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デグチがWatch 生命保険業界のオピニオンリーダー・出口治明が、生保について鋭くやさしく語ります!

出口の真っ正直インタビュー 末吉 竹二郎 編

投稿者:
出口治明

真っ正直インタビューの第4回目は、国連環境計画(UNEP)金融イニシアティブ特別顧問で、環境問題や企業の社会的責任(CSR/SRI)についての専門家であり、また各種審議会や講演、TBS系テレビ番組「みのもんたの朝ズバッ!」のコメンテーターとしてもお馴染みの末吉 竹二郎さんと環境問題を切り口に熱い対談を行いました。(取材日:2008/7/31)

末吉竹二郎 出口治明

出口(以下、出):末吉さんとは、これまで、こんなに真面目にお話することはなかったのですが(笑)、環境やCSR等、今でこそメジャーな言葉ですが、どういうきっかけで環境の世界にお入りになったのですか?

末吉(以下、末):僕の第二の職場が日興アセットマネジメントという投資信託の会社で、そこが、エコファンドという商品を売り出したんです。これがものすごく売れて、そのニュースが海外、特にいま僕が手伝っている国連に知れて、2000年の11月に、UNEP金融イニシアティブの年次総会で話をしてほしいという要請がきて、スピーチを引き受けたんです。
フランクフルトのドイツ銀行本店で開かれた総会で話をしたら、僕の話が終わった後に、国連から自分たちの活動を手伝ってほしいという要請があり、運営委員会に入ったんです。それがきっかけです。

出 :そうですか。それは、奇縁ですね。

末 :まったくの偶然ですね。

出 :きっかけは偶然でも、今は、相当、環境問題に深く入られていますよね。

末吉竹二郎

末 : ええ、今はそれを中心に僕の世界が動いています。非常におもしろいですね。まじめに言えば、非常に重要なテーマですし、地球温暖化問題を考えるということは、世の中のあらゆることを考えるということなのですね。政治がどうあるべきか、産業政策として何を考えたらいいのか、あるいは消費者がものを買う時に何を大切にすべきか、あるいは個人の生き方、教育をどう変えるか。
ですから、温暖化は一つのテーマですが、社会の森羅万象をカバーするので、非常におもしろいです。国際的にみると、海外がどう思っているのか、あるいは日本にどうインパクトがあるのか。国際外交のようなことも考える必要がありますし、海外との協調をどうするのかということもあります。

-ペーパレス化にチャレンジ-

出 : 環境を切り口にして、世界にいろんなことを発信できる絶好のチャンスでもあるわけですね。でも、日本はその機会を上手く使っていないからちょっと残念ですね。あと、先ほど温暖化というお話がありましたが、保険会社は紙を膨大に使っています。昔から保険業は紙と人からできている産業といわれていて、だからこそ、最近の保険会社は紙を使う分、木を植えましょうという運動をしています。
でも、そもそも、紙を使うことを止めた方がすごく面白いんじゃないかと。ウェブで全部処理したら、便利だし紙も使わないでいいと。ペーパレス化が、これからの時代にあっているのではないかと思って、この会社を作りました。申込みはもちろん紙を使わないのですが、社内の会議も極力、紙を使わないでパソコン画面を壁に映してやってみようということにチャレンジしています。

末 : それはたいへん結構なことですね。僕が言っている温暖化時代の新しい企業の在り方じゃないですか!

出 : 金融庁でも、最近は紙ではなく、電子媒体での記録がOKとされているので、会社のドキュメントも全てウェブで持つようにしよう、と努めています。

末 : 紙で育った世代なので、不安じゃないですか?

