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出口の真っ正直インタビュー 藤岡 比左志(ふじおか ひさし) 編

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ライフネット生命 スタッフ

真っ正直インタビューの第20回目は、海外旅行の心強いパートナー「地球の歩き方」を発行しているダイヤモンド・ビッグ社の代表取締役社長、藤岡 比左志さんです。旅行者のニーズに合わせて変化することを厭わず進化し続けてきた「地球の歩き方」。ネット時代にあるべき姿としてネット生保を始めたライフネット生命。旅行と生保は遠いようで近いのかもしれません。加えて出口は大の旅行好きで「本と旅の虫」。どんな展開になるのやら?

-「旅行者の目で地球の歩き方を使ってみることが大事(藤岡)」-

出口(以下、出): 藤岡さんは、年末年始は海外で過ごされているのですか

藤岡(以下、藤): そうなんです。ほとんど海外で、毎年違う場所で過ごすのが定番になっています。今年はラオスでした。

出: 僕も昔は海外でしたが、ライフネット生命を起業してからは時間がなくて。人間ドックも今年4年ぶりに行きました。

藤: お忙しいですね。海外旅行といえば、当社には海外旅行推進手当制度というものがあるんですよ。というのもね、みなさんに海外旅行に行ってもらって成り立つ仕事ですから、社員にもどんどん海外に行ってほしいなと。どこでも良いから海外旅行に行くなら1年に1回10万円出すよ、という制度です。

出: それはいいですね。手を挙げて、海外に行きますので休暇をください、と言ったら無条件でお小遣いがもらえるわけですね。

藤: その代わり、帰ってきたら旅行のレポートをイントラネットにあげるという規則になっています。なので、イントラネットには社員の旅行体験記がたくさんあがっているんですよ。家族がいると10万円だとそれだけで足りるわけじゃないですが、独身なら持ち出しなしで海外に行ける場合もありますから、社員は喜んでいると思います。

出: それは藤岡さんが作られた制度なんですか?

藤: 社員からの提案です。地球の歩き方らしい制度ですし、みんなのモチベーションもあがりますしね。多少厳しくなってもこの制度だけは守りたいなと。

出: そういう社員のモチベーションを高めるやり方、参考にしたいです。わくわくしますよね。

藤: 僕は、「旅行者の目で地球の歩き方を改めて見てみる・使ってみる」というのが大事だと思っているんです。だから、旅行者の目で海外旅行をする機会を1年に1回でも持つのはとても大事。ガイドを作ってばかりじゃ見えないこともあるでしょう。僕も、海外に行くときは成田空港の書店で地球の歩き方を買って行くんですよ。で、実際に使ってみる。ですから、情報に誤りがあったりすると腹が立ちますよ(笑)

出: 実は僕も間違いを発見して、イランとかインドとか、何度か編集部にお知らせしたことがあります。

藤: ありがたいです(笑)やっぱりね、どんなに完璧に作り込んだとしても、向こうの事情で店がクローズしたり、場所が変わったり、1ヶ所、2ヶ所は古い情報になってしまうことってあるので、タイムリーに情報を教えてくれる旅行者の方々のご指摘はうれしいです。

-「人口でみれば生命保険も旅行ガイドも近いビジネス(出口)」-

出: 僕も「地球の歩き方」にはとてもお世話になっているんですけど、1冊つくるのに、何人×何ヶ月くらいかかるのですか?

藤: 国によるのですが、移動が割と簡単なヨーロッパは短い時間でできますし、ロシアなど広大な国は、国内移動をするにもモスクワに戻らなきゃいけないというように、やはり時間がかかります。そういう意味では、途上国の取材ほど難しいです。 一番取材が平易なのは国土の狭いシンガポールです。

出: 海外ではマイナーな国を取り上げているガイドブックであっても、言語が英語ですから世界中がマーケット。その分ニーズもあってコストも割きやすいのかなと思います。でも、「地球の歩き方」は日本語ですからどうしても市場規模は小さくなってしまいますよね。それでも南米、アフリカ、バルト三国など日本人旅行者が少なそうな国や地域も取り上げていて、非常に多岐にわたりますよね。

藤: そうなんですよ。現在、220タイトルほど発行しています。昔と変わったのは、複数のタイトルを持つ国があるということですね。それは旅行者のスタイルが明らかに変化したから。「リゾートに行く」から「タイに行く」へ、そこから「バンコクじゃなくて今回はチェンマイ」という風に。だから、ガイドブックもそれに対応していかないといけない。

