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岩瀬に言わせて!株式会社マネックス・ユニバーシティ代表 内藤忍さん

投稿者:
岩瀬大輔

岩瀬大輔の対談企画「岩瀬に言わせて!」の第3回目のゲストは、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表の内藤 忍さん。マネックス証券開業時のことや、金融業の将来あるべき姿など、ここでしか聞けない楽しい話が満載!ぜひお楽しみください。(収録日:2008/9/4)

内藤 忍さん プロフィール
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
住友信託銀行、シュローダー投信投資顧問株式会社、マネックス証券を経て、マネックス・オルタナティ・インベストメンツ株式会社を設立し代表取締役就任。2005年11月より現職。日経マネー、Grazia等にコラムを連載。年間50回以上の講演セミナーを行なう。
※今回の収録は、マネックスラウンジ@銀座にて行われました。


岩瀬(以下、岩) よろしくお願いします。ちょうど開業から三ヶ月たって、ネットで生保を売るということに手ごたえを感じている反面、さまざまな課題も感じています。マネックスさんが開業されて丸9年たつと思うのですが、当時の状況は、現在の我々と似ているところもあると思っています。今から考えると信じられないのですが、当時はネットで株なんて買わないって言われていたそうですが?

-ネットで株は買わないと言われて・・・-

内藤(以下、内) 株もそうですが、一番言われたのは投資信託。投資信託は説明を受けて、誰かに勧められて、背中を押されて買うもので、ネット上で比較して買うなんてありえない。日本株取引の方は、それなりに安い手数料で取引したいとか、自分でやりたいという人もいたのですが、特に投信は難しい、そう言われていましたね。

岩 : 実際に投資信託のネット販売をやられてみて、どうでしたか?

内 : 最初は伸び悩みました。相場が悪かった影響も強かった。りそな銀行に公的資金が注入されるところが相場のボトムで、そこまではひたすらガクッと落ちて行って、そこから何となく、もがき始めて浮上していった感じです。

岩 : 工夫されたこととか、どこかで大きく変わったという感覚や、ティッピングポイント(変節点)ってありましたか?

内 : そうですね。突然、ブレイクしたわけではなく、メールマガジンで常に投資信託を解説したり、新しい商品をどんどん提供したり、自分たちで専用のファンドを作ったりとか、沢山の地ならしがあって、それにちょうど風が吹いてきた時に、作ってきた物にピタッと風があたって伸びたんだと思います。

岩 : その「風」は投資信託ブームみたいなものができていたのでしょうか

内 : 投信ブームであったり、相場全体が良くなってきたからじゃないでしょうか

-生まれたてのベンチャーは学園祭のような熱気-

岩 : なるほど。ところで、内藤さんはマネックスの創業時のメンバーのおひとりですが、入社当時の社員は何人でしたか?

内 : 私が入社した時はまだ、社員4人しかいませんでした。

岩 : 4人しかいなかったんですね。今はもう200人ですか。その時にどうなるか分からないベンチャーに飛び込むことに迷いはありませんでしたか?

内 : それは、めちゃくちゃありました(爆笑)

岩 : 悩まれましたか?

内 : 悩みはね…、ありましたよ(笑)実は…。僕は、その2年前も日本の信託銀行から外資系に転職していたので、その時に比べたら転職に慣れていたのですが、ただ、ビジネスとして実績がゼロ、しかも、社員4名というのは、それはかなり自分も不安だった。転職を決めてから親に話したのですが、「住友信託を辞めて外資系へ転職するなんて」と言っていた親も、「またそんなこと始めるの」って(笑)。

岩 : 世間の内藤さんのイメージは、投資界の貴公子というかスマートなイメージ、実際スマートでかっこいいのですが(笑)、ベンチャーの立ち上げメンバーとして、いろいろな業務をやられたと思うのですが。

内 : とにかく、最初は忙しくて、毎日いろいろやっているのがすごく楽しかった。学園祭の準備で徹夜しているような感じでした。

岩 : 例えばどんなことを?

