真っ正直インタビューの第3回目は、昨年発表されたミシュランガイド東京版にて、見事に一つ星に選ばれた日本料理(鍋専門店)「山さき」のオーナー兼料理人の山崎美香さんに、お鍋と保険のおいしい関係? についてお話を伺いました。(取材日:2008/6/25)

出口(以下、出) : このたびは、ミシュラン1つ星おめでとうございます。
山崎(以下、山) : とんでもないです、そんな・・・。
出 : 山崎さんはお店を開かれて、何年になりますか?
山 : 今年の10月で丸6年で、7年目に入ります。
出 : はじめてこのお店に伺ったのは5~6年前のような気がするんですが、そもそも山崎さんはどうして、鍋料理に興味をもたれたのですか?
山 : 8年程、会社勤めをしていたのですが、もともと飲食をやってみたいと思っていました。でも、両親の反対もありまして、それまで飲食に飛び込めなかったのですが、その時に今しかできないかな、と思って、修行ができるお店をあちこち自分で行ってみたりしていろいろ考えてみたんですね。その中で出会ったある日本料理屋さんは家族で経営されている小さなお店で、私はそこのお料理を食べて、それに惚れこんで門を叩きました。そこは来るものは拒まずという感じで、そのまま修行に入りました。
出 : 僕もそのお店には何回か行ったことがあるんですが、何に一番惹かれたのですか?
山 : やはり「江戸料理」を看板に掲げているお店が他にないんですよね、それで堂々と江戸料理という看板を掲げている理由も知りたかったですし、あとは食べた時は季節柄、しめサバやお刺身なんかが出てきたのですが、その時の薬味の使い方や材料の組み合わせが、京料理では見たことがない組み合わせだったんですね。京料理の味に飽き飽きしていたこともあって、江戸料理に惹かれたんですね。
出 : 京料理は確かにテクニック重視という一面がありますね。
山 : そうですね、あとは、ダシの使い方も、煮だしとお塩を使ったりもしますが、そうでなくて材料の味を生かすという意味では、江戸料理のほうが材料の味がよくわかるような気がしたんですね。わかりやすくて、おいしくて、甘いものは甘く、しょっぱいものはしょっぱくて、そのメリハリがすごくいいと思いました。
出 : そのお店には何年いらっしゃったのですか?
山 : 8年です。
出 : そうですか。その後、この「山さき」を開かれたわけですね。どうして、「山さき」をよく覚えているかというと、すごくお店がシンプルで清潔感があったことと、お店が正直な感じがしたからだと思います。料理の品数、失礼ですが、少ないですよね。少ないけれども材料がとてもよくて。スイマセン、こんなこと申し上げられる程、たくさん来ていないのですが・・・(苦笑)、とにかく最初の印象が鮮明に残っています。
山 : ありがとうございます。自分でお店をやるにあたって、まず、第一に、価格設定はいろんな方が手に届くようにと1万円以内にしました。高いお金を払えば、美味しいものはいくらでも食べられるわけで。1万円程のお金で、一番おいしいものを食べていただければ、ということを一所懸命考え、材料にこだわって直接築地で仕入れています。以前から通っていたので、築地の皆さんが親切にしてくださって。そのおかげで、コストパフォーマンスがいいお店だねと、言われることが多いです。私は、それを本当にわかってくださる方がいればいい、それで十分だな、という感じですね。
出 : そのことは、初めてお店に来た時に感じました。材料はすごくいいし、値段もできるだけ抑えてあると。それも僕たちの会社によく似ているのですが、商品を絞っていることで値段は下げられますよね。本当にいいものだけに絞って・・・。山崎さんが一番最初に価格設定を考えられたことは、すごく立派なことですね。
山 : それは、鍋屋での修行のおかげですね。何万円もお金を出して頂いて、召し上がっていただくという経験をしたからかもしれません。途中から台所を任されるようになってから、お客さまが自分の作ったものを今の倍ぐらいの値段で召し上がっていくわけで、それに対して何か感じていたことがあって、やっぱり自分でお店をやる時は…ということはずっと考えていましたね。
出 : 僕も保険会社を作る時に思ったのは、この10年間で日本の平均世帯の所得は、15%ぐらい実は落ちているんですね。年収でいえば、660万ぐらいから550万ぐらいに落ちています。それで保険は、30~40代の働き盛りで子供がいる人、或いは支えなくてはいけない家族がいる人に必要なもので、極端に言えば、お金持ちにはいらないと思うんですね。そこで、僕にも一番最初に価格設定という発想があって、今の日本の保険料はとても高くて、毎月、3万円とか5万円とか払っている人がいる。550万円では払えないと。