出 : 時々、消えちゃったらどうしようかと、不安にはなるんですが…(笑)

末 : 今、僕は秘書を入れず、全部自分でスケジュールの管理をしています。仕事柄、世界中の情報をやりとりしているので、様々なアポイントもこれ(PCを指しながら)が一番ですし。でも、最後はプリントして、壁に貼り付けてやってますね。でないと何となく気になってしまいます…。

出 : 僕もそうで、プリントアウトしようかと思ったりするのですが、若い世代はそういうこともないですよね。インターネットで保険会社を作る時にも、僕と同年代の仲間の間では、ネットで保険が売れるはずがない、という意見が圧倒的だったのですが、20代の人にインタビューをすると、むしろ、ネットで買えないものが世の中にあるんですか?という発想なんですよね。

末 : むしろ、生保のセールスレディの方と無意味な社交辞令を交わすより、ネット生保のほうがもっとストレートでいい、という人も多いんじゃないですか。

出 : そういう人が、多分これから増えてくるから、将来は大丈夫じゃないかと思っています。

末 : HSBCのようにネット取引に変更すれば、1口座あたり5ポンドキャッシュバックしますという銀行もありますね。ペーパレス化を進めるために、お金のインセンティブをつけるとか。預金通帳も作らない。そいう時代ですよ。

出口治明

出 : それはいいですよね、通帳を失くさなくてもすみますし…。僕たちも最初のアイデアでは、保険証券を紙で発行するのはやめようと思ったのですが、ちょうど不払いが注目されていた時期だったので、いろいろ議論していく中で、例えば、紙の保険証券がないと残された遺族にとっては心配だ、いざという時にバーチャルだけだと心配だ、ということで、現在、保険証券は全部紙で出すことにしています。

末 : 今、会議をするとペーパーを出しているところが多いですよね。取締役会などで率先して、ああいう紙重視は、変えるべきですよね。

出 : 国連の会議では紙はもう出ないのですか?

末 : いや、紙も使っていますが、ウェブが主体です。

出 : 会議等での紙の使用量は、日本の方がまだ多いですか?

末 : まだまだ多いのではないでしょうか。例えば、ウェブ画面を見なれていない世代の人が、いきなりペーパレスというのは難しいので、まだ併存もしょうがないんじゃないでしょうか。

-IT化が進むにつれ、ヒューマンタッチなサービスが求められる-

出 : しばらくは過渡期で続くのでしょうね、少しずつ紙がなくなっていくということで。ところで、末吉さんは銀行と証券の経験がおありで、金融のプロだと思うのですけれど、銀行、証券、保険とみたときに、ネット化の流れはどういう風にご覧になっていますか?特に、インターネットバンキングや、インターネットでの証券の売買、インターネット生損保など。

末 : 多分、基本的なルーティンワークは、電子媒体とか、ネットに移管されていていいと思います。ヒューマンタッチなサービスを必要としないものは、どんどんネットに移っていいと思うし、その方が、サービスがグローバルに開かれると思います。
特に日本の銀行は実現できていませんが、例えば、アフリカのザンビアに行って、そこで日本のバンクカードでは取引はできませんが、シティバンクならできるんですよね。そういったところもインターネットバンキングへの傾注の差が彼我で出ているんだと思います。
だから、そういう意味では、メインストリームはペーパレス化になるのでしょう。その一方で、どういう商売であっても、人間でしかできないサービスがまだたくさんあると思いますし、今まで以上にヒューマンタッチなサービスが望まれる、というのがあるのではないかと思いますね。私は並存化といいますか、それがこれからのビジネスの主流になると思います。

出 : ヒューマンタッチが残るのは、金融ではどの部分でしょうか。

末 : それは、端的に言えば、困った時に相談に行けるということじゃないですか。困った状況はいろいろあって、新しいビジネスを始めるためにどうしたらいいかというようなポジティブな相談や、個人で緊急にお金が必要になった、しかもそれが家族の病気だとかというネガティブな相談など。人の命と引き換えになるようなお金のニーズが出た場合、この社会でだれが支援をしてくれるのか。そういった時に、インターネットだけで、サービスができるのか、ということもありますね。もっともネットの向こうに人間がいて、ネットは媒体ということであれば別ですが。

出 : そうすると、定型的でルーティンな取引はどんどん電子媒体化が進んで、人が本当に困った時や相談したい時などレギュラーでないものは、ヒューマンタッチがより大事になる、ということでしょうか?

