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デグチがWatch 生命保険業界のオピニオンリーダー・出口治明が、生保について鋭くやさしく語ります!

出口の真っ正直インタビュー 小飼 弾(こがい だん)編

投稿者:
出口治明

真っ正直インタビューの第13回目は、2008年6月の真っ正直インタビュー第2回にもご登場いただいた小飼弾さんです。ちょうどそれから1年が経ち、今回も小飼さん宅を訪問させていただき、著書のこと、生保のこと、日本経済のこと、多くのことを独特の視点と考え方で斬るという対談になりました。
果たして、日本の子どもたちの未来は明るいのか――!?

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-「産業革命以前と以降で、一番変わったのは子どもの扱い方(小飼)」-

出口(以下、出) : またこうしてお会いできてうれしいです。先日、本屋さんに行ったら新しい本が出ていたので買いました。すごいスピードで書かれていますね。

小飼(以下、小) : ブログみたいなスピードで書ければいいんですけどね、本は難しいですね。

出 : 「仕組み進化論」はおもしろいですね。以前、東大の仕事をしていたときに、Googleとやり取りをしたことがあるんですが、面白い会社でした。ライフネットを作る際も20%理論を実践したいなと思ったりもしましたが、これを読むと、それは甘いなと。

小 : でも大げさに考えてほしくないんですよね。実際、動物を見てると、生きるためにセコセコ動くってそんなもんでしょ。食物連鎖の上にいる動物ほどよく寝るじゃないですか。猫なんて一日中寝てますよね。草食動物ともなると、1日中食べていないと死んでしまう。

出 : 食物連鎖の下の方になると、エネルギーの99%は食べることですよね。

小 : どう考えても人間は食物連鎖の頂点にいるはずなのに、なぜ、仕事をする時間が減らないのか。少なくともあくせく動くのが1日に8時間っていうのはどう考えても多すぎますよね。これは僕の仮説なんですけれども、産業革命以前の人類の考え方と以降の考え方はえらく違うはずです。一番変わったのは、子どもの扱い方。子どもを大事にする文化というのは、実はごく最近のこと。

出 : やはり生保というのは、核家族になって、子どもがかわいいし、大事にしなければというところがベースになっていますね。たとえば、北欧にはベーシックインカムの考え方がありますが、特にフィンランドが代表ですけれども、学費の個人負担はゼロですよね。しかも男性も女性も働いていると、生命保険の中でも死亡保険はほとんど売れなくなるんですね。それってすごく合理的だなぁ、と。この保険会社を作って、「保険ってなんだろう」って考えてきて、いろいろな考え方があるのですけども、今の日本で考えた場合、教育費とその子どもの将来の豊かさには、かなり相関関係があるんですよ。「死亡保険って何だろうか」と考えると、結局、子どもの教育費の担保。それから、パートナーを亡くした喪失感を癒す間の生活の保障と思ったりしています。

-「“生命保険”は最高のコピーライティング(小飼)」-

小 : 死について面前で語るのがものすごくタブーに近かったはずの日本で、世界一生保が売れたというのはマーケティング戦略があるんでしょうね。そもそも生命保険(Life Insurance)と名付けたのは誰なんでしょうね。本当は死亡保険(Death Insurance)ですよね、実際。

出 : ベースになっている死亡表も、最近は生命表とか言うんです。言葉の語感で、商品のイメージが大きく変わると。

小 : 最高のコピーライターですね。最初に生命保険と言った人は。

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出 : 日本に初めて生命保険を紹介した「海国図誌」は、「命担保」と言っているんですよ。

小 : もしそのままの名前できたら、こんなに普及することはなかったでしょうね。生保のような統計が命の商売ですら、人は感情の動物であるという証拠になっているいい例ですね。

出 : 人間は感情の部分が最終的には圧倒的に大きい気がしますね。これだけ感情が強いというのは、どういうふうに考えたらいいんでしょう。

小 : これは私の仮説ですが、スピードの問題ですよ。正しい結論というのは早い時間に達しないと意味が無いわけですね。理性と感情、どっちが早く動くかって言ったら、これは圧倒的に感情ですよね。感情というのは、それを見たときに即座に湧きおこるものですけれども、その感情を見て、どういうふうにしていこう、というのが理性なので、理性は仕事が遅いんですよ。

出 : スピードの問題ですか。なるほど。

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小 : ですから、論理的な人というのは実は論理的ではないんですよ。論理的な帰結を出すのが早いだけで。だから実は、論理的な説明をする人というのは往々にして、感情はもっと強いんですよ。感情に負けないくらいのスピードで論理をまわさなければいけないので、仕方なく論理的になったのだと。

出 : おもしろいですね。そういう意味では、弾さんはいつも「決断」に「決弾」という字を使ってらっしゃいますけど、「弾丸」もスピードが速いですよね。

小 : 何かとケチのつけどころが多い自分の親ですけれども、名前だけは文句のつけようがないですね。

-「国債は子どもたちのお金を前借りしているだけ(出口)」-

小 : 出口さんの本を読んで一番よかったのは、大人になってからも有り金を全部つぎ込んで遊んでいたというのがいいですね。あれはスバラシイ!