内 : 郵便物の出荷・配送、お客さまへのメール対応だったり。特に開業当時、口座開設が殺到して皆で電話対応したのですが、電話がつながらなかったり、サイトが重くなったりするとメールや電話が大量に入ってくるわけです。その対応をずっとしていました…。1日6時間ぶっ通しで、一人のお客さんとお話したこともありました。休憩の時間になった時に、後でまた電話して下さいね、と言って一旦電話を切って、休憩後また戻ってきて3時間ぐらい電話して。九州のお客さんだったのですが、今でも覚えています。

あとは、仕事はもう無限にあって、やればやるだけあって。そうすると結局帰るのが毎日2時とか3時とかの時間でした。当時は、少しでも早く口座開設キットを出そうということになって、最後に帰る人が郵便当番で、帰りにタクシーに乗って、24時間受付窓口がある赤坂郵便局へ寄って、そこでタクシーを止めて、両手に開設キットを50セットほど持って窓口で出してから帰ってました。そして、家に着くのが朝の3時か4時位なのですが、7時に会社行かなきゃだめなんだけど、緊張して寝れないからコンビニで赤ワインを買ってきて、1日3分の1ずつ飲んで、とにかく味わうのではなく、ガッーと飲んでガクっと寝てました。でも朝ちゃんと起きるんです。緊張していたので。すぐ目が覚めて会社に行ってまた電話に出てという生活でした。

岩 : その頃は、今の自分の姿とか想像できましたか?

内 : 無かったですね。んーでも、あまり悲観的な雰囲気はなくて。今考えると不思議でして、よくやってたなと思います。

岩 : それは、申込が開業時から沢山あったからなんですかね

内 : そうですね。逆にそういう意味では、うれしい悲鳴というか。ご迷惑もおかけしたのですが・・・。でも、なかなか黒字にならなくて、忙しいけど、どんどん会社のお金が無くなっていく状況だったから、そこで何でポジティブにやっていたかよく分からない(笑)

岩 : でも皆、明るいノリで?

内 : やってましたね。大変な状況ではあったのですが、やっぱり良いことをやってるっていう、もしかすると、他人から見ると間違っているかもしれませんが、勝手に自分で、良いことやってるんだというのが一番のモチベーションというか原動力になってました。

-個人投資家の起爆剤になりたい!-

岩 : 「良いこと」というのは具体的にいうと何でしょうか?

内 : 日本の個人投資家に、「より低コスト」で、「より便利なサービスを提供する」という一つの起爆剤になりたいというか、やっているという自負というか。だからこれは絶対イイものであって、ただ理解されていないだけなんだという思い込みかもしれませんが。かなり傲慢なポジティブシンキング(笑)があって、それが一番大きかったんじゃないですかね。

岩 : あと、新しい会社は不安だという意見は、特に金融のベンチャーだとあって、我々もそのような質問をたまに頂くことがあるのですが、御社の場合はいかがでしたか?

内 : すごくありましたね。マネックスという名前自体覚えられてないというか、アネックスとか(爆笑)、そのまま読んで「モネックス証券」とか。本当にそういう郵便も来ましたから。でも「ぴあ」も最初の頃、カタカナで「ピア」って書かれた郵便が沢山来たそうで、それをみてぴあの社長はすごい喜んだそうです。こんなにまだ知らない人間が沢山いるってことは、その分マーケットはでかいってことだぜ、と。そう考えれば、まだ知らない人がいるということはその分可能性があると思っていました。

信用については、時間がかかるというか、ちゃんとやってるし、こんなにディスクローズしているのになんで分からないのと思ったこともありましたが、やっぱり嘘をつかないのが一番大切だと思いました。とにかく、何というか、「×を○」と言わない。それを言った瞬間すべて信頼が崩れるっていうのがあって、そこはすごく気をつけました。

あとは、やっぱりスピードというのがあって、一回開業前に、メールのトラブルが起きた時に、とにかく早く、どうしてその問題があったのかすぐ公開しようという話になりました。2時間半でリリースを作って、どうしてトラブルが起こったか、現在どんな状況で、どんな対応をしているかネット上で公開しました。だらだら隠すよりも、嘘つかないで間違ったらすいませんと早く謝る、その代わり二度とトラブルが起こらない仕組を作る方が、隠すよりもずっと良いことを学びました。

-顔が見える会社を心がける-

岩 : なるほど。繰り返しになりますが、我々の一番のチャレンジは今まで対面で説明して説得しないと売れないと言われていたものを非対面で、しかもネットで売るということなのですが、投資信託に限らず、特に、御社の場合は、様々な形で、例えば銀座ラウンジがありますし、オンラインイベントもやられてますし、ネットで金融を伝える、売っていく際に、何を心がけていますか?