末 : そうですね、個別の金融機関から見れば、そういうところから、ビジネスを拡大するチャンスが増えるのではないでしょうか。

出 : ルーティンワークは思いきって機械化し、経営資源は思いきって全部ヒューマンタッチが必要になるものに投入するというイメージですね。

末 : そうですね。ですから、物理的に支店に行かないとビジネスや銀行取引ができない、というのはいろいろな理由でムダが多いですし、銀行も従業員を雇うというのは大変ですよね。人件費はいくら流動化しても、固定費部分が非常に多いですし、人事管理も大変ですよね。まぁ、機械のメンテナンスの方がもっと易しい面もたくさんあるんですよね。
そのことが進んでいくと、金融機関間の競争原理はどこかというと、システムの中身の違いになるかと思いますが、それ以上にシステム化によって浮いたリソースをどこに振り向けるかで、ビジネスや製品の差が出るような気がします。

-クレームこそがビジネスの原泉-

末吉竹二郎 出口治明

出 : おっしゃる通りで、僕たちもインターネットで生保を売るわけですから、通常のセールス担当はいないのですが、例えばライフネット生命であればコンタクトセンターにリソースを振り向け、夜の10時まで電話がつながるようにお店を開けています。
普通の人は夕方5時、6時まで働くわけで、日中職場から電話をするわけにもいきませんから、仕事後のお問合せにも対応できるように、できるだけメリハリのきいた運用をしようとしています。確かに、機械化、ネット化で浮いたリソースをどのように活用するかということがこれからの競争力の鍵かもしれませんね。

末 : そのような気がしますね。これはある世界的な資産運用会社の話なのですが、例えばその会社に電話をかけると、全米に4つあるセンターのいずれかにつながるんですね。オペレータが電話にでた瞬間、画面にその人の名前からすべての取引履歴が出ます。そういったサービスをしている会社に、最終的なビジネスの源泉はどこかと聞くと、「お客さまからのクレーム」だって言うんですね。クレームの中にこそ、明日のビジネスのヒントがあると。
つまり、クレームを頂いた点を改修することが、明日のビジネスを生むんだと。そういった金融機関の話を聞きますと、多数の仕事をコンピュータシステムによって、間違いなく、手際よく処理するというのは非常に重要な経営の要素でありますが、じゃ、そのコンピュータシステムでクレーム自体を管理できるか、というと多分難しいですよね。

出 : クレームがビジネスの源泉というのはよくわかります。僕たちも、苦情は市場の声であり、ビジネス改善の端緒だと思っています。

末 : それから、僕はアメリカに長くいましたので、アメリカの企業の盛衰を見てみますと、組織論的にはよいとしても、もめごとが絶えず起きるというあるサイクルがあるんですよ。分社化が良いといっていると、分社化の弊害がでてくるわけで。
そうすると、トータルだ、マクロだ、総合力だ、ということになり総合化に戻るんですね。でも、総合化しても、ゲリラ的にある分野に強い企業が出てくると、弱い部分に刺さって負けてしまうんですよね。そうするとやっぱり、総合化じゃいけないということになるんです。つまり、歴史は繰返すのですよね。

出 : 誰かが言っていましたが、世の中のすべては振り子で、要するに右に触れたら、必ず次は左に触れるんだと。

末 : そうですね。そういうことを考えると、今後、電子媒体を使ったビジネスが大きくなるでしょうが、それが進めば進むほど、そのプロセスで、もっと弱い部分を補強するために、ヒューマンタッチなものを持ちたい、というニーズが出てくると思います。

出 : われわれもネット会社を作るとき、ネット会社はどうしても合理的で、無機的な感じがするものですから、人間の体温を伝えたいということで、松永真先生に人間の顔をシンボルマークとして作っていただいたのですが、確かにそうですよね。

-生命保険が果たす本当の機能とは?-

末 : それから、今の世の中をみていますと、一言でいうと、ハードからソフトに、山が動き始めてますね。そうしますと、ソフトは人間が人間に対してやることですから、ヒューマンな部分はやはり、捨てきれないですよね。

出 : ええ。逆にハードはどんどんレベルが上がっていくと思いますが、大切なことはハードを使いこなして、どういうサービスを提供するかなんでしょうね。

末 : これはどんな業界にも言えるのかもしれませんが、生命保険という商品、機能、ファンクションを売っていくとすると、最後はソフトやサービスが決めるんじゃないのですか。もちろん、買い易さやコスト・パフォーマンスとかで、どこかでバランスのとれるビジネス・モデルになるのでしょうけれども、もう少し上のサービスを受けたい、商品を買いたいという時、このビジネス・モデルが役に立つのかどうか、ライフネットの皆さんが直面される課題でもあると思います。

