブシステムとして社会保障制度が埋め込まれていると言えばよいと思います。なので、ある時点の社会保障制度だけ比較して、しかも損得で考えるというのは、それも一つの視点かもしれませんが、単純化しすぎではないかと考えています。

三: 社会保障を本当に理解するということは難しいことです。歴史的観点、社会哲学的な観点や国際比較などいろいろな切り口をいれたのは、物事にはいろんな側面があって、総合的に見ることが重要だという認識が背景にあります。

出: 日本で見られる世代間の対立のような議論は世界でもあるんですか?

入: 日本と韓国ぐらいですね。とりわけ、日本が一番メディアでも報道されているようです。フランスでもそういう議論がありましたが短い期間で収束したと聞いています。世代間の対立を議論して行き着く先になにがあるというのか、ということに先進各国の人たちは気づいたということかもしれません。ロールズもいっているような社会的協働をどうやって実現していくか、ポジティブに考えていかないと、社会のサスティナビリティが確保できないのではないかというふうに思います。

出: 不公平があるならそれをなくすようにしなくてはいけないということに間違いはないと思うのですが、世代間対立を煽るだけのような論調というのは、誰も得をしない、社会を不安定にするだけのような気がします。

-「報道で知るよりも前に、知識として基本的な制度の仕組みを教育現場などで身につけるというのが必要なこと(三村)」-

三: 特に若い人からそういう議論があると思うんですけれど、スウェーデンなどでは税金など社会保障に払ったお金は取られるというよりもいずれ自分に返ってくるという信頼感があります。社会もよくなるし自分たちも支えられる、と。そのあたりはわれわれも反省しなくてはいけないのですが、国や制度に対する信頼が不十分で、恩恵が帰ってくるというより“搾取されている”いう意識になってしまっています。自分たちも歳をとったときに支えられるという、循環して社会を安定化させていく仕組みだという理解をしっかり深めていかないといけないのですが…。

出: 信頼以前に知識がないというか、基本的な金融とか教育の知識がないというのが原因としてありますよね。教育が社会で生きていくための力を与えることであるなら、最低限の金融や社会保障のリテラシーを教えるべきかなと思います。

三: 現代の日本社会で年金や金融に関することは、報道を通じて知ることがほとんどだと思います。報道は時間や紙面の制約もあり、どうしても部分的な話題に偏りがちで、センセーショナルな内容も多いです。そういう情報だけ見てしまうとどうしても不安になってしまうのは仕方がないことだと思います。
本来であれば、報道だけでなく、教育現場などで基本的な制度の仕組みを正しく理解する機会を持つことが、リテラシーという観点からも重要だと思うのですが、なかなか教育現場というのは受験科目を消化するので手一杯になってしまっているようです。

-「子どもが減っていく社会は衰退していく(出口)」-

出: 僕は歴史おたくなので歴史書を見ていると、子どもが減っていく社会は衰退していくんですよね。子どもが減っていったら国はもたないんだよと狼少年的に警鐘を鳴らしていったほうがいいんじゃないかと思うのですが、国のサスティナビリティ(持続可能性)を考えたときに、ご専門のお2人はどう考えていますか?

三: 難しい問題ですね。社会保障を支えていく労働力を確保していくことを考えると、能力があるけど十分に発揮できないのは損失だと思います。例えば女性や高齢者が働きやすい環境を整えることで、支える人を増やしていけば大丈夫であるという全員参加型社会の考え方が重要ではないでしょうか。

出: 短期的にはそれでいいと思うんですけど、生まれる赤ちゃんがどんどん減っていったらその先はどうなるんだろうとすごい不安で。僕が個人的に思うのは、日本がすべきはフランスのシラク三原則ではないですが、産みたければいつでも産めるような政策をとらなければいけないのではないか、と。

※ シラク3原則を核とするフランスの少子化政策

  1. 子どもを持つことによって新たな経済的負担が生じないようにする
  2. 無料の保育所を完備する
  3. 〈育児休暇から〉3年後に女性が職場復帰するときは、その3年間、ずっと勤務していたものとみなし、企業は受け入れなくてはいけない

以上の3原則をしっかりと樹立し、出産・子育てと就労に関して幅広い選択肢ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向の政策を指す。婚外子を差別しないPACS(民事連帯契約)もこの政策パッケージの中に含まれる。

入: なぜ人口が減っているのかというと、最大の原因は晩婚化です。晩婚化の原因は、結婚して子どもを生むということ自体が大変だし、といった価値観の多様化のほかに、所得の問題もあると思います。

三: 若干懸念されるのが、夫婦が生涯産みたい子どもの数が減少傾向にあるということですね。つらいと思うことを軽減し、安心して産み育てられる社会を作っていくことが重要です。また、フランス等の欧米諸国と日本とでは婚姻に関する考え方が違うところがありますが、それぞれの社会における価値観を反映しているとも思います。

-「制度が社会を規定する部分というのは確実にある(入部)」-

出: 変な話ですけど、ものすごく大胆なリーダーが出てきて、「日本でもPACSをやるんだ」と言ってやってしまえば、10年20年たてば馴染んでしまうかもしれない。制度を作ってしまったら意識も変わりますよね。もちろん、文化や慣習にまったく合わない制度を作ったら混乱するかもわかりませんけれど。

三: 制度が人々の意識の変化をもたらすというところはありますね。例えば介護保険制度を創設したことで、高齢者の介護は家族だけで抱えるものではなく社会で支えるものという意識が広まったということがあります。

入: 私は、先輩から「よく考えて作られた良い制度は必ず国民の支持を得て早く定着する」という言葉を聴いたことがあります。やはり制度が社会を規定する部分というのは、程度問題こそあれ、確実にあるのではないかと思っています。

出: 今日は、厚生労働白書を軸に、社会保障の在り方、少子化など、多岐にわたるお話で僕も勉強になりました。もっとお話ししたい内容があるんですが、残念ながらお時間になってしまいました。どうもありがとうございました。

三、入: こちらこそ、ありがとうございました。





三村 国雄(みむら くにお)さんプロフィール

厚生労働省 雇用均等・児童家庭局家庭福祉課 母子家庭等自立支援推進官 2000年入省。2011年8月から同省政策統括官付政策評価官室で『平成24年版厚生労働白書-社会保障を考える-』の執筆等を担当。2012年9月から現職。


入部 寛(いりべ ひろし)さんプロフィール

厚生労働省 医薬食品局食品安全部基準審査課長補佐 2004年入省。2011年8月から同省政策統括官付政策評価官室で『平成24年版厚生労働白書-社会保障を考える-』の執筆等を担当。2013年1月から現職。


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