少なくとも20代~40代前半くらいの家計が一番苦しい家族に、日本で一番安い保険を作ろうという発想がありました。でも、安かろう悪かろうは絶対いやなので。保険って見えない商品ですから、お客さまに見える形でサービスが提供できるのは、コンタクトセンターぐらいなんですよね。ライフネット生命は、最低水準の保険料でコンタクトセンターは一番夜遅くまで開いています。平日は朝の9時から夜の10時まで。だから、そこは手を抜かないで、サービスは徹底的によくしようと考えました。
もう一つは商品をものすごく単純にしたので、維持管理のための手数料が最少でいいと。だから、すっぴんの保険とか言っているのですが、本当に必要な機能はコールセンターとか、あるいは本人確認とか、告知とか、支払いとか、そういう保険の本質の所はすごく大切にしてお金をかけて、その代り、販売経費は大幅に削って、日本で一番安い保険料と日本で一番遅くまで開いているコンタクトセンターを両立しようと。だから、価格設定は一番最初に僕たちも考えました。
山 : それが大事ですよね。無理してお金払ってもらうより・・・。
出 : 例えば、30歳の男性で、3000万円の10年定期死亡保険であれば、ライフネット生命なら、3500円弱で入れるんです。配当金や解約返戻金の有無など契約内容が異なるので、単純に比較はできませんが、多分、大きい会社だったら、倍ぐらいすると思います。そうすると1年間で4万円とか5万円とか、違ってきますよね。この差額で、「山さき」にカップルで2回、来られますよね。そのほうが、正しいお金の使い方だという気がして。どちらかというと、保険は絶対必要だけど、必要最小限のコストで、その代わり自分の好きなことにお金を使ってほしいというコンセプトでライフネット生命を始めたので。どこか山崎さんのお店に似ているような気がして。
山 : このお店は誰のためにあるのかっていうのが、明確なほうがいいと思いますよね。もちろん、商売なので、儲からなくて赤字だったらやっていけないのですが。私は長くお店を続けたいと思ったので、そんなに沢山お客さまにお越しいただかなくても、良心的な形でやっていった方が、皆さんもう一回、もう一回って来てくださるような気がします。まずは、長くやることをまず考えたいですよね。
出 : いまおっしゃったように、長くやるためには、良心的とか正直とかいうことが大事ですよね。
山 : 意外とお客さまって、わかるんですよね。お店をやっている人間以上に、食べているもの、お店の空気もわかるんじゃないかと思うので、手は抜かないように、常にクオリティを保つことは本当に必要だと思っています。もし、それをやらなくなったら、長く続けることはできなくなると思うので。厳しいですよね。
出 : すごくわかるような気がしますね。少し脱線しますが、僕は食べることが大好きなんです。ただ、生意気な言い方かもしれませんが、一時期、熱病に浮かされたように、ミシュランの3つ星にばっかり通っていた時期があるのですが、なんかお店が変だなって思ったら、結構な確率で星が落ちていくんですよね。うまく言えないんですが、なにか空気が違うんですよね。そういう小さいことの組み合わせが品質で、ディテールに全てが宿るということがあるのでしょうか。実は、細かい所に全てがあって、そこの所を忘れてしまったら、気がつかないうちに品質が落ちていくんだな、という風に。
山 : その通りで、末端が一番大切ですよね。
出 : 僕たちは、まだ小さい会社で50人しかいないのですが、結局、社員一人ひとりがやっている仕事に手を抜かないで、一所懸命やることの積み重ねでしか、信頼やサービスの価値は実現できないと思っています。
山 : そうですよね。そのためには、働く人たち全てが、プライドをもって自分たちのやっていることが確かなことだと納得して働いてもらうことが大事じゃないですか。
出 : 確かに、プライドを持つということは大切で、本当にいいものを作って、それを日々よくしていこうという気持ちがあれば、前に進むことができる気がしますね。でも、まだ開業したばかりの会社ですから、山崎さんの6年に比べたら・・・。
山 : 開店してすぐのころは必死だったので、昔の顔を見たら、すごい恐い顔をしていて(笑)。緊張もあるし。3年から4年たったぐらいから、ちょっとずつ色々なことが見えてきて、店の中のことも見えてくるし、自分がやりたいことも少しずつ出していけるというか、最初から全部は無理なので、初めに何をするのかを選ぶのが大変だったのですが、とにかく必死でした。
出 : これからはどういうことをやりたいですか?