出 : ある意味、保険というのは非常に大衆的な商品でもあるので、最低限の備えみたいなものは、ある程度、インターネットで提供できるのではないかと思いますが、最終的には個々のニーズに応じた商品やサービスは、また違う姿になるのかもしれませんね。
だから、ライフネット生命も単に保険商品を売るだけではなく、今の世の中に、私たちは助け合いの仕組みといっているのですが、保険が果たしている機能をインターネットを使ってゼロからもう一度組み変えることができるかどうか、要するに、新しい共助の仕組み作りにチャレンジしたいと考えています。商品ではなく、世の中に必要な機能を売るのが企業なのだと。

末 : そういうことを絶えず、反芻されている限りは、企業としては安泰だと思います(笑)。

出 : いやいや、まだ、始まったばかりで、安泰以前の状況なのですが(笑)。

末 : だから、いい保険商品を売るというのは、言いかえれば、やんわり周りを包むような「将来への安心感を売る」、とか「生活の基盤を私たちが支えている」のです、といったメッセージがもっと伝わると商品の魅力も倍増すると思います。そんな気がします。

末吉竹二郎 出口治明

出 : 確かに生命保険がどういう機能を果たすために存在しているのか、ということを徹底的に考えることが必要ですね。

末 : その機能を考える時に忘れてはいけないことは、社会の中にあっての機能ですから、社会そのものは今、自分たちにどういう機能を求めているのであろうかと。同じ金融であっても、10年前の社会が求めていた金融に対する機能と、今日と、20年後では相当変わると思うのです。
そうすると、同じ保険機能であっても、今の社会が保険機能に何を求めているのかという社会からのニーズは非常に重要だと思いますね。まぁ、もっと言えば要求といったほうがいいかもしれないですね。保険機能はこういうことを果たすべきであり、こういうことを果たして欲しい、と。
その要求にこたえなければならない。これはビジネス全般について言えることですが、そういう要求が社会から非常に強まってきています。ビジネスがまず自分たちの商売のためにという発想では、ニーズとミスマッチが起きてしまいます。そして、大体において、そのミスマッチはどんどんギャップが拡大していきます。

出 : そういう意味では、保険金不払いはそのミスマッチが露呈した象徴のような気がしますね。

末 : 一言で言えば、社内論理で生まれた商品を売っている、社内論理で生まれたサービスを売っているということで、だから社会のニーズと合わなくなってきたのでしょうね。どこの企業でもビジネスでもそうですね。

出 : 必死にお客様のニーズを聴いて、そのニーズに商品・サービスをあわせていくということですよね。それと、商品だけではなく、社会において企業が果たすべき機能をきちっと考えるということなんでしょうね。

末 : お客さんのニーズと同時に、社会全体を見る、歴史からみて将来を見通すという縦横のフレームワークの中で、今の社会の顧客が何を求めているかを考えることが非常に重要だと思います。僕は温暖化の問題を考えると、将来が見えるんですよ。世界がどういう方向にいくとかいうのを自分なりにシナリオを描けるので、そのシナリオから見て、今何をしなければいけないのか、面白いように僕なりに分かるんですね。それが非常に面白いですよ。現実がフォローしてくれるんですね。

出 : それは、すごくわかるような気がします。一つの物事の見方を身につけると、良く切れるバターナイフのように、世界の事象が切れますよね。

末 : 切れますよね。その視点は本当はなんでもいいですよ。それで見ていくと、不思議といろんなことがわかりますよね。そういう意味では、ぜひ温暖化というバターナイフできちっと世相を切り開いて、僕なりの文脈をしっかりと世の中に伝えたいと思っています。自分でできる範囲でしかできませんが、でもそういうったことをやっていると本当に面白いですね。

出 : 今日は長時間ありがとうございました。

末吉 竹二郎

末吉 竹二郎 国際金融アナリスト/コメンテーター
東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。三菱銀行ニューヨーク支店長、同行取締役、東京三菱銀行信託会社ニューヨーク頭取、日興アセットマネジメントを経て、国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEP FI)特別顧問に就任。環境問題や企業の社会的責任(CSR/SRI)についての啓蒙活動に努めている。

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