出 : 自分で身銭を切らなければ、世の中のことがわからない、という考え方が好きです。たまたまロンドンに行ったときに、なんて楽しい世界だろうと思って、東京に半年に1回帰ってくるごとに貯金をおろして持っていってましたね。会社のみんなからは、普通海外に行けばお金が貯まるのに、何をしてるんですかと言われました。でも、サラリーマンだからせいぜいロンドンにいられるのは2,3年だと思うと、オペラも見たいし、演劇も見たいし、せっかくならワインも飲みたいし。やっぱり充実感はありますよね。そんなに賢くなったとは思わないんですけど。

小 : いや、それが賢さの源泉じゃないですか。そこで偉かったのは、身銭は切っているけど借金はしてないことですよね。

出 : 僕はそういう面では、学者の中には国債をいくら出しても日本国民が持っているんだからいいという人がいますけど、その考えは理解できなくて、それは子どもたちのお金を前借りしているだけなんですよね。使うんだったら、自分のお金を使うというのが普通の神経だと思うので、子どもたちの将来のお金に手をつけるというのは、おかしい気がします。

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小 : まだ生まれてない子どものお金を前借りすることになっているんですよね。そういった意味では、国内でほぼ完結しているから経済的にはそれでいいんでしょうけれども、痛みが無い分、もっとまずいですよね。人からの借金であれば返す義務が大きいんですが、身内の借金だったら、踏み倒すときには良心の呵責なくやってしまうんでしょうし。もっと恐ろしいのは、結局、国債の償還原資は税金なわけですよね。そして、国債を買える人たちっていうのは、税金を払ってでも国債を買って得する人なわけですよね。じゃあ、税金はどこから集めてくるんだ、って言えば、貧乏人からも平等にとるんですよね。実は国債を発行するだけで、逆累進効果があるんですよね。国債でまかなう経済は、貧乏人から金持ちへの資金移動になるんですよ。

出 : 政治とか経済というのは、結局は税金の分配ですよね。国債をどんどん出すということは、税金の3割4割が返済に消えますよね。子どもたちが選挙権を持って税金を分けようとしたときに、3割はお父さんが既に使ってしまっていると。子どもはそんなことは委任していないんだから、民主主義の正統性がもちませんよと。

小 : おそろしいことに、民主主義のシステムというのは少子高齢化社会には合わないんじゃないかと。人口が右肩上がりの頃には、若い人は知恵もないかわりに数という力を持っていたわけですよね。

出 : 知恵もお金も人口も、おじいさんが多いとなると、若い人の声が反映されなくなってしまう。

-「日本って言うのは、火の鳥型のライフサイクルを持つメタ生物(小飼)」-

出 : 今回の金融・経済危機で、アメリカは家計も企業も銀行もバランスシートが痛みましたよね?で、ヨーロッパはアイスランド化というか、金融資産がめちゃくちゃ大きくて。日本は、始まったときには一見家計も企業も銀行も、この2つよりはましだと思っていたのに、起こってみたら、GDPの落ち込みは日本が一番大きいですよね。

小 : それに関しては誰も納得いく説明をしてくれてないなと。 これにはもっと重要な示唆があると思うんです。それは何かと言ったら、日本が将来から借りているというのが一番大きいんです。未来の食いつぶし率が一番大きいんですよ。

出 : 僕は2つ理由を考えていて、1つは小飼さんが言われた、借金が多すぎて重すぎるということ、それからもう1つは、同質性ですよね。結局、逆張りをする人がいないから、100年に1度とみんな思って、全員が急ブレーキを踏んでしまったと。急ブレーキを踏んだら、車はガタガタしますよね。それが一番急激な落ち込みになったんじゃないかな、と。

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小 : 僕は日本って言うのは、火の鳥型のライフサイクルを持つメタ生物だと思っているんです。戦後の在り方というのがそうだったでしょう。結構日本で物事を変えるときっていうのは、実に派手にぶっ壊すんですよね。

出 : そうですよね。明治維新のときは廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)で。

小 : その割には死者が少なかったというのはおもしろいところですけれども。少なくとも社会の仕組みから言うと、社会総取換えみたいなことを平気でしますからね。ヨーロッパって、そこまでの断絶性っていうのは無いじゃないですか。

出 : そういう意味では、日本人って保守的なようで不思議なところがありますね。

小 : 何と言えばいいのか、じわじわとした変化は強烈に押さえつけようとするくせに、火事で丸焼けになった途端サバサバするという。そう考えると、日本にとって一番楽なのは政府が破産することなのかな、と。意外とみんなサバサバして現実を受け入れて、ああ、もう年金無くなりました、と。

