ライフネット生命保険
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生命保険の比較情報の充実を

投稿者:
出口治明

今日は4月2日に、毎日新聞の「私の主張」に掲載された、私の生命保険の比較情報に対する想いをご紹介させていただきます。

車やデジカメが欲しいと思った時、私たちは最初に比較情報を求める。カーオブザイヤーや商品テスト等、巷には比較情報が溢れている。パソコンで比較サイトを検索すれば、性能や価格の比較は一目瞭然だ。私たちはこうした比較情報を基に、店に出かけて実際の商品に触れ、店員の説明を聞いて納得した上で欲しい商品を手に入れる。マンションを購入する時も同じだ。パンフレットを取り寄せ、間取りや値段を様々な角度から比較した上で、実際の物件を見に行く。10件や20件回った上で契約する人も少なくない。

ところが、生命保険の場合、こうした比較情報がほとんど見当たらない。「生命保険は住宅(マンション)に次いで高い買い物」と言われているのに、これはなぜだろうか。それは、わが国の生命保険の主たる販売方法が「一社専属制」の上に成り立っているからだ。つまり、こういうことだ。商品テストで、A生命の商品がセイホオブザイヤーに選ばれたと仮定しよう。ところがB生命のセールスや代理店はB生命の商品しか売ることが出来ないので顧客にA生命の商品を求められても対応できない。一社専属制は、本質的に比較情報を嫌うのだ。そこに、特約を付加するなど商品を複雑にして比較出来なくしようという考えが働く。特約を付加すれば、保険料も高くなるから一石二鳥だ。こうして複雑になった難解な商品は、保険金不払い問題の原因にもなった。

第二次世界大戦で壊滅したわが国の生命保険業界は、大蔵省(当時)の行政指導の下で懸命に復興に取り組んだ。どの保険商品の内容も値段もほぼ同一だった。こうした状況にあっては、比較情報も必要がなく販売力に優れた一社専属制は十分意味があった。1995年に半世紀ぶりに保険業法が抜本的に改正され「生命保険の戦後」は終わった。自由化が促進され、競争を通じた消費者への還元が期待された。現在では生命保険料も一部自由化され、例えば、30歳男性、期間10年の定期死亡保険を例に取ると、保険料では約2倍の格差が生じている。しかし、比較情報がないので、消費者はこうした情報に十分アクセス出来ない。そもそもほとんどの生命保険会社は、販売している「商品の内容(保険約款)」を契約前に開示しておらず「商品の値段(保険料表)」もウェブや電話では入手できず、対面でのみ知ることができる場合が多い。

生命保険業は公共性を重んじて免許制となっているのだから、消費者の便益を増す観点からは保険約款と保険料表の開示が強く求められるべきではないか。そうなれば、消費者団体等が比較情報を自由に作成出来るようになり、利用者の利便性がより高まるだろう。また、米国、英国やフランスなど他の生命保険大国では「乗合制」の販売方法が主流となっている。乗合代理店は、比較情報を必要とする。わが国でも販売チャネルの多様化を促進することが、比較情報の充実に資するはずである。生命保険のように公共性が高く、高額で形のない商品は、商品を比較し、納得して購入する慣習ができることによって、諸外国では当たり前となっている健全な競争状態が生まれる。比較情報の自由化が進まなければ、商品の自由化や保険料の自由化が進展しても、その果実がストレートに消費者に還元されるのは事実上、困難になると言わざるを得ない。生命保険も他の商品同様「比較して納得して購入する」社会に1日も早くなって欲しいと願っている。

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