山 : これからですか? お店を維持していくこと。今のような状態を継続することがまず大事で、とにかく継続することが一番かなと思っています。
出 : 僕たちも同じです。生命保険は長いので、作った以上は継続することが一番大事です。
山 : それこそ、生命保険は一生のお付き合いになるわけですよね。
出 : ええ、日々良くしていきたいと。ちょっとでもサービスをよくしていって、ずっと会社を継続していくことが一番大事だと考えています。繰り返しになりますが、50人の社員が自分の仕事に誇りをもって、一所懸命やるということにつきますね。他に頼るものは何もないので。
山 : あとは世の中をよく見て、私たちだったら、素材を吟味したり、もう少し深いところまでいってみて、もっとよくするということはできるかもしれないですが、続けることがすごく大事じゃないかなって思いますね。
出 : こんなに美味しいと絶対続くと思いますよ。
山 : でも、ミシュランが出て、ちょっと恐いなと思いましたね。私が想像していた本とは全く違っていたんですよ。私はフランスのミシュランの本を想像していたので、日本でよく出回っているようなガイドブックができるとは夢にも思わなかったので。
出 : ミシュランを買って、一番最初に目次をみたんですよ。「や」のところをみて、山さきさんがあるのはすごくうれしかったですね。
山 : そうですか、ありがとうございます。まあ、とにかくあれが出てから、企業からお祝いが届いたりとか、びっくりしましたね。
出 : 今回、対談させていただきたいと思ったのは、お店を経営されているスタンスが僕たちの会社にすごく似ている感じがしたんですよ。
山 : 対談の依頼を聞いて、私の話では役に立たないんじゃないかと思って・・・。でも、扱うものが違っても、仕事の違う人と話ができますよね。でも、保険会社の人って宇宙人みたいにみえますよね(笑)何を言っているのかわからなくて、商品の説明も何回きいてもわからないですよね。
出 : その「わからない」というのが、おかしいですよね。僕たちの商品は、家族とか子供がいる人が、亡くなったらいくら払います、ということだけなんですよね。あるいは、入院したら、いくら、手術をしたら1回10万円お支払いするだけ、手術の定義も厚生労働省の医療点数表に合わせていますから、健康保険で「手術です」と定義されているものは全部お支払するんですよ。
僕は、わからないものは売るべきではないと思っているので、シンプルに徹したものを売ろうと思っています。保険会社の人は宇宙人である(笑)、という認識自体に決別をしたいと思います。
山 : たくさん説明いただいて、いざ、どれを選びますかという段階になると、「どうぞお選び下さい」というようになるじゃないですか、説明されてもわからないのに、資料もらったりしても、分からない事がすごく多かったです。だから、生命保険って入りなさいってお店を始めた時に言われたんですが、実はまだ、入っていないんです。資料集めるところまでいったのですが・・・。ライフネットに入ろうかな・・・。

出 : わからないものは絶対買うべきじゃないですよ。ライフネットの商品は、本当に単純で、一般論として、その方の収入で生活をしている人がいる場合は、年収の2~3年分の死亡保険でどうですかと。日本の場合、健康保険制度が充実していますし、高額療養費制度もありますから、毎月100万円とか、300万円とか医療費にかかっても、個人で払うのは10万円ぐらいで済みますよね。そうすると医療保険で何が必要かというと、病気になった時は差額ベッドに入りたいとか、やっぱりちょっとお小遣いが欲しいとかいう人のために、入院したら例えば、1日1万円。そういった一番シンプルな保険でいいと思います。
山 : 若い頃って、医療保険は必要ないですよね。病気になったとしても、公の保険で十分ですよね。
出 : だから、医療保険は終身が必要だと思いますし、逆に死亡保険は、子供が大きくなったらいらないので、10年とか20年の定期保険だけでいいというのが、僕たちの考えです。もし気に入ったら、ご自由にお入りください。
山 : ご自由に!?