出: たとえて言えば、フランスガイドより、パリのガイドという。

藤: そうです、パリから行ける日帰り旅行、とかね。日本人ってね、やっぱりフランス、特にパリへの憧れは尋常じゃないんですよ。「パリの手帖 とっておきのお菓子屋さん&パン屋さん」というパリのパン屋とお菓子屋を紹介する本を出したんですよ。どういう内容かというと、パリを散歩する、と。歩いているとこんなにオシャレなパン屋があるぞと、焼いているのはイケメンのパン職人でそこのバゲットはこんなにおいしいそう、と。それでバゲットの断面図の写真なんか載せちゃうわけです。最初ね、こんなの誰が買うんだよと思ったんですけど、これがまた売れるんですよ(笑)

出: 売れるわけが、なんとなくわかります。お話を聞いているだけでおいしそうな感じがします。

藤: だから、多品種少量生産になるわけですよね。今ね、「パリ、ロンドン、ローマ」なんて出しても、3都市周遊する人の方がむしろ少ないでしょう?パリならパリ通になるくらいパリを攻めるんですよ。たとえば、今回はパリから行ける日帰り旅行を満喫しよう、ですとか。

出: そういうお話を聞いていると、売上も順調に伸びているように思いますが実際はいかがですか?

藤: それがそうでもないんですよ。地球の歩き方は1979年創刊で、80年代に急成長しました。80年代のはじめ頃は海外旅行者数が年間400万人くらい。そこから出発して2000年にピークの1,780万人台にまで増えるわけです。マーケットが4倍になれば、良いものさえ出せば売れますよね。

出: 藤岡さんが社長に就任されてから、厳しい時代に入ったんですね。要するにマーケットが頭打ちになってしまったと。

藤: しかも2001年に9.11のテロがありました。実はその影響がとても大きくてガッと数字が下がったんです。で、持ち直してきたところで今度は2003年の春先にSARS。これでまた数字が落ちました。そこからはなかなか上がってこないですね。2009年は1,545万人。つまりピーク時より200万人落ちてるんですよ。

出: 1割以上の落ち込みですね。

藤: 海外市場が頭打ちということで、2004年くらいから「京都の歩き方」、「北海道の歩き方」など国内マーケットにもリーチし始めたんです。とはいえ、去年も売上は厳しかったですね。

出: 生命保険も同じで、ピークは1992、93年なんです。生命保険もいろんな種類があってどんどんニーズに合わせて細分化されてきましたが、やっぱりベースになっているのは保障ニーズの大きい20代、30代の人たちの人口です。そこの人口が減ってくると生命保険も落ち込んできますから、人口でみれば生命保険も旅行ガイドも近いビジネスなのかもしれないですね。

藤: 戦後半世紀の日本の成長は人口の増加にのっかって急カーブを描いてきたわけですね。人口がどんどん増えて、GDPも増えて。戦前の日本の人口は8,000万人。今は1.5倍の1億3,000万人ですよ。マーケットが1.5倍なわけです。だから、不況不況って言うけれどそんなに悲観することないっていうのが僕の持論なんです。確かに、グーッと成長曲線は描かないかもしれないけど、人口増加で言えば、これからは減っていく一方なんだから成長も最大横ばいでいいんじゃないかと。そう思っています。

-「旅行者は2極化している(藤岡)」-

出: これだけ旅のスタイルが変化してくれば、社員のみなさん一人ひとりが、ある国を深く知るというか専門家になる必要があるのでは?

藤: 専門家になることも重要なのですが、消費者が何を求めているかをキャッチするアンテナを持たなきゃいけないと思うんですよね。というのも、今、旅行者は2極化しているなと実感していまして。

出: 2極化というと?

藤: ひとつは、非常にアクティブな旅行者。いろんな国に行ってどんどん情報収集をする人たち。そういう人たちはインターネットで情報をくまなく調べるけれども、本もちゃんと買ってくれる人たちなんです。対極にあるのは、ネットでちょこちょこっと調べて、そんなに情報収集しないで行っちゃう人。最近は、海外に行くのにガイドブックを持たない人が増えてきているんですよね。なんとかなるだろう、と。

出: それで、なんとかなっちゃう、と。

藤: そう。でもね、旅行は事前にどれだけの知識を得ていったかで感動の度合いがまったく違うと思うんです。やっぱり、知ってて目にするのと知らないで見るのとでは、まったく別の意味になりますから。

出: おっしゃるとおりです。感情移入の度合いがまったく違う。

藤: 僕ね、高校生のときにロンドンに旅行に連れていかれてロンドン塔を見たことがあるんですよ。そのときは、英国の歴史もロンドン塔がどんな役割を呈していたかも知らなかったから、まったく覚えてなかった。でも、30年以上たって知見を蓄えてもう一度見に行ったら、もう、まったく違う塔なんですよ。ああ、トマス・モアがここに監禁されていたのか、とか、