出 : ではみんなで火の鳥でもう一回やりましょうと。

小 : 団塊ジュニアなんて年金とかあきらめてますからね。

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出 : この前、京都で20代の人と話す機会があったんですけれども、国民年金なんて1円も払うつもりはありません、という人がいましたね。「でも税金で補てんするから得ですよ」と言っても、「いや、そんなのは考えません」と。ある意味では本当にサバサバしていますよね。

小 : でもなんで得をするかと言えば、「まだ生まれていない、君の子どもから前借りするから」ということになっちゃうんですよね。それはしたくないんですよ。日本の一番いやな未来というのは、今の団塊ジュニアがその親世代と同じ結論にたどりつくこと。やっぱり自分たちの子どもにたかろう、と。それはもう勘弁してほしいです。うちの娘たちが今度は搾取されるということです。そんなことは長くは続けられないですよね。

出 : 子どもにたかることだけは絶対にやめたいですよね。子どもにたかるんだったら、その分保険でリスクヘッジをしてください、という風に思います。

-「ベーシックキャピタルというのは、逃げる自由にお金をつけたようなもの(出口)」-

小 : いやでも子どもにたからなくても済む方法って何だろう、と考えた結果が、実はどちらの本にも書いていますが、社会相続とベーシックインカムのセットなんです。

出 : 僕もそういう意味では、火の鳥じゃありませんけど、死んだら1回ご破算にして、1回社会に戻してリセットすべきだと。もう一つ考えているのは、ベーシックキャピタルというものですね。これは教育費をベーシックキャピタルの形で個人個人に帰属させて、そのキャピタルを持って学校に行くと。そうすると、みんなが行きたい学校はお金が増える。そうすると教育の競争が高まるんじゃないかと考えているんですよね。

小 : 僕もまだ実装が難しいのではないかと思って、ベーシックキャピタルはまだ言いだしてないんですけれども、実はベーシックキャピタルというのは究極的かつ理想的な社会による資産再配分ですよね。ベーシックインカムよりもベーシックキャピタルの方がより公平なんですよね。

出 : 民主主義というのは投票だけではなくて、逃げる自由があると思うんですよ。悪い政府から。お金による民主主義もあって、税金を払うけど絶対こんなことには使ってほしくない、というような自由がある気もするんですけど、ベーシックキャピタルというのは、逃げる自由にお金をつけたようなものだと思うんですよ。イヤな学校とかイヤな教育からは逃げ出します、と。ただ、逃げだすときに、今だったら学校は困らないでしょ?背中にお金を持って逃げだしたら、学校はすぐに倒れるわけですよね。だからそういうふうに、教育とか社会保険とか言うものを個人の意思にもっと密接に結びつけた方が、学校とか職業訓練所に税金をばらまくよりいい配分ができそうな気がするんです。

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小 : 僕もそう思います。実は、ベーシックキャピタルを動かすために、生保って使えないか、と思ったんですよ。ベーシックキャピタルって難しくって、死んだ時は生まれたときよりもプラスの利子を返さなければいけないというやつで、食いつぶしちゃった場合どうしよう、っていうことを、やっぱり真っ先に考えるわけですよね。キャピタル棄損という問題がつきまとってしまいます。でも逆にきちんと計算すれば、食いつぶし率というのも出せるわけですよね。それを出せれば、それをカバーするための保険というのも設計できるわけですよね。

出 : そういう風に考えると、保険と言うのは、単に生きるか死ぬかとか、病気になるかだけではなくて、この保険の論理を正にベーシックキャピタルと組み合わせて、社会の資金配分のベースにするということも考えられますよね。

小 : どんないきさつがあったのか知らないですけれども、生命保険みたいなものを感情の動物である人間が受け入れたっていうのは、僕はすごいことだと思うんです。どう考えても、感情に逆らいまくりですからね。だって払う本人はビタ一文受け取れないわけですから。実は、生命保険と言うのは、直感に逆らうことによって、直感にいいものを得たっていう好例として、もっと自慢していいと思います。

出 : もっとお話しをしていたいのですが、どうやら時間が来てしまったようですので、最後に一言お伺いしてもいいですか? ライフネット生命はこの5月に開業1周年を迎えましたが、ちょうど開業したてのころに、小飼さんと1回目の対談をさせていただいた経緯もあり、ぜひ、ライフネット生命開業1周年について一言コメントをいただければと思います。

小 : 縁起でもないことを承知で言いますと、実際に加入者が亡くなられたり、入院されたりして、保険金や給付金が支払われたという実績が早く見たいです。私はエンジニアなので、実際に仕組みが一回転したのをどうしても見届けたいと思うのですよ。

※対談後の2009年6月10日に、ライフネット生命保険2008年度下半期の保険金等の支払い状況を開示しました。




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小飼弾(こがいだん)さん プロフィール

アルファーブロガー/オープンソースプログラマー/投資家等

小飼弾氏ブログ

著書

『小飼弾の「仕組み」進化論』 『決弾』

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