内 : やっぱり顔が見えるってことじゃないですか?僕は、ネットで100%完全に完結するという事は、人間なので無理というか、それは効率が悪いというか、ある程度両方ミックスというか、最適な比率を探していくのが現実的なネットビジネスだと思っています。

岩 : 最初はやっぱりネット中心で徐々にリアルの施策を始めたのですか?

内 : 最初はネットだけですね。余裕もないし人もいないし、ノウハウも全然ないし。で、何で始めたかというと、信用取引を導入した時に、いきなり「ハイ、どうぞ」ではなく、ちゃんと使い方を伝えながらスタートしましょうということで、勉強会を始めました。

岩 : 勉強会には何人ぐらいこられたのですか?

内 : 1回あたり100人以上いらしたときもありました。その時は会議室を借りるお金もなかったので、隣の会社の知り合いの社長さんに頼んで、空いてる打合せスペースを借りて、毎回椅子のかたづけを自分達でやって。13時からセミナーがあるとすると、12時から社内で「すいません、協力お願いします」と言って(笑)、みんなで椅子を運んで、終わったらまた戻してということを、信用取引を始める前に10回位やって、多分、1000人ぐらいの方に来てもらって。それが原型になって、FXとか中国株とかのセミナーに広がって、今はオンラインセミナーという形にもなりました。

岩 : マネックスのお客さんに限らず、内藤さんの本を読んでる方は多いと思うのですが、読んでる人がちゃんと実行できていないんじゃないかと思うんですが、理屈と実践のギャップというか、一般の方がどこでつまずくとか、間違えるとか、分かりますか?

内 : 証券取引の一番の大きなハードルは口座開設。そもそも、口座を開設するのが難しい。開設するまでに2、3割の人が断念している。記入書類の不備とかもあって…。

岩 : 本を読んで興味持っていても、セミナーに来ても口座を持っていない人が沢山いらっしゃる。

内 : そもそも本を買って、読んでいる人が何人いるのか?よくセミナーに行っても、本買いましたといって見せてくれるのですが、真っ白で、開いた形跡すらなくて、しおりとか宣伝とかもそのまま挟み込まれている(笑)。買って満足の人もいるし、読んで満足の人もいます。口座を開設して入金して実際に商品を買い付けるというのは、すごいステップがあるんです。でも、本を買っても読まない人が多いから、本を作るのは意味がないのかといってもそうではなくて、打率3割でも、3割を何回もやっているうちに、そのうちだんだん4割5割になっていって、それは、やっぱり続けていくというか、何度も何度もやっていくうちに、お客さまは、アクションしてくれるのかなって思います。

岩 : 「アセットアロケーションが難しい」という以前に、そもそも重い腰が動かないのがほとんどということでしょうか?

内 : そうかもしれませんね。

岩 : 例えば、内藤さんの周りに30代40代の人が100人いるとしたら、内藤さんの感覚で言うと、株やってる人がどれ位とか、分散投資をしている人はどれ位といった感覚はお持ちでしょうか?

内 : ま、ざっくりした感じでいうと、株取引している人は、20人ぐらいでしょうかね。そして、分散投資になると2、3人でしょうかね。マーケットはまだ無限だと信じています。

-金融業は接客業からエージェント業へ-

岩 : 日本の金融業は従来は接客業だったと思います。つまり、旧大蔵省の護送船団行政の時は、どこで買っても、利率も料率も変わらないし、だとすると親近感があって身近な人、もしくは義理のある人から買うのは、ある意味、消費者としては合理的という説明がつきます。

しかし、規制緩和で商品がこれだけ多様になると、金融というのは本来営業マンよりも商品を厳しくみるべきであって、もしかすると、金融業は接客業から違う、新しい形にシフトしていくと思っているのですが、いかがでしょうか。