出: ここでジェーン・グレイが首を切られたのか、とか。確かにまったく違いますよね。そういう背景を知らなかったら、ただ暗い部屋がいっぱいあるだけっていう。これが最初はウィリアム1世が命じてつくった要塞で、宮殿、監獄、処刑場、そして世界遺産といういろいろな顔がある塔だということを知っていると、楽しくなりますよね。新疆(しんきょう)ウイグルの火焔山(かえんざん)だって、何も知らなければただの木の生えていないハゲ山ですけれど、わかっていれば「ああ、これがあの西遊記の火焔山か」という感動がわきますよね。

藤: 北京の紫禁城の景山公園もそうですよね。なんにも知らないで上ったら、紫禁城がきれいに見えるなーで終わりになっちゃいますが、そこで明朝最後の皇帝:崇禎帝 (すうていてい)が首を吊ったと思うと、中国の歴史がワーッと頭に広がって感慨深い。

出: その時、満州軍はどの辺りにいたのかと想像したり、ここから見えたのか?など、想像が膨らみます。

藤: 地球の歩き方がよくほめてもらえることのひとつに、本の終わりのほうにその国の歴史や文化について書いてあるんですよ。他のガイドブックではね、ベトナムのことを取り上げているのにベトナム戦争についてまったく触れてなかったりしてね。明らかに情報が足りない。

出: 生命保険も同じで、僕は情報収集をとにかくたくさんして、比較して加入するべきだと思っているんです。何も知らないで営業セールスの話を聞いて、いざ検討しようと思っても、検討材料が何もないでしょう?良いか悪いかの判断もつかない。ただ説明された内容を鵜呑みにするだけになってしまいます。でも、前もっていろいろ調べておけば、比較ができるし、自分のニーズと照らし合わせて考えることもできます。ですから、ライフネット生命はすべての情報をウェブサイトで公開しているんですよ。

-「ネットで金融の世界を変えていきたい(出口)」-

藤: ライフネット生命はインターネットで生命保険に加入できるといういわゆるネット生保ですが、ネットって今や全世界どこにいてもつながるし使えるじゃないですか。日本人で海外に住んでいる人でも加入は大丈夫なんですか?

出: 日本に住んでいるということが条件になります。

藤: やっぱりそういう制約があるのですね。

出: 生命保険は金融庁の免許が必要な事業で、免許は属地主義が原則です。要するに、日本に住んでいる人に生命保険を売っていいという免許なんですよ。今、地方参政権についていろいろ言われていますが、日本人であっても外国人であっても、日本に住んでいて、約款の内容を理解できるだけの日本語力があればお申し込みいただけます。

藤: でもアメリカ人は日本に住んでいてもアメリカの保険にも日本の保険にも入れるのにね、おかしな話ですよね。

出: 金融は属地主義でやってきましたが、2008年の金融危機でも明らかなように、その与える影響はグローバルなので、特に世界中に子会社があるような企業は、世界の監督当局が○○グループはみんなで相談してケアしていこう、というような流れになってきています。グローバリゼーションやインターネットの発展は、金融機関の監督の在り方や概念を変えていく気がします。

藤: その通りですね。

出: ライフネット生命もネットで生命保険を売っていくという、小さいことから始めましが、実はネットで金融の世界を変えていきたいと思っています。

藤: 本当に出口さんのチャレンジはいろいろな可能性を秘めていますね。若い人の所得に占める保険料の割合を少しでも抑えて、その分、他のことに使ってほしいっていうのは、当たり前すぎるほど明確で、聞けばみんなそうだと思うんだけれど、今まで誰もやってこなかったわけでしょう。それを戦後初めて実現させた。

出: そうです。保険料を半分にして、若い人たちに安心して赤ちゃんを産んでほしいと思って起業しましたが、保険料を節約して、浮いたお金でどんどん海外旅行に行ってグローバルな経験をつんで、日本を元気にしてもらうのもありですよね。ライフネット生命で保険を見直せば年間で約8万円の節約になるんです。御社の社員のみなさんであれば、会社から支給される10万円と合わせて、海外旅行費用が18万円になるわけですから。

藤: 海外に行かないわけにはいきませんね。





藤岡 比左志(ふじおか ひさし)さんプロフィール

ダイヤモンド・ビッグ社 代表取締役社長

1957年東京都生まれ。立教大学法学部卒業後、ダイヤモンド社入社。雑誌編集、書籍編集などを担当。マネー誌「ダイヤモンド・ザイ」創刊編集長、経営企画本部長などを経て取締役。2003年より、「地球の歩き方」発行元のダイヤモンド・ビッグ社専務。

2008年、同社代表取締役社長に就任。

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