出 : 今までの生命保険というのは「入りましょう」とプッシュ商売でしょう。表現はよくないですが。そうじゃなくって、本当にわかりやすい良い商品ならお客さまに選んでもらえるはずだと思うんです。勝手にプル型モデルと呼んでいるのですが、いいお店を作って、いい商品を用意したら、きっと心あるお客さまが来てくれると・・・。
山 : できれば、皆そういう風になったらいいなって思いますよね。「うちはこれしかできないんです」ってはっきり言って、お客さまに選んでもらう。
出 : いいお店を作って、プル型で待っている感じですよね。
山 : 運良く女性であったことも味方になったと思うのですが、いろいろな媒体に取り上げていただいたり、出口さんみたいなお客さまに来ていただいたり。来ていただいたからには楽しくお食事して帰っていただきたいと思っています。常にマラソンと同じかなと思っています。怠けちゃうと落ちていっちゃうし・・・。
出 : でも、山さきは最初から本当にいい材料を使ってましたね。
山 : ええ、どうにか。築地にちょこちょこと出かけていって感じていることですが、売っている人の顔と自分の顔を合わせるということが本当に大事だと思っています。人に会って、手紙とか、電話とかでやりとりはできるのですが、顔を見に行くと意外といい人が多く、皆さん正直に「これ買うなら、こっちがいいよ」と言っていただくことが多いですね。自分の姿勢を見せるという意味もあるのですが、なるべく、物を買う際は、人と会って話しをするといいと思って。やっぱり顔を見る、というのは大事なことだと思って。
出 : それはすごくいいお話で、僕らはネットでやってるから顔が見えないと。でもそのことを常に意識して、逆に会社のシンボルマークを顔にしたのも、顔とか会社の体温を伝えることを忘れてはいけないという気持ちからです。だから、インターネット企業であるがゆえに顔とかリアルな触れ合いとか、体温を伝えることを忘れたら、おかしいことになっちゃうという気持ちが強くて。
山 : 難しいところですよね。インターネットというのは、どこにでもいけるような感じがありますよね。すぐにつながるし。
出 : そこで人間の顔とか体温をどのように伝えられるか、というのが僕らのチャレンジだと思っています。

山 : 私はお店をはじめたら、全く外に出られなくなったので、有名なレストランとかに行く機会がなくなっちゃって、出口さんとかのお話を聞くと勉強になるな・・・と思いました。
出 : いや、そんなことないですよ。一時期、食べ歩きばっかりやっていて、本当に貧乏になりました。「山さき」のようなリーズナブルなお店が一番嬉しいです。
山 :うちは何も変えないで頑張ろうかなって思っています。
出 : 本当に今日はありがとうございました。
山 : いいえ、本当に楽しい時間でした。
山さき
鴨の厳石鍋が人気。季節によってコース内容は変わります。お店にお越しの際は、予約をお願いします。
住所 : 東京都新宿区神楽坂4-2福屋ビル2F
定休日 : 日曜、祝日
電話 : 03-3267-2310
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正直もの・一流の専門家同士が話すと全く違うものなのに話がかみ合うんですね。
童門冬二氏が書かれた織田信長にこんなシーンがあったのを思い出します。
「一流の人間を彼は好んだ」
大工であれ、武士であれ、将軍であれ一流になろうと努力する人間が好きであったと記載がありました。彼自身、朝から夜まで寝る間を惜しんで天下布武を実践した人ですから。
今回のインタビューを見ていて、私ももっと末端の努力をしっかりしたいです。ありがとうございます。
kawataさま
つたない対談を読んでいただいて、本当にありがとうございます。
僕も織田信長は大好きです。もちろん、人間のスケールでは及ぶべくもないですが。
ただ、品質で一番と言われるような生命保険会社を創っていきたい、と気持ちだけは、誰にも負けないつもりです。どうか、これからも、ライフネット生命をよろしく育ててください。