内 : 僕は、エージェント業になるんじゃないかと思っています。要するに、誰の意見が正しいのか。つまり、皆自分で調べる時間がなくて、ネットを見れば全部書いてあると言われてみても、情報を集めて合理的な判断なんてできなくて、結局、誰が良いと言っているといか、誰かが使っているとか、誰がこの前テレビで例に挙げていたとか、具体的な行為を言ってほしいというか。
僕も逆の立場でいうと、例えばパソコンの細かいスペックを知らないで、家電量販店に行って、この人は多分メーカーの人ではと思う人を探して商品の事を聞いて、このPCがいいよと言われると、じゃあこれ下さいって買ってしまう(笑)。信頼できそうだと思うと、思考のプロセスを全部その人にあずけちゃう。

多分、金融も、そっちに移って行くんじゃないかとも思っています。マネックス・ユニバーシティもマネックス証券とは独立した会社になっているのですが、あの会社に聞いてみようという思われる立場を崩しちゃうと、結局、「マネックスのしか売らないんでしょ」とか、「マネックスに都合の悪いこと言わないんでしょう」、となっちゃうと、エージェントとしての機能を発揮できない。
もちろん、マネックス証券で取引してもらうのは、同じグループなので有難いのですが、逆にマネックス証券に対して、エージェントという立場で、恥ずかしくない商品を作ってくれないと困るよとけん制ができるというか、こういうニーズがあるのでこういった商品つくりませんかといえるというか、この画面見づらいから直してよとか、フィードバックできる立場にいる。そんな立ち位置にこそ価値があると思う。

岩 : 証券会社の代理人ではなく、お客さまの代理人であることが重要ですね。

内 : 私たちは、マネックスとお客さまの両者の間に立っているわけで、お客さまに「マネックスの方、向いてるね」と思われた瞬間、マネックス証券は信用を失い、ユニバーシティも存在価値がなくなります…。

-ライフネット生命へのメッセージ-

岩 : 最後に、ライフネット生命へのアドバイスや、ライフネット生命のご加入を検討している人に対してのメッセージはございますか。特に、マネックスを立ち上げた経験や立場からみたアドバイスなど頂けると嬉しいのですが。

内 : そうですね。ライフネット生命さんのマニフェストとか読ませて頂いて、すごくピュアな感じがする。僕はそういうのが人を引き付け、色々な人達が応援したくなると考えています。とにかく、方向がブレないというのが重要で。やっぱりいずれ会社が大きくなっていくと、微妙にぶれるわけです。しょうがないけど。それをどこまで、岩瀬さんみたいな方が、常に違うんだよ、だめだよそれじゃ、って青臭くやっていくか。

それとビジネスとのバランスですよね。青臭くやってつぶれちゃったらダメなわけで。2つをどう両立させていくのか。それはちゃんと詰められるというか。やりがいはあると思います。

岩 : ウェブサイトをみて、なんかよさそうだけど、うーんと思っている方に対しては?

内 : (笑)正直難しい

岩 : フェアな意見で(笑)

内 : ライフネットのサイトは、多分、見たい人が来るんですよね。だから、自発的じゃない人にどうやってサイトに来てもらうのかというのが、マネックスも一緒なんですが、そこが広がらないと。さらに保険って証券に比べると、自発的になる可能性って低くて。保険がブームってないじゃないですか。「今はかけ捨ての保険がブーム!」とはなかなかならなそう(爆笑)。株のブームはあっても、保険がブームということは多分ないし。マーケットのアップダウンもなさそう。

こういう状況がずっと続く中で、自発的に動かない人に、何をしたら動くのかというのを考えないといけないと思います。

岩 : ブレイクスルーを信じて頑張ります!

内/岩 : ありがとうございました。

内藤 忍
株式会社マネックス・ユニバーシティ 代表取締役社長
住友信託銀行、シュローダー投信投資顧問株式会社、マネックス証券を経て、マネックス・オルタナティ・インベストメンツ株式会社を設立し代表取締役就任。2005年11月より現職。日経マネー、Grazia等にコラムを連載。年間50回以上の講演セミナーを行なう。※今回の収録は、マネックスラウンジ@銀座にて行われました。

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